さみだれとあじさい

2022.06.04〜08
永倉那々奈様主催
合同店「さみだれとあじさい」に参加いたしました。
星見ヶ丘坂道商店街の主人公4人の
梅雨時期の日常を切り取り
描いて、書きました。

会場写真

作家キャプションと作品単体写真


ここからは
イラスト単体写真と文章を。

「五月雨の午後」


今日は一日中雨だろう。
ぼんやりと外を眺めていたら聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。
声のする方へ視線を移すと全身の毛を濡らしたナツがいる。
はいれ。と声をかけてバスタオルを持ってくる。
座ってナツを呼ぶと肩まで上がろうとしてきたのでバスタオルで包んだ。
濡れた身体を拭いていると寒いのか小さく震えているのがわかった。
それなのにまた出ていきたいのか、じっと外を見ている。


「帰路に咲く雨花」

傘をさして横を歩く。
この傘のおかげかな。
近すぎず遠すぎない距離が丁度いいと感じる。
雨の中の紫陽花って結構綺麗だね。
そう言いながら指を刺す方視線を移すと花壇に咲いた紫陽花が目に入る。
いつもの帰路、いつもの花。見慣れているのに
それが特別に見えたのは
雨のせいか、それとも
貴方に言われたからなのか。


「雨宿り」

まいったな。
公園の屋根がある休憩できるとこ…これがなんて名前か僕はわからないけど。
そこで僕は雨宿りしている。
この雨じゃ今日はもう練習できないな。
てか、どうしよ。もう濡れちゃってるしこのまま帰ってもいいな。
ふと、近くに生えた紫陽花の葉っぱの上にカエルがいるのに気がついた。
雨に当たってなんだか気持ちよさそうに見える。
そっか、僕にとって迷惑な雨でも
君にとっては嬉しいものだよね。

「雨上がりの薄暮」

いつもより少し遅い下校となってしまった。
靴を出して履き替え、傘立てに残った自分の傘を取り開こうとしながら外に出たところで気がついた。
空を見上げると雨は止んでいて
今の時期に咲く花のような色の空に
小さな月が浮かんでいた。
綺麗だな。
と、素直に思った。
その小さな月に向かって
何かが泳いでいるように見えた気がした。