建設現場でケンカ発生! 発生した場合の対応策から予防策までを徹底解説
建設現場は、さまざまなタイプの作業員が一緒に働く場所であるため、人間関係のトラブルが発生しやすい場所といえます。
ちょっとした口論程度で終わればまだよいのですが、殴り合いのけんかになってしまうと、ケガの状態によっては傷害事件に発展してしまうおそれがあります。
工事中にけんかをしないように社員教育を徹底したとしても、ついカッとなって手が出てしまうということはあり得ますので、常に最悪の事態を想定しておくことが大切です。
今回の記事では、建設現場のけんかを防ぐ方法や、発生した場合の対応策について解説しましょう。
(今回のポイント)
・けんかはささいな原因で始まる!
・けんかが始まってしまった場合の対処!
・けんかのケガにも労災が適用できる場合がある!
ちょっとした口論が、労災申請や慰謝料請求に発展する可能性も!
工事現場で発生するけんかの原因には、以下のようなものがあります。
●挨拶をしなかった
●相手の話し方が偉そうでむかついた
●相手の作業が遅いので腹が立った
●相手に無茶な要求をされた(予定外の工程など)
●他作業員のミスで仕事がやり直しになった
上記の内容を見てもわかるように、大人がけんかをするきっかけにしては、ささいに思われるようなことも理由になっていたりします。
実際、「話しかけても無視された」「しゃべり方がむかついた」「上から偉そうに命令してきた」など、感情的な部分で怒りが湧いてしまうケースは珍しくありません。
また、他の職人さんの作業が遅れたせいで自分が予定していた作業が進められない、予定外の作業を押しつけられたなど、仕事上のトラブルがけんかに発展することもあります。
ほかにも、相手と気が合わなかった、悪口を言われた、搬入予定の資材が届かなかったなど、トラブルの原因となりそうな事柄はいくらでも考えられます。
同じ現場で働く者同士、お互い仲良くしてほしいところですが、対人トラブルは何がきっかけで始まるか予測できません。
たかがけんかと軽く考える人もいるかもしれませんが、けんかで重傷を負って後遺症が残ったり、最悪死亡してしまった例もありますので油断は禁物です。
例えば、自社の社員がケガをしたり、相手にケガをさせてしまった場合、労災申請や慰謝料請求などについて対策を考える必要も出てきます。
けんかが始まってしまった場合の対処法は?
事前にけんかをしないように社員教育を施しておくことも大切ですが、ここでは実際にけんかが発生してしまった場合の対処について書いてみます。
前提としてけんかの対処法は、けんかの状況によって変わりますので一概にいえるものではありません。
ただ、けんかの種類は「口げんか」なのか「暴力行為のけんか」なのかで大きく分けることができますので、それぞれに対処するための例をご紹介します。
・口ゲンカが始まった場合
口げんかの場合、深刻な状況でなければ、ある程度言い合いをさせて両者が落ち着くまで放っておくというのも立派な対応策といえます。
そもそもひと口に口げんかといっても、それが全部悪いことばかりとは限りません。
口げんかをするなかで、お互いの誤解が解決する場合もありますし、相手の危険な行動を注意することで事故が防げるかもしれませんので、まずは静かに見守るのが無難です。
近くに仲の良い人がいるのであれば、できるだけ穏やかな感じで「どうしたの?」と質問をして、相手の気持ちを落ち着かせながら不満を聞くという方法を取ってもいいでしょう。
この場合、声をかける人は仲間の言い分だけを聞くのではなく、けんかをしている2人の言い分を公平に聞くようにすることが大切です。
その上で、お互いの意見の落としどころを見つけてもらうようにすれば、けんかも大事にならずに済む可能性が高くなるでしょう。
いずれにせよけんかが始まっている時点で、当事者同士は気が荒くなっていますので注意が必要です。
周囲の人は、口げんかの状況を静観しつつ見守るということを基本にすることをおすすめします。
・暴力行為のけんかが始まった場合
相手に掴みかかる、殴る、蹴るなどの暴力行為が始まった場合は、すぐにけんかを止めるように声をかけましょう。
とにかくけんかの当事者は頭に血が上った状態ですので、何よりも気持ちを落ち着かせることを優先して、できるだけ冷静な態度で止めるようにしてください。
この時、止める側もけんかの当事者と同様に騒ぎ立てるような態度を取ると、ますます興奮してけんかがエスカレートするおそれがあります。
止める側が冷静に接すれば、けんかの当事者も気持ちが冷静に傾いて、興奮が抑えられる心理的効果が生まれます。
声をかけてもけんかが止まらない場合は、間に入って仲裁するか、数人がかりで後ろから羽交い締めにするなどの方法で、けんかをしている両者を引き離すようにしてください。
ただしこの時、止める側の人間はくれぐれもケガをしないように注意しましょう。
けんかの場合、相手にハンマーを投げつけたり、角材で殴るといった「凶器」が使用されるケースもありますので、仲裁する際も安全確保は忘れないようにしてください。
ケガが発生した場合は治療を最優先して、重傷の場合は救急車を呼ぶなどの手配をしましょう。
状況によっては警察に通報することも検討しなければなりません。
けんかの加害者に対する処分は現場が落ち着いてから行うとして、まずは被害者の救護を優先します。
ちなみにけんかをした両名がケガをしてしまったり、どちらを明確に加害者とするか微妙なケースもありますので、対処の方法は状況に応じて考えるようにしてください。
ケガが発生した場合の労災認定の条件
けんかによってケガを負う被害者が出てしまった場合、そのケガに対して労災保険が適用できるのか、という問題は非常に気になるポイントです。
労災認定については、そのけんかが「業務上の災害」なのかどうかが判断の分かれ目になります。
具体的には、「業務遂行性」と「業務起因性」というふたつの要件から判断されます。
「業務遂行性」は、災害(ケガ)が、事業主の管理下で行われたのかどうかを見るための要件になります。
これは、災害が発生した場所が「仕事現場の敷地内」だったか、また「仕事現場での作業中」だったかどうかで判断されます。
ちなみに「仕事現場での作業中」には、作業中に通常行われるトイレや水分補給などによる中断なども含まれます。
もし、災害が発生したのが「仕事現場の敷地外」であったり「勤務時間外」であった場合は、業務とは無関係ですので「業務遂行性」は認められないことになります。
「業務起因性」は、業務と災害(ケガ)との因果関係を判断する要件となります。
これは、「業務が原因で災害が発生した」のかどうかで判断されます。
工事現場でのけんかの原因が、当事者同士の個人的な感情によるものであった場合、業務とは無関係ですので「業務起因性」は認められません。
逆に、仕事に対する意見の食い違いや作業工程に対するクレームなど、業務内容に関することが原因でけんかとなった場合は「業務起因性」が認められる場合があります。
実際のところ、建設業における「けんかに対する労災認定」というのは、比較的審査が通りにくい傾向にあります。
ただ、トラブルの状況によっては労災認定されるケースもありますので、証拠となるけんかに関する情報収集は忘れずに行っておきましょう。
【まとめ】
工事現場でのけんかは、重要な連絡の伝達ミスや作業員同士のコミュニケーション不足といった、誤解や感情のもつれなどが原因になりがちです。
トラブルを避けるためには、現場監督や施工管理士が作業工程や注意事項をしっかり情報共有し、作業員も休憩時間に互いに話しかけて交流を深めておくなど、けんかの防止につながる行動を意識しておくとよいでしょう。
とにかくけんかはしないことが一番ですので、お互いに気持ちよく仕事ができる職場の環境づくりを理解して行動するようにしたいものです。
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