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都内の抗体保有率0.1% と判明したことで、「日本の感染症対策チームは他国と比べて感染者の隔離精度が高い」ということは分かった件

緊急事態宣言が解除されたことで、5月末でいったん更新を止めていましたが、感染症の数理を考えるうえで重要な検査結果が発表されたので、自分の予想との検証のため、一本だけ更新します。

 厚生労働省は16日、新型コロナウイルスへの感染歴を調べる抗体検査を行った結果、東京都での陽性率(保有率)が0.10%だったと発表した。大阪府は0.17%、宮城県は0.03%だった。
同省は5月31日時点で報告されている累積感染者数から感染率を東京0.038%、大阪0.02%、宮城0.004%としており、今回の結果と比較すると2.6~8.5倍の開きがあった。実際の感染者数はさらに多かった可能性がある。

私としては、更新を止める前の記事で以下のように予想していました。

1倍以上~5倍未満 オッズ 20倍
5倍以上~10倍未満 オッズ 3.0倍
10倍以上~20倍未満 オッズ 1.5倍
20倍以上~50倍倍未満 オッズ 2.0倍
50倍以上 ~ 100倍未満 オッズ 10倍
100倍以上 オッズ50倍

ということで、本命と考えていた数字よりもかなり低い数字でした。残念ながらハズレです。

5月末時点での予想の根拠としては、
・他国より検査数が絞られているので、隠れ感染者は多いはず
・願望として日本人の固有のファクターX免疫があってほしい
ということで、上記のようなオッズで予想をしていました。

他国が軒並み10倍程度以上は抗体保持者がいたのに対し、日本はどの都市でも10倍未満だったということは割と衝撃的な結果じゃないでしょうか?

抗体検査キットの精度の問題などもあるのようなので、この数字がどこまで信頼できるものかという議論もありますが、とりあえず正確なものという前提であれば、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアなど、どのG7先進国よりも、感染者の検出率、つまり実際に感染した人を正確に隔離できている割合が高かったということを示しています。

マスコミ各社は「政府の検査体制の拡充の遅れのために適切に隔離できていなかった」という論調にしたいのか、「実際には隠れ感染者が何倍もいたことになる」というような記述になっているところがほとんどですが、実際には逆ですよね。

日本の感染症の対策チームの隔離精度は、世界のどこよりも高かったんですよ。

特に、「東京で実際に感染していた人が、PCR検査陽性確定者の数倍程度しかいないと推定される」、という結果は、国家資格者である臨床検査技師の検査技量の高さを示すものであると同時に、質を重視していたずらに検査数を増やさなかった判断の正しさを示したものとも言えそうです。


しかし、残念ながら、この結果により、「日本人がBCGやそのほかの自然免疫によりコロナウイルスに特別強い」という、一部の経済推進派の経済評論家がしきりに主張していた説は、さらに信ぴょう性がなくなりました。

日本に隠れ感染回復者(免疫獲得者)がどのくらいいれば、行動制限をしなくて済むのか?という記事で書いた通り、隠れ感染者が10倍以下しかいなかったということは、完全に生活を元に戻して集団免疫戦略を目指すと医療崩壊も発生して百万人単位の重篤者・死者が出てしまうことにまります。

決定的な治療薬やワクチンの開発が成功するまでは、元の生活には戻らないでしょうが、そんな日が近いうちに来るんでしょうかね?

とりあえずは、今年の日本の冬が地獄絵図にならないことを祈りつつ、再度更新を停止します。

それでは、また気が向いたときに。

コロナでろくに仕事もできないので、暇つぶしに数理モデルで今回のコロナウィルスの動向を分析しています。