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【DAY 18】お気に入りの俳優が主演の映画 「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

DAY 18
a film that stars your favourite actor/actress
お気に入りの俳優が主演の映画

スクリーンショット 2020-06-14 17.16.15

「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」
ジョー・ライト監督
ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、ペン・メンデルソーン、ロナルド・ピックアップ

1940年のイギリス。チェンバレン(ロナルド・ピックアップ)内閣が退陣。チャーチル(ゲイリー・オールドマン)が、後任の首相に就任する。しかし、彼は海軍大臣時代にガリポリ上陸作戦での失策や、日頃の人を恐れさせる巧みな言説により、周囲からはよく思われておらず、政敵が多い。タイピストのエリザベス(リリー・ジェームズ)に対しても、雇った初日から小さなミスに対して激昂する。
戦局は悪く、フランスがダンケルクとカレーを残してドイツに制圧され、イギリス本国が攻め込まれるのも、時間の問題であった。議員たちは和平派が多く、チャーチルはあくまでも強硬派で、なかなか賛同を得ることができない。そんな中、ドイツと交渉をしなければ辞任すると、政敵のハリファックス(スティーヴン・ディレイン)が言い出した。そうなってしまうと、彼の内閣の退陣は免れなくなってしまう。ドイツに屈して和平交渉をするか、あくまでも戦い続けるか、大きな判断にせまられるのであった。

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この「お気に入りの俳優」、これまでで一番悩んだ質問だった。

まず浮かんだのは、みんな大好きスティーヴ・ブシェミ。「バートン・フィンク」(1991)のフロントの男、「レザボア・ドックス」(1992)のMr.ピンク、「コン・エアー」(1997)では最恐の囚人を演じ、「アルマゲドン」(1998)ではキレる地質学者で大暴れ。
しかしこの人はなかなか主演をしないため、選びにくい。「スターリンの葬送狂騒曲」(2017)のフルシチョフ役が、主役といえば主役なのかな、でもこの映画は、彼がぐいぐい引っ張るわけではなくて、シチュエーション自体を描いたものだったので、主演、と言いづらいところがある。

例えばティルダ・スウィントン。「コンスタンティン」(2005)の白の天使ガブリエル、「フィクサー」(2007)の大企業の悪役、「スノーピアサー」の総理、「ドクター・ストレンジ」(2016)の師匠などなど、「ピキーン」とした、存在感のあるキャラクターを演じるが、この人もなかなか主役をしない。

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なので、選んだのは、結局、ゲイリー・オールドマンになった。「レオン」(1994)の悪徳警官がいちばん有名だろうか。「JFK」(1991)のオズワルド、「トゥルー・ロマンス」(1994)のヒモ、「告発」(1995)の残忍な看守や、「エアフォース・ワン」(1997)のテロリストのリーダーなどなど、「やばい悪役」が板についている。その反動なのか、近年は「ハリーポッター」シリーズのシリウスや「ダークナイト」シリーズのゴードン警部のような、「いいやつ」を好んで演じているように見える。また、この人は前述の2人とは違い、主役を演じる作品もけっこう多くて、出世作の「シド・アンド・ナンシー」(1986)のシド役から、「ドラキュラ」(1992)のドラキュラ、「裏切りのサーカス」(2011)などなど。

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彼の魅力は、なんと言っても、真顔・直立のまま、頬をぶるぶる震わせながら啖呵を切る所作、これにつきる。この彼のキレ方は、ストーリーを的確に進める一方で、怒りに対する生理的な拒否反応は与えない。観客が「いやな気分」にならないのだ。それは、ただ単に、力任せに怒りを演じるだけじゃなくて、哀れさとか滑稽さとか、いろんなものを包括させているからだと思う。

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そして、本作で、まんをじして実在の人物を演じ、ついにアカデミー賞主演男優賞を獲得。演説等で激昂するシーンにおいてその特技を惜しみなく発揮した。そして、他の人が演じていたら、こんなにふてぶてしい重量感があるのに、こんなにチャーミング、というチャーチル像は作れなかった。地下鉄で市民の声を実際に聞くシーンは、そのキャラクター性がないと、取ってつけたような不自然なエピソードに見えてしまったはずだ。

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