作品について少し

僕が代表をしている創作団体H-TOA「ガリレイの生涯」の発表まで2週間少しになりました。

今回は原作もので、劇作家ベルトルトブレヒト(1898-1956)の書いたガリレオガリレイ後期の人生の物語です。
ブレヒトという人は1930年あたりに主流であった感情移入型の演劇(登場人物に共感して感動して観客がカタルシスを得る演劇)に異を唱えて、客観的に批判的に舞台をみてそれを自分の社会と結びつけて考え行動しなさいという演劇を主張した人です。その中で異化効果という手法をうみだしました。突然歌い出したり、観客に話しかけたり、といった感情移入を妨げる行為を入れて、当たり前のものに疑問を挟み込む手法です。
異化効果という言葉やいろんなアプローチがあることから何でもかんでも異化効果と言いがちです。
今となっては、映画や演劇をみて、見てることを忘れるくらい感情移入することや自分の社会を結びつけることができないといったことはどうもピンとこないこともあります。なにかみたら何か考えるしょ、っていう僕の観客への信頼感みたいなものがあるのだと思います。実際その時代にも皆が皆感情移入してるわけではもちろんないと思いますが、、ブレヒトがマルクス主義であることからナショナリズム、ポピュリズム、ナチス政権への警鐘の一つであったのだと思います。
さて、そのブレヒトはガリレオガリレイをどう描いたか。ガリレイは、地球は太陽の周りを回っているといい、科学研究の自由を訴え、権力と対峙した人です。これ以上のガリレイのことは調べてください。ブレヒトは自身の姿と合わせて、ガリレイの欲望(特に食欲)と英雄像を取り去ることを描きます。ガリレイの言葉にはブレヒトの思想がよく表れています。
戯曲は大変読みやすく、普通の感情移入型の演劇としても上演できるような形式かかれています。それを解体して再構成しようとしています。戯曲の台詞は2、3割ほど抜粋して一人芝居(人間は一人)として上演します。

H-TOAの作品としては、去年8月に台湾で発表した「Hi,i(lan)d」以来です。東京で発表するのは1年2ヶ月ぶりです。人が来るのかという緊張があります。
作品の作り方が以前と変わっていて、舞台にあるものを観客によく見てほしいなというのがあります。以前の作品では観客にぬりえしてもらったり、散歩してもらったり、思考(意識)を実際に舞台の外側に持って行き、行き来しながら作品を見てほしいなという考えがありました。この一年少しで、滞在制作をしたり、現代美術などの座学をしたり、美味しいものを食べたり、といった中で今の創作方法向かっています。
戯曲面の諸問題を上演側から立ち上げるという試みをしています。こう書けばなんか普通に戯曲を上演にするということだな、と思いました。演劇で何をするか、舞台芸術で何をするか、というのが今の関心ごとです。それは物事の現在、未来、過去を描くのに世のことをありのままに描くのでも、社会の縮図を再現することでもないと僕は思っています。
演劇に社会に何かを働きかける力はもしかするとないかもしれません。それでも演劇で描けることはあるはずです。
今一つの指針としては、舞台に生成される様々なレイヤーを時にはつむぎ時には重ねる、その観客ひとりひとりとの作業が演劇の時空間をうむのではないかということを考えています。

今回も小さな空間で発表になります。それでも多くの方に見に来ていただきたいです。
中目黒から徒歩7分くらいのカフェギャラリーです。

公演詳細は以下のサイトです。


http://h-t-o-a.com/2018/Leben_des_Galilei.html

よろしくお願いします。
峰松智弘
H-TOA

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