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『木挽町のあだ討ち』現代にも通じる救いの物語

6年前に難病の潰瘍性大腸炎と診断され5-ASA製剤でなんとか体調は安定していました。それが昨年あたりから体力、メンタル両面で苦しくなってきました。今月に入って過労とストレスでダウン、体も心も限界でしばらくお休みをいただくことにしました。
休養をとってからしばらくしてようやく本が読めるようになりました。そんな時に出会ったのが永井紗耶子さん『木挽町のあだ討ちです』

直木賞受賞のインタビューで永井紗耶子さんがお話しされた「作品が生きづらさなどを感じている人にとってほんの少しでも支えになり、楽しんでもらえるものになっていたら、こんなにうれしいことはありません」というお言葉どおり、作品に大きな力をいただきました。

時代小説でありながら、現代にも通じるテーマです。芝居小屋を舞台に木戸役者、立師、小道具職人、筋書師がひとり語りであだ討ちの真相を話しますが、その中で自ら辿ってきた半生を語ります。どの人物も決して順風満帆とは程遠く、苦難の道を歩いて自分らしさを獲得してきた人たち。そんな登場人物たちが教えてくれるのは社会で「正しい」とされることだけがすべてではないということ。自分の声に耳をすませ、自分の生き方を選択するということ。

真面目であるがゆえ、追い詰められ自分で自分を殺そうとしてしまう。過労死、過労自殺が現実に起こる現代社会にも通底する物語だと思いました。登場人物からしなやかな生き方を教わりました。本当に素晴らしい作品でした。

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