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植物根からのCO2の取り込み 暗炭酸固定 植物のカーボンサイクル(6)

植物は地上に出ることによって、葉を茂らせ気孔を介して葉緑体で光エネルギーを利用して炭酸固定する能力を獲得した。光合成である。

液体バイオ燃料が期待されている藻類はどうだろうか?(CO2-微細藻類バイオ燃料Cycle カーボンサイクルテクノロジー(3))海水のpHは約8.1なので、分子状炭酸はほとんど存在せず(生命を司る 二酸化炭素の功罪(4))、重炭酸イオンを濃縮利用して炭酸固定していると考えられる。バイオエタノールが期待されているサトウキビやトウモロコシはどうだろうか?(もう一つの光合成 C4植物 植物のカーボンサイクル(5))やはり細胞質の重炭酸イオンを炭素数4の有機炭素に変換してから炭酸固定を完結させていた。つまり、重炭酸イオンを介した炭酸固定は、未来への鍵となる植物のカーボンサイクルであると言える。

気孔の無い植物がアンデス山脈に生息するという。ミズニラの仲間Stylites andicolaだ。この植物は、根からCO2を取り込み、地上部で光合成することからAauatic CAM植物と呼ばれる。CAM植物はベンケイソウやサボテンの仲間がする有機酸代謝(Crassulacean Acid Metabolism)型光合成を行い、昼は乾燥から身を守るため気孔を閉じていて、夜間に気孔を開けて二酸化炭素を取り込み、リンゴ酸に固定し、昼間光合成を行っている。

トマトなどの根にも重炭酸イオンをC4カルボン酸に変換する暗炭酸固定回路が存在することは、ほとんど知られていない。これは、地上部の光合成と比較して、炭酸固定への寄与率が1%未満と低いために注目されてこなかったからである。リン酸や鉄が欠乏した時やアンモニウムイオンが多い場合に、この回路(補充的炭酸固定とも呼ばれる)を緊急避難的に回すようである。アンモニウムイオンの取り込みが活性化することは、安定同位体を使った実験で私も証明している(地球環境研RITEでの研究)。

実は高濃度炭酸水を根に与えると、植物の成長は活性化する。つまり、補充的炭酸固定回路を積極的に回すことで、植物の炭酸固定能を高める可能性があるのである。現在も研究中でこの技術を未来のエネルギーと食糧生産に役立てたいと強く願っているので、応援して欲しい。


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