Clint Eastwoodの『クライ・マッチョ』の批評記事を幾つか読んだので、ざっとまとめてみた。
以下で簡単に触れるとおり、大体①~④のことが触れられているように思われる。
①イーストウッドの系譜(マチズモ/白人男性の特権的地位に対する批評的系譜)に沿っていること(であるからして、新規性がないという批判もあるし、その系譜のなかでも見るべき所はあるとの擁護もある)
②脚本・ストーリーが不十分であるとの批判(冒頭が説明的との批判やMikeとRafoとの出会い以降のストーリーが尻すぼみとの批判等々)
③Machoという飛び道具的なキャラへの言及(それ以外のキャラがつまらないという批判もあれば、このMachoの導入で陳腐なストーリーから本作が救出されたという見方もある)
④イーストウッドがこの年齢で女性にモテるというキャラを演じることへの違和感
The New Yorkerの記事
Richard Brodyによる"The New Yorker"での "“Cry Macho,” Reviewed: Clint Eastwood’s Rueful Tale of a Boy and a Bird"という記事は以下の点を指摘している。
・まず、著者は、本作をイーストウッドの映画的懺悔の旅の中の一作としてイーストウッドの映画的系譜に位置付けている。
・次に、名声のために費やす人生の軽薄さについて描く点でも、イーストウッドの映画のこれまでの系譜と合致していると述べている。
・さらに、主人公とRafo、Machoの三者の関係については以下の言及がある。陳腐な老人と少年のヒーリングものに堕しなかったのは、Machoという飛び道具的な存在やマチズモに対する老人の悔恨・反省があったからと考えているようである。
The Guardianの記事
Simran Hansによる"Cry Macho review – Clint Eastwood’s lone ranger bridges the generation gap"との記事は、短い記事なので、以下のようにまとめる程度である。
The Empire Onlineの記事
James Whiteによる"Cry Macho Review"には以下のような指摘があった。
・まず、テーマとして新しい部分がなく、マスキュリニティの解体に関して切り込むところがなく、『グラン・トリノ』の焼き直しにすぎないとの指摘がなされていることに目がいく。
・次に、全ての女性が主人公に恋に落ちるという不愉快なご都合主義が『運び屋』と同様に展開されていることへの批判もされている。
・また、Macho以外に魅力的なキャラクターがいないことも批判している。
NMEの記事
Beth Webbによる"‘Cry Macho’ review: on the road with a typically crabby Clint Eastwood cowboy"という記事。5点中2点とかなり厳しい評価のようだ。
・まず、導入部分が説明過多であり、不調和で不格好であるとの指摘である。
・最終的なまとめとしては、filmmakingはsloppyであり、plotはhalf-bakedであると酷評である。
IndieWireの記事
David Ehrlichの"‘Cry Macho’ Review: Clint Eastwood and World’s Deadliest Rooster Carry a Gentle Western About Male Strength"との記事は以下の点を指摘している。
・白人である特権を利用して、老人がこれまで犯そうと思いもしなかった法を犯して「密輸」する、という話型として、『運び屋』との構造の連続性があるとの指摘がある。
・他方で、MikeとRafoの邂逅以降、plotがしぼんでいき、物語のギアが低くなるとの指摘がある。
・男性性に対する異議を述べている点で、過去作との連続性を指摘した上で、ただ、それであっても、本作を見るべき意義がないわけではないことも示唆されている。