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好きな音。

目が覚めた。
背中側だけ、やけに温かい。

まだボンヤリした頭の中で考えを巡らせる。昨日は1人で寝床についた。1人ぼっちの夜は思ったよりも寒くて、会いたいな、と少しだけ思った。…そういえば何か夢を見たような。鮮明に思い出すことは難しかった。でも、心の奥にロウソクが灯ったような、温かい、しあわせな気持ちだけが残っていた。

布と布が擦れ合う音がする。
彼が寝返りをうった。
カーテンから漏れる明るい光。
窓の外で小鳥が鳴いた。

また、布と布が擦れ合う音。
そして、ぬくもりが私の体ごと包み込む。

「ん…、おはよ…」

私が一番好きな声。

「もう朝…?」
「そうだけど、昨日も遅かったでしょ?まだ寝てて?」
「ん…」

寝ぼけたまま頷いた彼は、私に抱きついたその腕を離してくれない。

「ね、離してくれないと、起きれないよ…」
「…もう行く…?」
「仕事だもん、」
「…まだ、ダメ…」

寝ぼけたあなたの甘えた声は、もっと、好き。