「ザ・歌うこと」? 幸福の科学の主神「エル・カンターレ」とはどういう意味か〜言語学的考察〜
エル・カンターレ(El Cantare)。幸福の科学の本尊の名前であり、教祖・大川隆法と同一視される存在ですが、この名前はいったいどういう意味なのでしょうか。表向きには「地球の光」(*1)とか「うるわしき光の国、地球」(*2)という意味だと言われていますが、本当にそうでしょうか。
そこで調査してみたところ、おそらく今まで信者すら知らなかったであろう、あらたな視点が開けました。
今回は筆者のTwitterフォロワー、Megmix333さんのお知恵をお借りしながら考えました。幸福の科学2世であり、HSUでラテン語を学んだ方だそうです。
一部、小難しい文法の話もあるので、面倒に思った方はざっくりとお読みいただいても構いません。
ある大川の法話によると…
今回は、大川の2018年の法話を足がかりとします。引用元は、残念ながら一般の信者が書いたらしいブログからの孫引きです。が、当該法話は筆者も視聴しており、大川がこのような発言をしていたことは筆者自身覚えていますので(特に「神が呪力を持つ」の部分ははっきり覚えています)、それで信頼していただければ幸いです。
では、大川の発言を見てみましょう。
大川隆法「「カンターレ」というのはラテン語です。イタリア語の「カンタータ」(歌)の語源が、この「カンターレ」です。(中略)ラテン語では、「カンターレ」は「呪力を持つ」というような意味です。ですから、「エル・カンターレ」の元の意味は、語源的には「神が呪力を持つ」というような意味になると思います。神がどういう呪力を持つかというと、「人類をくるむ愛の力」「慈悲の力」、それから「神秘の力」「奇跡の力」こういうものです。「いろいろな呪力」と言っても、「人々を救うための、魔法のような神秘的な力を持っている」という意味になるわけです」(*3)(強調は筆者、以下同様)
カンターレとは
カンターレとはラテン語だそうです。早速ラテン語辞典で調べてみると、カンターレ(cantare)は「cantō」という動詞の不定法現在形である事がわかりました。辞書を引用しておきます。
文法的な難しい話はさておき、この「不定法(不定詞)」というキーワードだけ覚えておいてください。
「cantō
-āre -āvī -ātum, tr, intr freq
[cano]
1 歌う;(鳥が)鳴く.2 演奏する 〈+abl〉.3 (楽器が)鳴る.4 呪文を唱える;魔法をかける.(以下略)」(*4)
歌うという意味の他に「4 呪文を唱える;魔法をかける」とありますね。
しかし、大川は微妙な勘違いをしているようです。「cantareは不定詞であり、「歌うこと」、「呪文を唱えること」、「魔法にかけること」という意味です。隆法が言うような「呪力を持つ」との意味にはなりません。隆法の文法的に間違った解釈だと思われます」(Megmix333さん)
ここでの不定詞とは「~すること」という意味を持つ、事実上の名詞です。なので、「持つ」という動詞の意味にはならないのですが、大川はそのことをよくわかっていなかったようです。あと、「呪力」「持つ」じゃなくて「呪文」「唱える」です。
また、もちろんcantareという単語に「人類をくるむ愛の力」などという意味はないはずです。きっと大川が独自にそういう意味を込めたのでしょう。
エルとは
では、先の引用を見る限り、大川は「エル」について直接は触れていないようですが、どういう意味でしょうか。
Google検索したところ、「エル」はセム語系の言語で「神」という意味だと分かったので、これが由来ではないかと推察します。大川が言う「神が呪力を持つ」の「神」の部分です。
なお、エルの複数形は、大川隆法の過去世の名前にもなっている「エロヒム」です。
「エロヒム
Elohim
旧約聖書中にたびたび用いられる神の名。セム族最古の最も広く用いられた神名 El (エル) の複数形。 Elは元来力の意。(以下略)」(*5)
「エロヒム【Elohim】
旧約聖書で〈神〉を表す一般名詞として2250回用いられる。ヘブライ語のエール(神)の複数形で,(中略)大部分はヤハウェの代りに,この〈一(いつ)なる神〉を示すのに使われる(以下略)」(*6)
エル・カンターレとは
以上を総合するとエル・カンターレとは、言語学的にいえば「神、呪文を唱えること」という奇妙な意味になりそうです。
(「神が呪文を唱えること」ではなく「神、呪文を唱えること」と言う、名詞と不定詞を並べた変な名前です)
なお余談ですが、Megmix333さん曰く「elはスペイン語の冠詞でもある」そうなので、欧米人がエルと聞いたら、セム語の「神」よりもこちらを連想する可能性がありそうです。加えて、「cantareはイタリア語で「歌うこと」という意味の不定詞でもあります。そのため、もしイタリア語のわかるスペイン人や、スペイン語のわかるイタリア人あたりがエル・カンターレと聞いたら、
文法的にはスペイン語の冠詞とイタリア語の不定詞を合成した変な名前に聞こえるでしょう。また意味的には、英語の冠詞を交えて例えれば「the 歌うこと」といった変な神名に聞こえると思います」(同)
2022年から幸福の科学が「イタリア布教を強化する模様」(同)ですが、果たして「the 歌うこと」に聞こえるかもしれない神を拝んでもらえるでしょうか。
最後に
以上、エル・カンターレとは何なのか言語学的・語源的に考察してみました。今回判明したこととして、大川はラテン語文法の不定詞について不正確な認識を持っていたようです。そしてさらに、一体これのどこをどうしたら「地球の光」「うるわしき光の国、地球」なんていう意味になるのか不思議です。何しろ、「地球」「光」「うるわしき」「国」につながる言語的要素は、今回調べた範囲では見当たらなかったのですから。
しかも、大川隆法は「法力でコロナウイルスを死滅できる」と宣言したのに、信者が新型コロナに感染していますので、どうせ呪力なんてないでしょう。また彼は自身の下手くそな歌唱音声を「原曲」と称して信者に1万円で聞かせています。そう考えると、大川が自称する「神が呪力を持つ」よりも「the 歌うこと」の方が圧倒的によくお似合いですね。(どのみち言語学的にはヘンですが)
全世界に公称1200万人いる、幸福の科学信者の皆さん。あなた方が拝んでいるものの名前が、「神、呪文を唱えること」だったことをご存知でしたか?一体自分が何を拝んでいるのかくらいは、自覚しておいた方がいいと思いますよ。
本記事には万全を期しましたが、筆者はラテン語の素人ですし、間違いがないとも限りません。しかし、もし本記事の内容が全て正しかったとしたら…
自分の名前すら言語学的に不自然で、ラテン語のcantareについて正しく認識していなかった大川隆法=エル・カンターレって、本当に全知全能の神なのでしょうか。
というか「エル・カンターレは3億年以上前から存在しているという設定ですが、当時の名前は何だったのでしょう。ぜひ大川に尋ねてみたいです」(同前)
面白いですね。大川さん、どう弁明するのでしょうか。まさか「実は3億年前の地球に、ラテン語があったんです」なんて言うつもりはないでしょうね。(*7)
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最後になりましたが、ラテン語素人の筆者が本記事を書けたのは、Megmix333さんの多大なご協力のおかげです。ここに感謝いたします。
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参考文献
(*1 エル・カンターレ | 幸福の科学 HAPPY SCIENCE 公式サイト https://happy-science.jp/whats-happy-science/faith/)
(*2 太陽の法 エル・カンターレへの道|一般社団法人日本映画製作者連盟 http://db.eiren.org/contents/03000001979.html)
(*3 原典は、月刊「幸福の科学」2018年7月No.377号に転載された、同年1月7日の法話「『信仰の法』講義」。
信者ブログ『幸福の科学的「魔法使い」とは。~エル・カンターレと魔法~ | 威風堂々』https://ameblo.jp/ryu12-26/entry-12439689244.html より孫引き)
(*4 研究社「羅和辞典 改訂版」より「cantō」)
(*5、*6 コトバンク「エロヒムとは」より。前者は「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」、後者は「世界大百科事典 第2版」の解説。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A8%E3%83%AD%E3%83%92%E3%83%A0-37925)
(*7 大川は「日本の歴史は三万年ある」などと本気で主張してしまう人なので、あながち無いとも言いきれませんが。詳しくは筆者既報のnote参照)
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