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ゴディバ

「今日お父さんがゴディバのチョコ持ってきてくれるって」
母が夕飯の準備をしながら携帯電話を首に挟み僕に言う。小3の僕でも高いチョコという事だけは分かった。リビングに来た兄と弟もゴディバのニュースを聞き「マジで?」「なにそれ?」と返す。

玄関の引き戸と共に低い声が聞こえた「ただいま」
ゴディバが帰ってきた。
今日に限って玄関に出迎える兄弟「おかえりチョコは?」
すると父さんはくたびれたレザー鞄からくしゃくしゃのアルミホイルを取り出した。広げると中に丸いチョコの粒が3つあった。「会社でゴディバもらったんだよ」と嬉しそうに笑う。父さんに渡されたものではなく会社で皆に配られたものを子供のために持って帰ってきていた。

ゴディバの味は忘れたがこの時の気持ちは今でも思い出す。今度帰るときゴディバ渡そう。いや、血圧気にしてたな、麻のシャツにしよう。

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