見出し画像

その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません 時田ひさ子 著

外向的でテンションは高いのに、ちょっとした発言でクヨクヨ一人反省会。
自虐ネタで笑いをとりにいくも、いじられすぎると傷つく。
完璧主義なのにこれといって極めたものがない。
いくつか同時進行してしまうので、やりかけのままとっちらかる。

こんな表裏一体の特徴を持っているあなただったらきっと、世間話で結論のない話に付き合うのが苦手で早く帰りたいと思っているのに、楽しんでいないと見破られないように頑張って合わせたりして、一人になると「はぁぁ」と大きなため息をつきたくなるのでは無いでしょうか?

以上は本書「その生きづらさ、かくれ繊細さんかもしれません」の、はじめにで書かれている文章です。

この内容を読んでいる瞬間から自分のことについて書かれているのだと思いました。頭の中で感情と思考が四六時中休み無く渦を巻いている。消えることのないモヤモヤ。その原因を知りたくて自分なりに調べてみましたが、これほど正確に内面を言語化してくれている本に会ったことはありませんでした。


ここで書かれた特性を備えた方々はHSS型HSPと呼ばれています。大胆なのに繊細、元気なのに傷つきやすい、という特徴を持っています。
本書ではそのHSS型HSPを「かくれ繊細さん」と表現して、その特性から才能、療法やコツまでが紹介されています。

HSS型HSPは全人口の6%程度と言われるマイノリティーの存在です。なにしろ、HSS型HSPであろうご本人がその存在を知らずに一人で思い悩んでいることが多いと思います。
本書を読むことでご自分の特性を理解し活かせるようになれることを願って概要を紹介させていただきます。

尚、説明には私の解釈が多分に含まれています。かくれ繊細さんに関する純粋な情報を得るためには本書を直接読んでいただくことをお勧めします。

1. かくれ繊細さんの「特性」

かくれ繊細さんには2つの特性があります。
この2つを理解することで非繊細さん(かくれ繊細さんではないその他大勢)との間で感じていた違和感や壁の正体を理解することができました。

「はみ出した感受性」
 かくれ繊細さんは、非繊細さんに比べて、感受性がはみ出しています。非繊細さんが感じる嬉しい、楽しい、悲しい、ムカつくといった感情の感じ方よりも、かくれ繊細さんの感じる感情がより振れ幅が広く強烈です。嬉しい感情はかくれ繊細さんの感じ方を飛び越えて絶頂までいくこともあれば、ムカつく感情が殺意にまで及ぶといった振れ幅の大きさです。
 この豊かな感受性でかくれ繊細さんは幼少のころから悩まされていることでしょう。何故なら、この振れ幅の大きい感受性を非繊細さんは理解できず、むしろ異質として忌み嫌う傾向がある(と、かくれ繊細さんは思い込んでいる)からです。
感情をむき出しにしたら周りから異質と扱われた経験から、内面の正直な感情を押し殺し周りに合わせるように細心の注意をはらって生きている。非繊細さんの感受性に合わせようと不断の努力をしている。
 しかし、それがかくれ繊細さんを苦しめて自尊心を傷つけていきます。本来持っている幅広い感情や思考は無かったこととして無視するようになる。無視するようになると自分が感じ取っている感情が徐々に自分自身で分からなくなってゆく。そして結果的に、自分のしたいことがわからない状態になるのです。さらに、非繊細さんと同じフリをする自分と、本音では違う感情をもった自分との間で板挟みになって自己を否定し続けてゆく負のスパイラルに陥ります。

 著者である時田さん曰く、この問題の唯一の解決法は、はみ出した感受性を「これも自分の一部だ」と受け入れること、だと仰っています。自分を否定し続け変えようと無駄な努力を続けるのではなく、まずはそんな自分を受け入れて、そんな自分をどうやって適合させていくのかという発想に転換する。そこから次第に自己を肯定する感覚がうまれて、ブレない自分、自分軸が出来てくるのだと仰ります。


「外部の刺激をほしがる。」
 かくれ繊細さんは意識の焦点が常に外に向いています。意識の焦点とは「注意を向けている対象」です。周囲の状況に合わせて自分を変化させながら生きているかくれ繊細さんは、外部からの刺激を常に求めている。その外部からの情報を理解する作業が脳内でひたすら行われている。だから、観察力、洞察力、予測力が人一倍優れている。
 一方で、非繊細さんは意識の焦点が内に向いています。内とは本人の内面です。かくれ繊細さんからすると、非繊細さんの行動が不思議に思うことはないでしょうか。自分を見失わず、淡々と生きていること、批判されても我関せずで動揺しない、あの態度です。非繊細さんのこの態度について時田さんは、非繊細さんは注意が内面に向かい己の意識に注意が行っているので、外部の情報に鈍感なのだと言います。
 かくれ繊細さんであれば他人の非難の目におどおどしてしまう状況でも、非繊細さんが動じていないのにはこういった理由なのだと個人的に納得しました。気が弱いだけと思っていた自分のコンプレックスは、意識の焦点の向く方向が内か外かによって受けるストレス量の違いだけだったのです。

2. かくれ繊細さんの「才能」

 かくれ繊細の生まれ持った2つの特性からいくつもの才能を持ち合わせています。本書では、かくれ繊細さんのもつ以下の才能を根拠を示しながら説明してくれています。


・人間関係をつくる才能
・仕事の才能
・人の能力を見抜く才能
・直感を活かす才能
・常識を守る才能
・バランスを取る才能
・自分にはなにかあると思える才能


 これだけの才能が揃っていると無敵の存在のように感じます。

ですが、です。かくれ繊細さんを自覚されているご本人の実感は「そういうことも出来るよね。でもね、、、」と言った冷めた反応かも知れません。
 本書でもそれぞれの才能の説明で書かれていますが、この才能が出来る理由の特性には、ポジティブな面だけでなく、ネガティブな面があることを身に沁みて知っているからです。むしろ、その特性のネガティブな面に大きく引っ張られていると思う人が多いのではないでしょうか。
 そもそも、影の部分に目を伏せて光にだけ意識をフォーカスできるような楽観主義、臭いものには蓋をすることができるいい意味でのいい加減さ、を持っているならば、かくれ繊細さんではない確率が高いでしょうし、また自覚もしていないはずです。
 その影やネガティブになる発想の根源を何とか解決して、静寂で落ち着きのある内面を持ちたいと願っていると思います。
本書ではその解決法を、実践方法を加えて具体的に説明してくれています。

3. かくれ繊細さんの「治療方法」

 かくれ繊細さんは今まで、非繊細さんの世界からはじき出されないよう特異な自分を変える努力を果てしなく続けてきたと思います。ただ、その特性は生まれ持ってきたもので、変えることの出来ない存在です。なんとか変えようとする行為自体が、自己肯定感を更に引き下げてしまいます。


 時田さんは、努力の方向を変えるべきだとおっしゃいます。生まれ持った特性があることを先ずは認める。その次に、その特性を持った自分をどのように生きやすくするかを見つけるために努力する。内側から無理に変えるのではなく、外部との付き合い方を変える方向に発想を変えるのです。
具体的には以下の四つのカギとその治療方法が示されています。

● 四つのカギ
 1. 複雑さを紐解く
 2. 現在のカギ:本当の感情を見つける
 3. 過去のカギ:過去を完了する
 4. 未来のカギ:ぐるぐる思考は止められる

 どれも論理的な説明で、実践方法が分かりやすく書かれているので取り組みやすいです。
 未来のカギの実践方法で瞑想が出てきますが、個人的に瞑想は頭の動きが更に活発になるので苦手でした。しかし、本著では、瞑想のやり方がシンプルだったので自然と身体に馴染んで実行できました。

4. かくれ繊細さんの「サバイバル術」

 本書の中で個人的に最も好きなパートです。
かくれ繊細さんだからこそ持つ悩み、だけど周りには理解してもらえなくて相談出来なかった内容が、時田さんの示唆に富んだ回答で読み解かれています。

私個人が共感した箇所を少しピックアップします。

仕事とお金
・お金の不安が自己肯定感を著しくさげる。好奇心旺盛であると同時に「臆病」であるから。お金は分かりやすくメンタルを守ってくれる。
・仕事は4年で飽きることを前提に組み立てる。飽きやすい(一回やったことはもうやりたくない)のと、やってみたいことがありすぎて絞れないから。マルチポテンシャライトの思想に強く共感する。


人間関係
・初対面での人間関係を作るのには長けているけど、その関係を継続するのが苦手。それは人間関係構築力が低いのではなく、自分の心の奔放な動きをどう扱ってよいかわからないから。心の中の2面性を認めて「独り言」を口に出すことでストレスを低減される。
・人との距離感が分からない。例えば、どの頻度で声をかけていいのか分からず悩んだりする。そんなときは非繊細さんの方法をパクって真似ればいい。


 他にも、学生時代の友達との付き合い方や恋愛、結婚で、かくれ繊細さんの抱える悩みと解決法を示してくれています。
個人的に目からウロコのパートだったので、これらの悩みを打ち明けられずに悶々としているかくれ繊細さんには是非読んでいただきたいです。

また、かくれ繊細さんの特性を自覚して克服した諸先輩方の実例集が纏められています。似たような境遇を克服された方々の話しには勇気をいただけます。

以上が本書の紹介になります。

 かくれ繊細さんが、幸運にもHSS型HSPと自覚できたとしても、頭で渦巻くモヤモヤが解決される訳ではありません。その特性を理解して対処法を習得しながら、少しづつ穏やかな時間ができてくるのだと思います。



 本書「その生きづらさ、かくれ繊細さんかもしれません」はその入口を示してくれる数少ない書籍です。この長い文章を最後まで興味を持って読んでいただいた方には是非お手にとって読んでいただきたい一冊です。

お読みいただきありがとうございました。

皆さまの頭のモヤモヤが少しでも晴れることを祈っています。

ご質問やご指摘などがありましたら下記までご連絡ください。
Instagram @murmurhsshsp

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?