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樹木の体温は何℃か知っていますか?

コロナ禍で検温する機会が増えている。人間や哺乳類は、体温をほぼ一定に調節する機能を持っていて、ホメオスタシスと呼ばれている。樹木にも体温があるのではないか?あるとしたら何℃だろう。どうやって体温調節しているのだろう。

今日そう思ったのは飛騨高山の山々を眺めているときの気づきであった。「雲は森から産まれる」を読んでいただきたいが、今日も森から雲が沸き上がっていた。気孔が開き森の樹木が一斉に蒸散を始めたように僕には見えた。水蒸気が上がっていく。う!?待てよ!?雲ができるということは、水蒸気が気体から液体に変わっていく過程を見ていることになる。飛騨高山の上空の空気は冷たい。だから水蒸気が水になるのね。前回「雲は森から産まれる」の時はそこまでの気づきだった。でも今は7月。そんなに空気が冷たいとも思えない。

オリンピックが近い。アスリートの体からは汗とともに湯気が沸き上がっている。身体がヒートアップすると湯気になる。う!?つまり樹木の体温は気温よりも高いってことになる。本当だろうか?調べてみた。


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樹の体温はどうやら気温より2-3℃高いらしい。日の出の直後から気温(下図実線)にやや遅れて樹の体温(下図白丸)上昇し、夜間も数℃高いのが判る。樹も呼吸をして生きているから体温があるのである。

樹の体温

日本にも樹木の樹温を直接測った研究が昭和41年にあった。陽の光が当たる側で急激に上昇する。でもこれは、光の熱エネルギーを樹皮が吸収するからかもしれない。しかし陽の光が当たらない反対側ではやはり数℃高い値が示されていた。

実は、樹幹を流れる道管液の流速は樹温の測定を原理としている。軸方向の二点間の温度差は、樹木の蒸散量や樹幹流の速度と比例している。温度差が大きいと流れが速く蒸散量が多いという理屈だ。

蒸散量が多いと葉や幹表面からより多くの気化熱(蒸発潜熱:液体である水が気体である水蒸気に変わるときに奪われる熱)を発する。そのため、葉や幹の温度は冷やされる。これによって、樹木や植物は、陽の光でヒートアップしてくる体温を冷まして調節(健康管理)しているようにも思われる。太古の地球は二酸化炭素濃度が今よりも高かったため、樹木は身体を冷やす必要があった。気孔による蒸散はクールダウンするのに役立ったに違いない。

作物には積算温度という考え方があって、積算温度が一定値を超えると花や実をつけたり、葉を落としたりする。収穫適期を判定するのに広く用いられている。環境変化に応答する樹木や植物の役割にはまだまだ知らないことが多いように思われる。

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