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観光列車の優等生『リゾートしらかみ』の今

こんにちは。今回は確か8年ぶりにリゾートしらかみに乗ってきた。
コロナ禍を経ても、なお人気ある『リゾートしらかみ』の今を辿っていく。

1.なぜJR東日本は五能線にたくさん観光列車を走らせているのか。

A.JR東日本がめちゃくちゃ儲かるから。

まずはJR東日本の観光列車の現状を見ていこう。
2023年12月現在、JR東日本管内には13種類の観光列車が走っている。

SLをはじめ、食事が楽しめる列車、天体観測を楽しめる列車、サイクリストをターゲットにした列車など様々なものが楽しめる。

数ある観光列車の中で『リゾートしらかみ』が今なお人気である
最大の理由は運行頻度である。
一般的な観光列車は金・土・日を中心に1往復運転されるのが一般的だ。
しかし、リゾートしらかみは春~秋であれば毎日2~3往復運転される。
観光需要の少ない冬でも金・土・日を中心に2往復程度運行される。
比較的長距離を走り、毎日2~3往復運転するような観光列車は全国を見渡しても『リゾートしらかみ』と九州を走る『ゆふいんの森』しか無い。それくらいJR東日本はこの列車に命運を賭けていると言えるだろう。

ではなぜこれほどまでに『リゾートしらかみ』に対する期待が高いのだろうか。答えはとてもシンプルでめちゃくちゃ儲かるからである

儲かるとはどういうことだろうか。あなたがもし東京に住んでいたとして『リゾートしらかみ』に乗って1泊2日の旅行を計画したときを考えてほしい。すると次のようなルートにならないだろうか。

東京→(東北新幹線)→新青森→(リゾートしらかみ)→秋田→(秋田新幹線)→東京

五能線は、東北新幹線と秋田新幹線からアクセスしやすい。
★JR東日本:リゾートしらかみ(橅/青池/くまげら),
<https://www.jreast.co.jp/railway/joyful/shirakami.html>

このルートで乗ってくれるのがJR東日本としてはめちゃくちゃおいしいのである。

まず、関東から北東北を往復するルートなので自然と運賃は高くなる。

さらにこのルートにはJR東海・JR西日本などの他会社の路線を経由しない。複数の会社を経由する切符が発行された場合、経由した会社で利益を分ける必要が出てくる。

JR各社の本音としては、自分の会社が持つ路線で完結する長距離切符を沢山売りたいのである。

つまり上記のルートは、得た利益をJR東日本1社で独占することが出来て、かつ利用客が沢山お金を支払ってくれる『神ルート』なのである。

これに加え、利用者にとっても乗り換えの負担が小さいルートで移動しやすいというメリットがある。行きも帰りも新幹線に乗れば東京へたどり着く。

★新谷幸太郎,川手魁,大畑毅志,倉林翼:地域公共交通がもつ多面的な価値とは -岐路に立つローカル線-,野村総合研究所,2023.08.18,<https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/report/cc/mediaforum/2023/forum362.pdf?la=ja-JP&hash=3E2708B1D7BE3B5CB24FC263524D7770D00453B1>

2.五能線の近年の動き

ここからは五能線の最近の動きについて見ていく。

2-1.JR東日本 観光列車料金の値上げ

まずは、リゾートしらかみをはじめとした観光列車の値上げだ。

これまで、指定席料金は530円(閑散期330円)であったが、2023年10月1日より840円に値上がりした。「HIGH RAIL 1375」や「海里」など近年導入された観光列車については指定席料金840円が採用されていたため、個人的にはどこかで値上げする予感があった。

「リゾートしらかみ」は他の観光列車と比較するとシンプルな作りであることを加味しても、さすがに安すぎた。むしろ2023年まで低価格で観光列車に乗せてくれてありがとうとお礼を言いたい。

★JR東日本:「のってたのしい列車」などの料金を見直します,2023.07.24,
<https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230724_ho02.pdf>
缶ビール1本くらいの値段で観光列車に乗れてしまった。

2-2.セルフレジによる無人営業

次に2022年12月24日にスタートしたセルフレジによる車内販売である。交通系ICカードまたはクレジットカードを用いて、お土産やお菓子を購入することが出来る。

★JR東日本:リゾートしらかみ車内サービス セルフレジによる無人営業を開始します!,2022.12.22,<https://www.jreast.co.jp/press/2022/akita/20221222_a01.pdf>

実際に利用してみたが最低限のものは揃っており、飲み物・食べ物の心配はなさそうだ。

無人車内販売。
左にあるセルフレジで精算出来る。
さとうささら」さんの声で案内してくれた。

また、週末を中心に有人による「ふれあい販売」も実施している。
上手くコストカットしつつも地元の方と観光客が交流出来る機会を増やそうと模索している。

2-3.ウェスパ椿山 営業終了

ウェスパ椿山は青森県深浦町にある観光・宿泊施設であった。「ウェスパ椿山」駅を設置するなどかなり力を入れていたようだが、2020年10月末にコロナ禍による業績不振により営業を終了してしまった。

ウェスパ椿山駅近くにあるロープウェー。
これで山の上の方まで登っていた。

現在もリゾートしらかみは「ウェスパ椿山」駅に停車しているがこれは「黄金崎不老ふ死温泉という宿泊施設の最寄駅でもあるからである。
海に面した露天風呂で全国的にも有名な旅館だ。

深浦町はJR五能線でちょうど中間地点近くにあたるため、1泊2日で満喫するにはこのあたりで宿泊したいところ。途中下車して宿泊してくれる観光客を増やせるかがJR五能線沿線を活性化させる一つのポイントになってくるだろう。

3.まとめ

今回は「リゾートしらかみ」についてお話してきた。
観光列車の役割やサービスの内容、ビジネス展開などについて模索が続けられていることを感じ取った。

個人的にすごいなと思ったのはSuicaなどの交通系ICカードがいろんな場面で使えたことだ。白神山地の観光地「青池」に向かう路線バスでまさかSuicaが使えるとは思わなかった。首都圏の人でも観光しやすい地域の一つではないかなと思う。

ぜひ皆さんも一度は乗車されてみてはいかがだろうか。

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