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週刊オールライター第61号 「鉄道車両のリユース」

皆さんは
「鉄道車両もリユースされる」
ことをご存知でしょうか?全国の中小私鉄を中心に、大手私鉄やJRで引退した電車の「再就職」させている動きがあります。今回は鉄道車両のリユースについて特集します。
(ヘッダーの画像は元JR東日本205系、現富士山麓電気鉄道6000系です。)

1. 鉄道車両のリユースとは

老朽化した鉄道車両はそのほとんどが解体されてしまいますが、中には他の鉄道事業者に譲渡する例があります。その相手はほとんどがお金の少ない中小私鉄です。中古車両の購入は、新車を一から新造するよりもはるかに安いというメリットがあります。
一方で車両を手放す側にも「解体にかかる費用」を消し飛ばせるというメリットがあるのでwin-winになります。

2. リユースの実例 私が訪れた路線での事例

それではここで、私が訪れた路線で鉄道車両がリユースされている実例を紹介します。

1. 長野電鉄

善光寺下駅で撮影した元東急8500系。
東急の車両は汎用性が高く、中古車両譲渡を積極的に行っています。

中2の初夏に長野に行った際に長野電鉄を使いました。長野電鉄は、長野〜湯田中を結ぶ中小私鉄です。
普通列車は元東京メトロ日比谷線の03系、元東急の8500系を使用。特急列車のうち、「ゆけむり」には元小田急ロマンスカーHiSEを、「スノーモンキー」には元JR東日本の253系0番台を使用しています。

2. 上田電鉄

当時は大河ドラマ「真田丸」が放送されており、上田市は真田丸特需でした。
元東急1000系の中間車を改造した車両。
同じタイプの車両が福島交通、一畑電車にもいます。
上田駅に戻る際にはこの車両を使いました。

長野に行った際には上田電鉄も利用しました。上田電鉄は「青ガエル」と呼ばれた元東急初代5000系を譲り絵受けて以降は全ての車両が元東急の中古車両で運行しています。現在は1000系を使用しています。

この旅行当時はまだ元東急7200系も現役でした。
この車両は映画「サマーウォーズ」にも登場していました。

3. しなの鉄道

JRから第三セクターに転換された場合、その初代所有車両がその路線を走っていた元JRの車両の場合もあります。
前述の長野旅行の際に宿のある上田に向かう際、しなの鉄道も利用しましたが、その当時の車両は全て信越本線で走っていた115系でした。現在では新型のSR1形が導入されており、置き換えが急速に進んでいます。

4. 秩父鉄道

急行「秩父路」に使用される6000系は西武新101系を改造した車両です。
元都営地下鉄三田線の5000系。
現役最古参の車両です。
元東急8090系の7500系。
東急8090系の中間車を改造した7800系。
軽い車体なのにケチった改造をしたことが仇となって坂が登れず、使いづらいそうです。

秩父鉄道は1980年代に小田急から1800系(この車両も元を辿れば元国鉄の旧型電車モハ72系)を購入して以降導入される全ての新車が譲渡車両になり、その車両の前職は小田急以外位にも、国鉄・JR東日本、都営地下鉄、西武、東急と多岐に渡ります。

5. 伊豆急行

元東急8000系。
内装は大きく変わっています。

この路線は厳密に言えば私は乗ったことがない路線ですが、乗り入れ先の熱海駅で記録した写真があるので紹介します。
東急系列の中小私鉄である伊豆急行は、自社発注車両100系の置き換えにJRから113・115系を導入して以降、東急8000・8500系、JR東日本209系と3回にわたって中古車両を導入しています。

3. 大手私鉄でも中古車両を再就職させる!?西武鉄道驚きの発表

昨年9月26日、西武鉄道はとんでもない発表をしました。
なんと、自社が所有している新101系と2000系の置き換え用に2024年から5年かけて東急9000系と小田急8000系を購入して置き換えすると発表したのです。
置き換え目的での大手私鉄同士での車両譲受は異例です。
置き換え理由として、西武鉄道は環境対策として全ての車両の制御機器を環境負荷の少ない「VVVFインバーター制御」にすることを決めており、VVVFではない新101系と2000系を置き換えることになっています。その際、新造するよりも中古を買った方が環境負荷や費用の面でのマイナスが少ないことから購入が決まったのです。

詳しい情報は西武鉄道発行の以下プレスリリースをご覧ください。

https://www.seiburailway.jp/file.jsp?newsroom/news/file/20230926_sasutenatrain.pdf

4. 実はJRもやったことがある!鉄道車両のリユース

実は、中古車両の購入はJRもやったことがあります。その事例を2つ紹介します。

4-1. JR同士の車両譲渡 「103系、異例の再就職」

国鉄製電車の中では最大勢力を誇った103系。この譲渡の対象になったのは、2005年7月に一度は除籍になった「E38編成」です。この編成はJR東日本で除籍になったこの当時、武蔵野線を走っていました。ちょうどこの時期、平成史上最悪の鉄道事故と呼ばれる「福知山線脱線事故」が発生。JR西日本の京阪神エリアでは、この事故の煽りで車両不足が起きてしまいました。その繋ぎ役としてJR東日本で除籍されたてのE38編成を購入したのです。そして車両不足が解消されたのちは広島や和歌山などで余生を過ごし、2011年までに引退しています。
JR同士で車両を譲渡することは極めて異例のことで、平成に行われたのはこの103系の転属とJR東日本が「SL銀河」専用客車としてJR北海道で余剰になっていたキハ143形2両・キサハ144形2両を購入した例などがあります。

4-2. JRが私鉄から車両を購入 「209系3100番台(元りんかい線70-000系)」

元70-000系の209系3100番台。
現役晩年の2017年に川越駅で撮影。

JRが私鉄から車両を買う、ということはこれ以外他に例がありません。りんかい線を運営する東京臨海高速鉄道は新木場〜東京テレポートで開業した当初、自社で所有する70-000系は4両編成でしたが、2002(平成14)年に大崎まで延びて埼京線と直通運転が始まるとJRとの直通車両は10両、りんかい線内のみで運用される車両は6両編成に増やされ、新しく中間車を増備しました。そのわずか2年後に全列車が10両になる際に6両編成のグループを10両にするために組み換えが行われた結果、先頭車4両と中間車2両が余ってしまいました。それに目をつけたJR東日本はこの6両を購入して4両編成を組ませて八高・川越線(八王子〜高麗川〜川越)に投入し、この路線で走っていた103系を置き換えました(この際足りない中間車は新造しました)。形式も70-000系から「209系3100番台」に改番されました。その後、山手線にE235系が投入されたことでE231系500番台が中央・総武線に転属し、それによる玉突きでそれまで走っていたE231系0番台と209系500番台を武蔵野・京葉線と八高・川越線に転属させるという転勤劇があり、八高・川越線に投入された車両は2022年3月からワンマン運転をすることになっており、それまでは知っていたワンマンに対応しない205系・209系は全て全て置き換えられ、209系3100番台も例に漏れず2022年1月に引退しました。

5. これだけは言わせて これは「リサイクル」じゃなくて「リユース」だよ

鉄道車両の譲渡を表現する際に
「リサイクル」
という表現をすることがると思いますが、おかしいと思います。
「リサイクル」を日本語訳すると、再資源化ですよね?それをいうなら「リユース」だと思います。
これだけは突っ込ませてください。

むすびにかえて 次回予告

次回はいよいよ、年内最後の配信です、今年の私に起きた出来事をダイジェスト形式でお届けします

それではまた。


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