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やさしさ上級者に出くわした

週に1、2度、10kmほどを1時間くらいかけて走っている。比較的信号の少ない川沿いの道を走っているのだが、それでも押しボタン式の信号がいくつかあって、何度かは立ち止まることになる。
この押しボタン式というのが実はちょっと苦手で、あまり人通りの多くない通りだと、自分1人が渡るのに車を何台も止めることに引け目を感じてしまい、ボタンを押さずに車が途切れるのを待って渡ることが多い(本当はよくないのだが)。

ある日その横断歩道で車が途切れるのを待っていた時のこと。
横断歩道の向こう側を1人の女子高生が右から左へ歩いていた。僕はぼけーっとして待っていたのだが、その子はこちらを一瞥すると、「このおっさん、押しボタン式って気づいてないのかな」と思われたのだろうか、歩きながらサッとボタンを押してそのまま真っ直ぐ左の方へ歩いて行った。
あっと思い、お礼を言いたいくらいだったのだが、後ろから声をかけるのは憚られるし(そんな勇気はない)、彼女の方もこちらを一切振り返ることはなかった。
そのこれ見よがしでないやり方、見返りを求めない姿勢、いや、かっこいいなーとその後も走りながら反芻してニヤニヤしてしまった。

人にやさしくするのは簡単なようで難しい。重いものを持ってあげたり高いところにあるものを取ってあげたりというのが大事なのは理解しているし、どちらに価値があるとかいうことでもないのだが、上の話はそういったことよりも、何というか、やさしさ偏差値が高いような気がする。

そういう自分はどうかというと、以前電車の中で席を譲ろうとしたら「いや、次で降りるからいいよ」と断られることがたまたま2度続いて以来、断られたらどうしようと席を譲るのが怖くなっている。

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