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東洋経済オンラインの西浦博氏のインタビュー記事を読んで、改めて誠実で優秀な研究者と思う件

東洋経済オンラインに、専門家会議の西浦博氏のインタビュー記事が掲載されていました。

全部読んでみて、やっぱり誠実で優秀な研究者だという印象しか持ちませんでした。

自粛での抑え込みがこれほどまでに成功し、反動として経済がこれほどまでに落ち込むと、それで損害を被った人には邪魔な存在にしか見えないことも理解できます。人間なんて立場の上でしか生きていけないですからね。

だからと言って、めちゃくちゃな理論で批判をしてもいいことにはならないとは思いますけど。数理モデル上は抑え込みに成功するか、大失敗するかは本当に紙一重のところの違いだったわけですし。


でも、記事中でいくつか気になる点はありますね。

基本再生産数については、私は海外の例を使って2.5と想定することがよくあり、「根拠は何か」と問われることもあるが、海外では2.5という数値はリーズナブルだと考えられている。

海外ではリーズナブルでしょうけど、日本ではそうはならないと思いますよ。日本の数値をリーズナブルに導きましょうよ。感触としてはそれよりだいぶ低いはずです。

異質性の要素としては、年齢構造に加え、家庭やコミュニティーなどの社会構造の違い、クラスター(感染者集団)のような感染の起きやすい場所とそうでない場所の違いなどが挙げられる。

これは日本の一般市中はそれほど高くないけど、高齢者率が世界一高い日本では、狭い高齢者介護施設が密集地にうじゃうじゃあるので、次に本格的な感染拡大が起こると、高齢者施設周辺が地獄になる可能性もあるという意味でもありますね。今回の感染水準でも相当大変そうでしたし。

日本は現在、大規模になりかけた流行をいったん制御しつつある段階だが、抗体検査などの結果を踏まえると、おそらく全人口の1%に至るかそうでない程度のみが感染し免疫を持っている状態だろう。

これって、専門家の中では「一回感染するとほぼ免疫を獲得する」という感触でいいんですかね? まだそのあたりがちゃんと証明されていないと思っていましたけど。

とすると、自粛要請にも従わず感染して回復した石田純一は、これからゴルフに行き放題だし、ナイトクラブのお姉さんたちと濃厚接触しまくってもいいんですか?世の中って、不条理です。

仮に1回の感染では免疫を獲得できない場合、他国が経済優先で動き始めるとしたら、特に今年の秋冬は今以上の惨状になりそうで恐ろしいです。

ここからは数理疫学の専門分野を離れてしまうが、仮にアメリカが感染拡大の制御を諦めれば、経済を回すために他国にも「門戸を開けなさい」と迫るのではないだろうか。そうなれば、日本に影響がないはずはない。

これは、日本より先に韓国でやってもらいましょう。なんつったってK防疫を有し、世界の検疫をリードする防疫先進国ですから。アメリカと中国との門戸を日本に先立って開いてもらって1か月ほど様子を見れば、日本でどうなるかの推測もできるでしょう。

ともあれ、西浦氏のお話の内容は、理論的で整合性のとれたものばかりですし、あまり批判する要素はないように思います。

緊急事態宣言にあたり、適切なメッセージを発していただいたことで、国民が危機感を持ち、当座の感染拡大を抑えることができたことに、改めて感謝申し上げたいですね。

コロナでろくに仕事もできないので、暇つぶしに数理モデルで今回のコロナウィルスの動向を分析しています。