忘れてしまった母の誕生日

大学生になりはじめて親元を離れ私は一人暮らしをしていた。サークルに入りバイトもしてお酒も覚え、大学生ならではのキャンパスライフを謳歌していた。

その日の夜はサークルのイベントの打ち上げだった。練習して発表してお疲れ様ー!とみんな大いに呑んで騒いではしゃいでいた。そんな宴の最中一通のメールが届いた。母からだった。

「誰もお祝いしてくれない寂しい誕生日でした。」

たしかそんな文面だったと思う。

しまった…今日はお母さんの誕生日だった、、、

そのあとなんて返信したかも、その時自分がどれほど申し訳ないと思ったかも覚えていない。

その後1年足らず程で母は病気が再発し帰らぬ人となってしまった。

10数年経った今でもあの日のことをすごく後悔している。誕生日を忘れたこと以上に母を落胆させたり失望させたことはきっと多々あるのだろうけれど、私はこのことがずっと悔やまれてならない。なんだったら、なぜ実家から通える大学に進学しなかったのか、なぜ自分で母の病気が良くなる方法や病院を探したりしなかったのか(そんな事は父が手を尽くしていただろうし余命宣告されていてはどうしようも無かっただろうけど、もしかしたら私が何かしていたら結果が変わっていたかも…と考えてしまう)、いつまでも子離れ出来ない母を疎ましく思って素っ気ない態度を取った事もあっただろうし、いつの間にか友達や彼氏が優先になり、母のことなんて二の次三の次になっていただろう。それが子供の成長というものだから仕方ないとは分かっている。それでも、、、母にとっては私が全てだった。私が母の生きる意味で、私が何よりも一番だった。世の親なんてみんなそうだろうけれど、、、私はもっともっと母との時間を作り、優しく接し、たくさん甘えて、愛を共有し合うべきだった、と母に対する自分の全ての行いが悔やまれてならないのだ。

そう思うのは失ってしまったからかもしれない。

無くした時にはじめて気付く、ってよく言われるアレ、なんだろう。

皮肉なことに母が亡くなってからは毎年母の誕生日を忘れたことが無い。

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