2021Books&Cinema BEST3

□■2021年1年間で読んだ全書籍(205冊&34誌)の中からジャンル別に選んだベスト3

▼現代社会
国外
★★★★「アーミッシュの老いと終焉」堤純子著 未知谷 映画その他で知りえたアーミッシュコミュニテイの豊かな内実、実態。

★★★★「人は愛するに足り真心は信ずるに足る・アフガンとの対話」中村哲×澤地久枝対談
共著 岩波書店

国内
★★★★★「人新世の資本論」斉藤幸平著 集英社新書
人新世(ひとしんせい)とはノーベル化学賞のパウル・クルッツェンが提唱した
★★★「それでも人は生きてゆくー冤罪・連合赤軍・オウム・反戦反核」瀬戸内寂聴著
皓星社 徳島ラジオ商殺人事件の冨士茂子さん、連合赤軍の永田洋子さん、反戦反核、原発事故
は人災
★★★★「真実ー私は”捏造記者ではない”」植村隆著 岩波書店
挺身隊は従軍慰安婦ではないと右翼西岡力、桜井よしこの歴史を歪曲した著者への攻撃は再就職先や家族への脅迫メールに波及した。著者の朝鮮歴史文化への造詣の深さを認識する必読の書
▼現代小説
■男性作家
★★★★「旅する練習」乗代雄介著 講談社姉の子供でサッカー少女で中一で亜美ちゃんと忘れ物を届けに我孫子から鹿島まで徒歩旅行を敢行する。
★★★★「テスカトリポラ」佐藤究著 角川書店 奇妙な書名。メキシコ・アステカ文明の神の名だという。
★★★「橋」橋本治著 文藝春秋最終的に別々に殺人の罪を犯す三十歳の主婦。彼女たちの生い立ち、父と母の馴れ初めから家族、成長の過程を70年~80年代の時代背景を書きながら明かしてゆく
★★★「水曜の朝 午前三時」蓮見圭二著 新潮社 時代設定は69年~70年代に学生だった女性は今、癌に侵され死の寸前。過去の自分をテープに吹き込み、娘に渡す。

□吉田修一スペシャル
★★★「湖の女たち」吉田修一著 新潮社
★★★「長崎コレクションⅣ」吉田修一著、文藝春秋 出身地長崎にまつわる場所、人間関係が盛り込められた小説群
★★★「逃亡小説集」吉田修一著 角川書店<逃げろ九州男児><逃げろ純愛>他2編

○女性作家
★★★「神よ憐れみたまえ」小池真理子著 新潮社 北海道の銘菓会社の長男夫婦が殺される。遺児となった幼い娘のその後の一生。

★★★★「冬の光」篠田節子著 文藝春秋 大学時代の女友人は東北大震災時に突然の死。それを機に主人公は四国へ遍路の旅に出かける。

★★★「砂に埋もれる犬」桐野夏生著 朝日新聞出版 育児放棄された幼い子供ふたり。里親に受け入れられた長男のその後。
▼海外小説
★★★★「夏の沈黙」ルネ・ナイト著 古賀弥生訳 東京創元社 作者は英国・BBCTVドキュメンタリーディレクター。
★★★「たとえ傾いた世界でも」トム・フランクリン&ベス・フェンリイ著 伏見威蕃
訳ハヤカワ・ポケミス 原題:The Tilted World 著者は夫婦、ベス夫人はミシシッピ州オックスフォード大学の教授。

★★★「獄中シェクスピア劇団」マーガレット・アトウッド著 鴻巣友季子訳 集英社
舞台監督フィリックスは職を奪われ、名前を変えて刑務所の更正指導として

▼文学 
国内
★★★★「風よあらしよ」村山由佳著 集英社 大杉栄と伊藤野枝の出会いと虐殺されるまでのストーリー。
★★★★「JR上野公園口」柳美里著 河出書房新社茨城の家を出て、東京へ出稼ぎの男。息子は亡くなり、茨城に帰るが・・

★★★「三度目の恋」川上弘美著中央公論新社

外国 
★★★★「オールウエイズ・カミングホーム」アシュラ・K・ル・グウイン著 星川淳訳早川書房 作者の描く原始社会共同体のものがたり。
★★★「82年生まれキム・ジヨン」チョ・ナムジュ著 斉藤真理子訳 筑摩書房 韓国で社会現象となった
★★★★「ガリヴァー旅行記」スウイフト作 平井正穂訳 岩波文庫 読書会テキスト
特に第三篇、第四篇。日本への渡航記

文芸誌
★★★「すばる5月号」小山内恵美子「しょんなかもち」井上荒野「錠剤F」田中慎弥 連載
★★★「群像11月号」創刊75周年 インタヴュー「不定形な時代を描く」吉田修一
聞き手陣野俊史 須賀ケイ「木の匙」追悼色川大吉

エッセイ
★★★「父の生きる」伊藤比呂美著 光文社
★★★「硝子戸のうちそと」半藤未利子著 講談社 夏目漱石の孫で半藤一利さんの妻
が書き下ろしたエッセイ集
★★★「私の暮しかた」大貫妙子著、新潮社

アート&カルチャー
★★★「日本建築集中講義」藤森照信+山口晃解説著 中公文庫 建築家×絵師・日本画家の日本建築有名家屋探訪記
★★★★「山口晃大画面作品集」山口晃画 青幻舎者 著者は芸大出の画家/絵師
★★★「自分の中に毒を持て」岡本太郎著 青春文庫 ”あなたは常識人間を捨てられるか”

評論
★★★「細雪とその時代」川本三郎著 中央公論新社 谷崎潤一郎「細雪」の舞台となる大坂・芦屋・神戸
★★★「3・11死に神に突き飛ばされる」加藤典洋著 岩波書店 原子力の平和利用はまやかしで目的は軍事利用。「核燃料サイクル」を放棄させることが重要。 
★★★「仕事にしばられない生き方」ヤマザキ・マリ著 小学館新書 パンク好きな音楽少女時代、その後イタリー、シリア、シカゴに移り住む
 
自伝・評伝
★★★★「妻と僕ー寓話と化す我らの死」西部邁著 飛鳥新社 重い書。幾度も読まないと読解できない。なぜなら妻の他界後、追って自死した著者の自論が述べられているからだ。
★★★「夜の歌」なかにし礼著 毎日新聞出版 サンデー毎日連載の自伝小説。
★★★「文芸の条件」森村誠一著 講談社 エッセイ、俳句、自分史 角川春樹との出会いそして初出版と映画化

石牟礼道子特集
★★★★「死を想うーわれも終には仏なり」石牟礼道子・伊藤比呂美対談集 平凡社新書
★★★「みっちゃんの声」石牟礼道子・池澤夏樹対談&著 河出書房新社 2008年7月~2012年6月、2014年8月~2017年11月

▼歴史
日本史
★★★★「民俗知は可能か」赤坂憲雄著 春秋社 第一章 石牟礼道子 第二章 岡本太郎 第三章 網野善彦 第四章 宮本常一 第五章 柳田国男
★★★★「疫病退散」島田裕己著 ㈱サイゾー
★★★★「日本列島の誕生」平朝彦著 岩波新書多くの示唆、興味が沸々と沸く地球学の書。

地域史
★★★「海洋の古代史」関裕二著 PHP新書 本書より以下、抜粋秦氏6C半ば 山国川右岸に屯倉が増え、秦氏が管理。8C初め 豊前国中心部に密集集落(正倉院文書)肥前国風土記に松浦郡(こおり)値嘉郷条(五島列島)

★★★★「幻島図鑑ー不思議な島の物語」清水浩史著 河出書房新社 The Book of Visionary Islands in JAPAN小値賀・六島、宇々島が詳しく写真と共に詳しく掲載

時代小説
★★★「江戸染まぬ」青山文平著 文藝春秋 魅了する独特の文体。通俗的時代小説とは一線を画す心理描写
★★★「かけおちる」青山文平著 文藝春秋 江戸後期の東北、鮭の遡上の川を開発する藩士
★★★「涅槃(上)」垣根涼介著 朝日新聞出版宇喜田直家の幼少期から一国の主に至る経過。

世界史
★★★「一冊でわかるインド史」水島司著 河出書房新社
★★★★「誰が原子を見たか」江沢洋著 岩波現代文庫 エピクロス「教説と手紙」ブラウン運動、空気の圧縮、ボイル・シャールの法則

戦争・革命史
★★★★「建国神話の社会史」古川隆久著 中公選書 読書会のテキストとして読む。
明治になって虚偽の建国神話をでっちあげ天皇制の統治思想とした。

★★★「戦争というもの」半藤一利著 PHP社 結語:自筆”戦争は国歌を豹変させる。歴史を学ぶ意味はそこにある”

★★★「漫画家たちの戦争ー戦争の傷あと」作者 藤子F不二雄、樹村みのり 手塚治虫(すきっ腹のブルース)、北見けんいち、今日マチ子、西岸良平、滝田ゆう他 監修者中野晴行 金の星社 

▼宗教・哲学 
★★★★「人類滅亡を避ける道ー関野吉晴対談集」 東海教育研究所 船戸与一、藤原新也、池澤夏樹、山極寿一、島田茂他との対談
★★★「ブッダが説いた幸せな生き方」今枝由郎著 岩波新書 第一章仏教徒の幸せ 第二章ブッダの生涯
★★★「アメリカで仏教を学ぶ」室健二著 平凡社新書
★★★「日々是修行」佐々木閉著 ちくま新書 現代人のための仏教100語

▼俳句関連 
★★★「俳人探訪」栗林浩著 文学の森 円錐同人の著者。目次より高屋窓秋「花の悲歌つひに国歌を奏でをり」、渡辺白泉、三鬼回復裁判、細谷源二、赤尾兜子、寺山修司、村越化石

★★★「小林一茶」矢代静一著 河出書房新社序章、第一章~十四章、そして終章。

★★★「存在者 金子兜太」黒田杏子編著 藤原書店 若かりし金子は北九州在住だった竹下しづの女と交流。

★★★「寂聴詩歌伝」対談瀬戸内寂聴 聞き手斉藤眞爾 本阿弥書店俳句評論、自作60句
 
▼詩集
★★★★「聞くと聴こえるーOn listening 1950-2019」谷川俊太郎著 創元社

■2021年邦画洋画シネマ(DVD)鑑賞全作品の中から選んだジャンル別ベスト3
◆劇場にて◆
<ドキュメンタリー>
大分シネマ5・福岡KBCシネマにて
★★★★「狼をさがして」2020年 韓国 74分 ドキュメンタリー
監督兼プロデューサー:キム・ミレ 出演:太田昌国、荒井まり子、浴田由紀子、宇賀神寿一ほか
大分アミュプラザにて
★★★★「MINAMATA」2020年 米 115分 監督:アンドリュー・レピタス 音楽:坂本龍一 出演:ジョニー・ディップ、美波、
真田博之、國村隼、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、ビル・ナイ
BY DVD
③★★★★★「君が死んだ後で」2021年 日本 200分 ドキュメンタリー
監督:代島治彦(三里塚のイカロス) 
1967年10月8日羽田弁天橋で佐藤首相訪ベトナムを阻止する山崎博昭さん(18歳・京大生)は虐殺された。大手前高校の同窓生達が
当時のこと、その後の処し方を振り返りつつあの熱い時代は何だったのか問い直し語られていく。山本義隆元議長のベトナムでの講演に熱く感動した。
●On Netflix■
◎ドキュメンタリー
★★★「12年の長い夜」2018年 フランス・ドイツ・スペイン・アルゼンチン・ウルグアイ製作122分 監督:アントニオ・デ・ラ・トレ 出演:チノ・ダリン、アルフォンソ・トール他
あのホセ・ムヒカウルグアイ元大統領の12年間に及ぶ過酷な投獄生活。軍事独裁政権に抗し、諦めない心と仲間で弾圧を打ち破った感動のドラマ。

●劇映画
▼邦画
★★★★★「怒り」2016年 日本 142分 シリアスドラマ監督:李相日 出演:渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ(千葉編)
妻夫木聡、綾野剛(東京編)森山未来、広瀬すず(沖縄編)ピエール瀧
千葉・東京・沖縄を舞台に人間の憎悪を描く。編集の妙、リアリティに驚嘆
★★★「小さなおうち」2014年 136分 原作:中島京子 監督:山田洋次 出演:松たか子、黒木華、倍賞千恵子、妻夫木聡、米倉斉加年
★★★「火口のふたり」 2019年 日本 115分 原作:白石一文同名小説 監督:荒井晴彦 出演:柄本佑、瀧内公美
離婚、倒産による退職で全てを失った男は秋田に帰郷する。結婚前のかって愛し合った女性と身体を重ねていく。ふたりで挑む極限の愛。結婚相手は自衛隊の幹部、最後は火山の爆発前夜で世界は暗転する

名作再見
★★★★★「復讐するは我にあり」1979年 日本 140分同名原作:佐木隆三・池端俊策 監督:今村昌平 撮影:姫田真佐久
出演:緒方拳、三國連太郎、ミヤコ蝶々、倍賞美津子、小川真由美
改めて観たら、気付かなかった事があり、冒頭のシーン、殺人の犯行後に頻繁に緒方拳が口ずさむ歌は♪参ろうぞ パライソの寺に”のオラショーのメロディ。

▼アジア
★★★★「タクシー運転手ー約束は海を越えて」2017年 韓国 137分
監督:チャン・フン 出演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン
1980年の光州蜂起の実話を基に描かれた作品。見たかった映画だった。やっと見れた。
市民学生が市役所に立て篭もる場面はなかった。
▼ヨーロッパ
★★★★「ガーンジー島の読書会」2018年 英仏合作 124分監督:マイク・ニューウエル、出演:リリー・ジェームズ、ミキール・ハースマン、グレン・パウエル
ナチスに占領されたイギリス領の島での読書会に女流作家ジュリエットが訪ねてくる

★★★★「オオカミの皮をまとう男」2017年 スペイン 110分 監督:サム・フエンテス 出演:マリオ・カサス、イレーヌ・エスコラー、ノレス・ディアス
山奥で孤独に暮す猟師が近くの村から金銭で妻を娶る。台詞の少なさ、静かな緊張感は
「ニーチェの馬」を若干彷彿させる。

★★★★「ファーザー」2020年 英仏合作 97分 アカデミー主演男優・脚色賞獲得作品 監督:フローリアル・ゼレール 
出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン 老後主人公はアルツハイマーとなる。

▼アメリカ
★★★★「GREEN BOOK」2018年 米国 130分 監督:ピーター。ファレリー 出演:ヴィーゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ 第91回アカデミー賞作品賞、助演男優賞など三部門受賞
クラシック&ジャズピアニスト・ドクター・シャリーとシャリーの運転手兼ボディガードを
勤めたイタリア系トニー・ヴァレロンガによって1962年に実際に行われたアメリカ最南部を回るコンサートツアーをベースに作られた。目に余る人種差別、偏見の障害を乗り越えて、二人に友情が生まれ、無事にニューヨークに帰ることができた。司法長官ロバート・ケネディも出てくる。

★★★「ブラック・クランズマン」 2018年 米国 136分 実話 
原作;ロン・ストールハウス  監督:スパイク・リー  音楽:テレンス・ブランチャード 出演:ジョン・デーヴィッド・ワシントン(実父Dワシントン)、アダム・ドライバー、ローラ・バリアー
コロラドの黒人警官刑事がKKKに潜入捜査。監督スパイク・リーの映画グリーンブックの評価への反発か?

⑦★★★★「消えない罪」2021年 米 114分  監督:ノラーフィング・ジャイト 出演:サンドラ・ブロック、ビンセント・ドノフリオ ビオラ・ディビロ
保安官殺しで刑期を追え、出所した彼女は社会復帰を目指すが・・エンドシーンで落涙した。

名作再見
★★★★★「ゴッドファーザーPartⅡ」1974年 米 200分
監督:フランシス・フォード・コッポラ 出演:アル・パチーノ、ロバート・デュパル、
ダイアン・キートン、ロバート・デニーロ

▼インド
★★★★「ピンク」インド映画 2016年 インド 89分 法廷社会ドラマ
監督:アニルッダ・ロイ・チョウドリー 出演:アミタブ・バッチャン、タープシー・バンヌ、キールティ・クルハーリ
レイプ問題を扱うリーガルサスペンス「ノー」はノーの意味だとの台詞が重い

★★★★「ムンバイ・ダイアリーズ」 2011年 アーミル・カーンフィルムズ
 原題:Dhubi Ghat(洗濯場)監督キラン・ラオ(アーミル・カーンの妻)デビュー作 
出演:モニカ・ドグラ、プラティーク・バッバル、アーミル・カーン他

★★★「スケーターガール」2021年 インド 107分 監督:マンジャリ・マキジャニー 出演:レイチェル・サンチータ・グプタ、アムリット・マゲラ ワヒーダ・レフマン
ラジャスタン州ウダイプール近郊の村で暮す貧しい少女プレルナがスケートボードで自由と自信を取り戻す感動のストーリー。

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