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AI産業の世界融合(Global AI industry Fusion)

2030年までに10兆円($100B)を超えるAIスタートアップの世界的エコシステムを創造したい.

シリコンバレーや北京のような数都市にイノベーションが集中してしまう世の中を甘受してはならないと考えている. というのも世界を代表できる優秀な人材は世界中に普遍的に存在しており, 十分に世界のイノベーションを推進する力を持っているはずだ. にもかかわらず一部の都市や会社がデータや資金調達能力を独占し, 独占が独占を生むような世の中であって良いはずがない.

そうではなくもっと融合的な世界観, Global AI Industry Fusion(AI産業の世界規模での融合)を実現したい. それにはある程度迫力のある規模感が必要だ. 世界が無視できないレベルになるにはおそらく$100Bは必要であろう. だから, 2030年までに$100Bのエコシステムという目標を立てた.

AI技術への確信

25歳のとき, 4名の教授達に向けて博士論文のプレゼンテーションを行なっていたときのことを思い出す. ニューラルネットワークの1つをどのように実用化するのかについてのフレームワーク化および例示に関する研究であり, 2008年同時はニューラルネットワーク自体があまり広くは知られていなかった.

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当時の僕は, 博士号修得の過程が, どの程度自分の人生にとって貴重なものであったか知る余地もなかった. 論理展開の正確性や仮説検証の説得力, 幹となるストーリーの描き方, 一定期間の中で成果に出しつづけるための自己管理能力や世界の潮流を読む力など起業家としての一定の基礎力はこの時の経験に基づいている.

中でも最も幸運だったのは, AIという技術に対する確信を得られたことだ. Prof. Andrew Ngも言うように, 今回のAIのトレンドは一過性ではなく「永遠の春」になると僕も信じている. その中で何が出来て何ができないのか. 何ができると次に何ができるようになるのか. 何がボトルネックであり, 人々は何を過信してしまうのか. 実用化に関する研究をし, その中で様々な苦労をしてきたので, おそらく他の人よりもよりリアルにAI実用化のリアルが想像できる. 今思えばこれが一番の収穫である.

Love to the Asian world

実用化に興味を持ったきっかけは修士1年の時にCirius TechnologiesというPre-Seedレベルのベンチャーに参画したことであった. 創業直後に参画したこともありChief Scientistとして実に多くの挑戦機会をいただき, その会社は僕が最初に開発した技術を以ってのちにYahoo Japanへの売却を果たすことになる. また2010年からCTOとして参画したNaked Technologyという会社も同様に2011年にMixiからの買収を受ける. これら2件のM&Aは, もちろん大成功からは程遠いものの決して悪くないディールであり, 技術者としてどのように価値創造へ繋げるのかについて感覚をつかむこともできた.

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唯一の問題は海外に対する強い憧れであった. 活動範囲が日本に限定されている自分へのフラストレーションが年々強まっていくこともあり, 2013年にシンガポールへ移住することを決めた. 英語で仕事ができるレベルまで自己研鑽する, という決意以外はあまり具体的な計画がなかったので, 非常に身軽に様々な国を旅して回った.

各都市の人々と実際に交流する中で, 世界は実に多様であることが見えてきた. シンガポールは綺麗で非常によくできた金融都市であり, ベトナムには数多くのComputer Scienceの人材がおり, タイにはとてもクリエイティブなエンタメ文化がある. どこも非常に魅力的であったが, 技術者としては技術者との触れ合いがおそらく最も刺激であろうと考え, 2013年にCinnamonという会社のベトナムオフィスを構えた. これが結果的に, 僕とベトナムという国を強固に結びつける結果となる.

資源の断片化がイノベーションを阻害する

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2013年の段階では, 東南アジアはこれだけの資源と成長率を抱えているのにも関わらず, スタートアップによるイノベーションが頻発する環境からは遠い印象であった. 例えばベトナムにはコンピュータサイエンスの人材が数多くいるのだが, 投資家はベトナムにそれほど注目していないし, 先進国や中国と比較するとGDPの総量も圧倒的に足りていない. 

僕には巨大な機会損失に映った. ベトナムにおけるコンピュータサイエンスの人材の総量は世界を席巻するイノベーションを起こすのに十分であるのにも関わらず, 他の資源の決定的な不足により, ほぼ何も起きてないに等しいような状況に見えたのだ.

こういったことは他の都市にも共通する. 金融能力の高いシンガポールのVCは積極的に他国(米国等)への出資を積極化させているし, 日本を含めた多くの国でエンジニアの不足が叫ばれており, それが障壁になってスタートアップによるイノベーションが阻害されている例も何件も見てきた.

おそらくイノベーションを生むエコシステムの核は, 集積性にあるのだろう. 必要な要素が集中している都市(シリコンバレーや北京)においてはイノベーションが頻発するが, ほとんどの都市においてはよいこともありながら不足している要素もあるためにイノベーションが起きにくい.

具体的には
 (1) 投資家にとって十分に魅力的な市場環境
 (2) 投資マネー/VC
 (3)エンジニア
 (4) プロダクトマネージャー
 (5) マーケティングやセールス
 (6) エンジェル投資家やメンター
 (7) 成功事例
などである. 

これらは全て必要不可欠であり, 1つでもかけると途端にイノベーションは起きにくくなる. 各国の起業家もまさに, ローカルな事情に阻まれてこれらのリソースの獲得に苦心し, なかなかよい成長軌道に登れない状況にある人がほとんどであるように感じる.

Global AI industry Fusion

上記のように僕は, AIの技術者という背景とアジアのスタートアップコミュニティの一員という背景を併せ持っている. この二つを掛け合わせたミッションがGlobal AI Industry Fusionである.

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インターネット/モバイルの次は確実にAIの時代となる. この大きなパラダイムシフトの中において, 各種情報技術(SlackやZoomを含む各種SaaSツール)を駆使しながら, 各都市に散らばるスタートアップの必須要素がシームレスにつながる. そんな産業融合体としてのAIスタートアップエコシステムを実現したいと考えるようになった.

10兆円($100B)規模というのはSoftbank Vision Fundの1号ファンドに匹敵するレベルであり, Goldman Sachsグループの2018年の時価総額と同等である. なぜこの規模が必要なのか. 僕らはCopy Catやニッチな地域に限定した戦略で勝ち抜くパターンではなく, 世界を代表する規模のイノベーションを起こさなければならない. その為に僕らのマインドセット自体が引きあがらなければならないからだ. そう考えれば10兆円でも小さすぎるかもしれない.

僕自身はまだまだ小さく, 世に認められることなど未だ何も成し遂げてないに等しい. だとしても, なんとかして成し遂げなければならない.

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