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デジタル時代に押さえておくべきリーダーシップの変曲点

我々は今、時代の変わり目にいる。

このことは多くの方々が実感されているのではないでしょうか。

コロナによる消費行動の抜本変化や労働環境の変化、またAI/DXといった大きな業界の変革の流れが重ね合わさっています。こういった変革期においては、今までのゲームが一旦リセットされます。つまり、今まで「強い」「良い」とされていたものが無効化され、今までスポットライトの当たらなかったようなことが突如大事になってくるわけです。

具体的にいうと、今まで培ってきたオペレーションスキルや、ある程度固定化された業務フロー上のマネジメントスキルなどはあまり役に立たなくなっていきます。

一方で、考え方を変えていかなければ解けないような問題(適応課題)に関するスキルは強く求められるようになっていきます。

このような中では「リーダーシップ」自体の在り方が変わるのではないかと考えております。この新しい形のリーダーシップを、ここではデジタル・リーダーシップと呼ぶことにします。

この記事では、デジタル・リーダーシップについて要素分解して考えていき、どうすればこの時代の変曲点を乗り越えられるような人材になれるのかについて考察します。

デジタル・リーダーシップの4要素

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デジタル・リーダーシップには色々な要素があると思いますが、ここでは上の図のように4つの要素に分解しています。

(1) 技術
(2) 組織
(3) 市場
(4) 意思

そもそも、時代の変化の起点が技術にあるので、技術についてはある程度理解しておく必要があります。その上で、会社組織やプロジェクトの内側(組織論・リーダーシップ・経営)と外側(市場・マーケット)を理解していくことで、ビジネスの基礎となるというわけです。

しかしながらこの3つだけで足りないのが、自分自身という、最も大切なファクターです。「何をするとXが達成できるのか」「何が期待されているのか」など、他人のルールで生きることに慣れすぎた私たちにとって、実は「何がしたいの?」という問いに答える事がとても難しくなっています。

実のところ、意思は、デザインするものです。自動的に内在するものではありません。従って、意思のデザインが大事になるのです。

技術理解はビジネス活用例を中心に

まずそもそも、技術が劇的に発展する中では技術自体に対する理解が不可欠だと思っています。ただし技術の内容自体を理解する必要はそれほどありません。それよりも、技術がもたらせるビジネス的なインパクトを理解することの方が大切になります。

僕が書いたダブルハーベストという本も、AIという技術がビジネスにどのようなインパクトをもたらせる可能性があるか、ということについて俯瞰的に書いた本です。こういったリテラシーが重要になってきます。

また、アフターデジタルも技術内容よりかはそれが消費者にどういう影響を及ぼすかという論点について記述されている良書です。

さらに、技術に関する「考え方」については以下の本が良書でした。

組織マネジメントは2つの変化に注目する

組織論については2つの大きな要素があります。

1つは、ビジネスモデル自体がフレキシブル(時代によって変わってしまう)かつ多様化・複雑化していくため、ワークフローの確立だったりマイクロマネジメントのような手法がどんどん使いにくくなってしまいます。

この辺りは、様々な新しいマネジメント手法として議論されています。例えばOODAループを経営に適用するというのは、代表的な試みです。

また、最近世界的に議論され始めている「センスメイキング理論」などもここのトピックに入ります。

このような新しいマネジメントやリーダーシップの形が求められて来る時代になるのは間違いありません。

2点目はメンバーのモチベーションのあり方(働く意義)自体が大きくシフトしていくという点です。

モチベーション革命は、この点についてかなり解像度高く書いた本です。もはや経済的なインセンティブや承認欲求などで上手にコントロールできた時代が過ぎ去り、今の若い世代はむしろ働くことの意味を気にしていく傾向があるということになります。

実際には、この2つの変化(ビジネスモデル変化とモチベーション変化)が同時に来ているため、組織のマネジメントやリーダーシップの在り方は大きく変わっていくことになります。デジタルリーダーシップでは、この2つの変化に合わせた新しいコミュニケーションをメンバーに対して取りつづける必要があります。

市場のパラダイムシフトは「役に立つ」より「意味がある」

次に市場(マーケット)です。デジタルトランスフォーメーション(DX)の狙いはデジタル化による市場改革になりますので、デジタル時代では多くの市場は実際に変革されることになります。この中で、機能価値がB2B, B2C双方においてどんどんコモディティ化が進み、より一層、感情価値が重視されていく世の中になります。

山口周さんの「ニュータイプの時代」では、「役に立つ」よりも「意味がある」ことの方が今後よっぽど大事になるという風に説明しています。この変化こそ、この後起きる様々な市場変化を占う上でもっとも根幹の変化になるのではないかと考えています。

当然ながら、そういった市場変革の流れに合わせてビジネスの形も大きく変わっていきます。デジタルリーダーシップを考える上では、この変化を理解しておくことも大事になります。

「意思」を持つのが本当はとても難しい。

そして最も大事なのが、この3つの要素を支える個人の「意思」になります。というのも、今起きていることを全て完全に理解することは不可能です。例えばAIという技術1つをとっても、AIは全ての業界で別々に利用されており、様々な業界知識と掛け合わせて同時並行的にデジタル・トランスフォーメーションが実現されていくのです。

それ故、自分自身がどのような知識を入れ、どのように社会へ還元していくかというポジショニングがとても大事になってきますが、その上で最も大事なのが「意思」です。

今まで「会社は自分に何を求めてくるのか」といったような問いかけを行なっている人も多い世の中でしたが、そういう視点ではなく、自分自身が自分の責任としての意思を持つことが大事な世の中になっていくのです。

これらを同時に身につけなければいけないのか?

これら4つの論点を包括的に理解するのは結構な負荷がかかります。では、全部を身につけなければならないのか?

おそらくYesなのではないか、と考えています。

何故か?

ここの鍵となるキーワードが「経路依存性」です。

本記事の中で

経路依存性とは、過去の決断の制約を受けるということですが、これが日本の失われた30年を生んだと私は考えています。

と書かれていますが、この「過去の決断の制約」を受ける理由が物事の複雑さになります。

例えば、「エンジニアの採用」について考えてみますと、採用については人事マターであり、採用した人材の活かし方については組織運営マターで、人材一人一人をケアしていくことはリーダーシップの話であり、それらのリソースを活用してビジネスに大きく貢献するような技術発展のさせ方は経営イシューになるわけです。つまり採用に関する意思決定をする上で、全てが揃って包括的に理解されてないと難しく、採用ということだけを切り取って別々に議論することがどんどん難しくなっていってるわけです。

逆にいうと、機動的に時代に合わせた意思決定を行うには包括的な視野を持って全体設計をしていくことが鍵となっており、またそれらをサポートする人材もまた全体を把握していなければ意思決定の意味がわからなくて組織に分断が起きてしまうわけです。

というわけで

僕自身、デジタル・リーダーシップを取れる人材が増えていくことが、こと日本の発展においては最重要のアジェンダの1つなのではないかと思っています。

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ダブルハーベスト同様、技術に直接関係ない人にでも入りやすい内容です。とにかく人間中心で考えます。「組織運営/人事」「コーチング」「マーケティング・セールス」「製品開発」「事業ビジョン」「事業パーパス」あたりを包括的に扱い、デジタル時代の「リーダーシップ」を科学します。

DX/AI時代の戦略デザインに関する「ダブルハーベスト」という本を書きましたが、それは、事業成功に向けてのほんの一要素に過ぎません。実際に…

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