推し香水覚書

香りは記憶や感情と強く結びついている、らしい。

私は割とそれを実感をもって信じてる。高揚していたときに感じた香りをまた嗅げば、その時の高揚感が蘇るし、悲しい気持ちのときに漂っていた香りを嗅げば、不思議と悲しくなってしまう。

そう、だから、つまり、私は推し香水が欲しい。

私の思う私の中の推しの香りを現実世界に再現することで、いつでも推しがそこにいるような気分になりたい、推しを前にした時の高揚感恍惚感を感じていたい!

対象がなんであれ、手の届かない誰かを好きでいる人には是非おすすめしたい。少し心が疲れた日の夜に、推しの香りに包まれながら推しの歌声を聞き、推しの笑顔を拝みながらそっと涙を零した時の、あの得も言われぬ感情をどうか味わってほしい。

ということで、ここでは私なりに調べた推し香水が作れるお店について簡単にまとめたいと思います。それと自分が体験したものについてはそのレポートも。


推し香水、つまりオーダーメイドの香水を作ってもらえるお店は、おそらく主に「FINCA」「DANCE」「aromarose」の3つがあげられると思います。

細かく言えば、京都には数種類のお香と袋を選んでオリジナルの匂い袋が作れるお店があるし、香水作りを体験できる施設やお店も調べればいろいろでてくる。神戸のオランダ館でもオリジナルの香水が作ってもらえるそうだけど、とりあえずここでは確実に推し香水が作れて、私と私の友人たちが利用しやすいであろう範囲で、上記の3つをあげました。たぶん推し香水といって有名なのもその3つであってるんじゃないだろうか。

・「FINCA」

「推し香水」といえば、というくらい有名なのが「FINCA」
一時期Twitterでかなり話題になって、ここで推し香水を作ってレポを載せるのが流行っていたあのお店。調べればいくらでもレポが出てくる人気店です。

ここは完全にオリジナルの香水をオーダーメイドで作るという訳ではなく、数あるトワレの中から2,3種類を選び、重ね付けする順番を選ぶことで推しイメージの香りを作り出すお店。

トワレは30mlで1本2000円程度とリーズナブルで、完全オリジナルのオーダーメイド香水と比べるとかなり手にしやすい価格。予約は必要なく、その場でインタビューシートを記入し、スタッフさんと話しながら香りを決めていきます。
価格や組み合わせは最大3種類(重ねすぎはおすすめできないそうです)ということ、予約が必要ない、レポが豊富でスタッフさんも推し香水作りに慣れているという点が誰にとっても敷居が低く、普段香水をつけない人でも利用しやすいと思います。

ただ、予約の必要はない、と書きましたが、むしろこの店は予約ができないといったほうが正しいかもしれません。
私が利用したときは平日のお昼でしたが、既にお店は満員。2組のお客さんがインタビューシートを記入しながら待機している状態でした。
私もソファに座り、そわそわと周りを見渡しながらインタビューシートを記入して待ちます。


インタビューシートには好みの香りや苦手な香り、作りたい香りのイメージを書き込みます。推し香水を作りたくば、ここに自らの推しのイメージをひたすらに書き込むことになるわけですが、著作権の問題で推しの名前、曲名、歌詞等は書いてはいけません。口に出してもいけません。もちろん画像を見せたり曲を聞かせることもできません。最大限自分のイマジネーションを広げて推しのことを伝えなくてはいけません。その点でいえば、かなり上級者向けかも…。

私はK-POPアイドル「JBJ95」のキム・サンギュンをイメージした香りを作りました。彼の好きな香りと、彼のイメージに合う爽やかな香りの2種類を重ねた香りをベースとし、そこにお気に入りの楽曲のイメージに合う香りを足して、計5本のトワレで3種類の推し香水を作りました。

ベースの香りにプラスするという楽しみ方はここだけですし、価格やスタッフさんの対応もよく、楽しい時間でした。
ただ私の場合、普段から香水を好んで使っていて、濃く複雑な香りに慣れているからか、少し物足りなさを感じました。
もっといろんな香りをブレンドしたオリジナルの香水が作りたかったな。でもトワレはパルファンよりも軽い香りだからルームフレグランス代わりに使うのがいいかも。

・「DANCE」

このお店は私はまだ利用したことがないので、詳しく感想は言えません。
神戸に本店があって、そこでは対面のカウンセリングが受けられるそうですが、通販もやっていて、そこからでもオーダーメイドの香水が作れます。
対面ではないということで、少し不安もあるけれど、わざわざ予約を取って遠方まで出向かなくていいのはかなり便利。

価格は10mlで3000円程度。「FINCA」と比べると高価ですが、持ち運びにも便利な10mlがあるのが嬉しいところ。通販ということで、届くまで香りが分からない不安も少量からであれば安心です。

通販ではカウンセリングシートを入力して、その内容からイメージの香りを調合してくれるそうです。カウンセリングシートの内容は性別から好きな映画や靴など。その人のパーソナリティからイメージを膨らませるみたいですね。
最後に自由に記入できる欄があって、そこに推しについて詳しく書くことになるみたいです。ただ自由記入欄はにも文字制限があるようなので、それまでの質問のなかから推しのイメージを伝えていく必要があるようです。
このお店は推しの名前を出しても大丈夫なようですが、使ってほしい香料の指定はできないそうです。

このお店はまだ利用したことはないのですが、今オーダーすべくカウンセリングシートの内容を考えている最中です。
今回は素の推しをイメージした香りではなく、舞台で大人っぽいステージを披露する推しをイメージした香りにしたいので、香りをその方向にもっていけるように情報をうまく捏造しようとしています。なかなか難しい…。
このカウンセリングシートの内容からどんな香りになるのか、届くまでわからないところが逆に楽しみでもあります。

・「aromarose」

天然香料専門のお店で、劇団雌猫さんのかんさんが以前記事で紹介されていました。
お店といっても店舗はなく、通販もありません。そのためか他ふたつのお店と比べると知名度は低いと思います。
価格も1本1万~2万円となかなか高価です。レポもほとんど見つからないので、敷居は高いと思います…。

こちらは完全予約制で、HPからメールを送ると社長さんからお返事があって、日程を決めることができます。
場所はセレブの街(という偏見のある)青山の一見ホテルの一室のような小さなオフィスです。私は完全にビビりました。
恐る恐るインターフォンを押すと、上品そうな社長さんが出迎えてくださいました。さらにビビりました。

鼻をリセットするためのコーヒーを出してもらい、カウンセリングが始まります。
こちらも推しの名前を出してOKです。対面なので写真や動画を見てもらうことも可能です。私の場合、事前にきちんとイメージや推しについてを伝えておいたほうがいいと思ったので、徹夜でパワポを作成しました。今改めてみると、どう見てもオタクに慣れていない上品な社長になんてもんみせてんだ恥ずかしいと思いますが、とにかくそこに推しの写真、来歴、プロフィール、推しの魅力等とにかく熱く語りました。それと推しの愛用香水と私の愛用香水についても載せておきました。

社長さんが私の作った資料からイメージを読み取って下さり、そのイメージに近い香りを次々ピックアップしてくださいます。
ピックアップしてくださった香りの組み合わせを変えながら、何度も香りを嗅いで、どの香りの組み合わせが一番イメージに近いか選んでいきます。

こちらはトップノートからミドルノート、ラストノートはまでひとつひとつ香りを選べます。私はトップからラストまで合わせると10種類ぐらいの香料を選びました。

天然香料のみということで、フルーツ系の香りは柑橘系以外ほとんどないというデメリットはありますが、優しく癒される香りの香水が出来上がりました。
価格や営業形態の点から敷居が高く、あまり推し香水作りに利用される方は少ないのかもしれないです(社長さんも劇団雌猫さんの記事以降「問い合わせは」増えたと言ってました)が、私としてはかなり満足度の高い体験でした。細かくこだわった推し香水が作りたいという方にはかなりおすすめです。


推し香水をつくるには必ずカウンセリングが必要になります。普段推しについて延々と語り続けているオタクも、実際カウンセリングシートを書こうとすると何を書けばいいのか、悩む人は多いと思います。私にとってもたやすいことではないです。
推しの香りをイメージするということは、それだけ推しのパーソナルやその魅力を深く知り、理解し、その推しに対する自分の気持ちまでしっかり整理してまとめなくてはなりません。それは、煙の輪郭を捉えようとするくらい難しいことだと思います。

それでも何とかつかもうと心も頭も推しでいっぱいにして作ったなら、その香水には愛おしさすら感じられるはず。
私だけの推しの香り、それは私と推しとを繋ぐ、私だけの絆のような気がしてくる。

お金と時間と勇気が揃ったのなら是非推し香水を作ってみてほしい。できれば全力で。
そしてその香りを嗅がせてほしい。あなただけの推しの香りを。

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