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建設けんぽは「協会けんぽ」と「建設国保」のどちらに加入すればいい?

「建設けんぽ」は、大きく分けて「協会けんぽ(全国健康保険協会)」と「建設国保(全国建設工事業国民健康保険組合)」の2つがあります。建設業経営者としては、どちらに加入すればよいのか、非常に悩ましいところ。

今回は、協会けんぽと建設国保それぞれが持つメリットとデメリット、補償内容や負担金額について解説します。

(今回のポイント)

①建設業の社会保険加入は、国の方針!

②協会けんぽは、保険料を会社が半分負担する!

③両者のメリットとデメリットを理解して選択しよう!

建設業の社会保険加入を国が推進している


2021年4月現在、政府は建設業の社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)の加入率100%を目指した取り組みを進めています。 建設業の待遇をほかの業界と同様のレベルに引き上げ、若手人材でも入ってきやすい業界に改善するというのが、大きなねらいです。

・加入状況は国土交通省に確認される


社会保険の加入状況は、次のようなタイミングでチェックされます。

・許可

・更新時の確認

・指導

・立入検査

・経営事項審査

・指名競争入札

どの場合においても、「加入していれば褒められる」というのではなく、「未加入ならば減点」という発想です。

「協会けんぽ」と「建設国保」


ここで、2つの社会保険制度である「協会けんぽ」と「建設国保」について、それぞれ説明しましょう。

・「協会けんぽ」とは?


協会けんぽとは、従業員が5人以上の個人事業所や法人に対して加入が義務づけられている社会保険です。

すでに被保険者(従業員)が建設国保に加入している場合、「協会けんぽ(健康保険)の適用除外」を申請して承認を受ければ、例外的に建設国保に加入し続ける方法も選択できます。

適用除外を受けていれば、国土交通省の加入調査も問題ありません。

・「建設国保」とは?


建設国保は、個人事業主や一人親方などが対象になる保険制度です。 協会けんぽと違うのは、被保険者が個人として加入することになる点です。

・保険料率の違いに注意


協会けんぽと建設国保の間にある大きな違いは、保険料の支払いです。 協会けんぽと建設国保では、保険料率と補償内容が以下のように異なります。

35歳の正社員で月給28万円、介護保険非適用で妻の扶養がある人と仮定しましょう。

〈協会けんぽ〉東京支部の例

保険料負担:会社が約14,000円/月、従業員が約14,000円/月

病気入院などへの補償:約6,200円/日(最長1年6ヶ月)

〈建設国保〉東京土建の例 保険料負担:従業員が約21,000円/月

病気入院などへの補償:約4,000円/日(最長6ヶ月)

負担額や補償内容については、全国どこの健康保険組合に加入するのかで変わります。 自分の会社が所在する場所の組合に確認してみましょう。

・最大のポイントは、「会社側の負担」の有無!


2つの保険制度の最大の違いは、保険料を会社が払う必要があるのかどうかです。

すなわち、協会けんぽは従業員の保険料を会社側が折半する必要がありますが、建設国保は従業員の負担だけでよいという違いがあります。 基本的には、協会けんぽのほうが、建設国保よりも手厚い補償があります。

特に、妻や子どもといった被扶養者がいる場合の給付は、協会けんぽのほうが充実している傾向にあります。国保には、「扶養」という観点があまりないのです。

・どちらを選ぶべきか?


以上のことをふまえると、「会社がお金を払わなくていいなら、適用除外を受けて国保にしたい」と考える経営者は多いかもしれません。

しかし、保険制度の選択については、メリットとデメリットの双方を勘案して総合的に判断したいところです。

まず、入院などへの補償について、国保の補償は手厚いものとはいえません。 入院した場合の費用を全額賄うのには心もとないですし、入院期間が半年を過ぎれば補償は止まってしまいます。

従業員の側からすれば、何かあった際のリスクをカバーするためには、民間の保険に加入するなど自分たちで対策する必要があるでしょう。 協会けんぽを選択したほうが従業員には優しく、会社への忠誠心を高める助けになるかもしれません。

・人材採用に影響する可能性にも注意


さらに、保険制度の選択が人材採用にも影響する事実を認識しておきましょう。 労働者の権利が世の中で強く意識されるようになった昨今の風潮として、従業員の社会保険料を払えないような財務体質の会社に対する風当たりは、かなり強くなっています。

特に若手や女性の採用を積極的に進めたい場合、保険が国保であるせいで応募者から敬遠されてしまう可能性は十分に考えられます。

確かに、小さな建設会社はかつて国保が普通で、「会社が従業員の保険料を払うなんてありえない」と公言する建設業経営者も多く存在しました。 しかし、時代は変わりました。もはや、「中小の建設業は国保が普通」といったような古い価値観で誰もが納得してくれる時代ではないのです。

【まとめ】


協会けんぽと建設国保の選択は、会社のランニングコストを左右する重要な課題です。 どちらに加入すべきかは、双方のメリットとデメリットをしっかり理解して判断してください。

https://www.hs-partner.co.jp/

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