THE田舎

おとんの畑の話。

自転車の子ども乗せる専用のカゴでしかついて行った記憶がないので、本当に小さい頃までのことなのだと思う。

家から畑までは、その自転車で10分程度。国道とそれに沿った線路を超え(その踏切のアスファルトにケルベロスみたいなパンダの絵がぼろぼろになっている)、そこから上はもう山の麓という感じで、田んぼの中の緩やかな坂道を登ると父が借りた畑がある。途中にあるぼろ家に貼ってある、『あんしんはしんわ』とあと何か(たぶん田舎特有のキリストがどうこうのやつ)のポスターというか看板が好きだった。紙ではなく、鉄板とかでできていて、当時すでに錆びてボロいものだった。幼い私はどこかへ連れて行かれるとき、その決まった道のりの途中に道標を設定して、毎回それを確認して楽しむ癖があったようだ。

父の畑のスペースは、たしか10m×10mとかそんくらいだったと思う。教室1つ分くらい。そもそも教室ってそのくらいかなあ。段を違えて、借主さんか誰かの畑が奥にある。私はそっち側にはなるべく踏み入らないようにする。畑そのものはもちろん、そっちに伸びる道にも。


以前書いた通り、私は畑で畑仕事を手伝うわけでもなく、畑の周辺で1人で遊んでいた。入口の方に、壊れた機械の一部みたいなのが置いてあったので(今思い返すと何の機械なのか全く分からない)、それを乗り物に見立てて遊んだりした。お気に入りだった。


一度だけ、蛇に遭遇したことがあった。草むらを歩いてると、足元をシュルッ!と素早く何かが通り抜けていった。危うく踏むところだった。姿はよく見えなかったけど、その動きの曲線で蛇だと分かった。よく見えなかったこともあって、恐怖より感動が勝った。今で言うと、ネットで聞く典型的なハラスメントに実際に遭遇した感じ。これが噂の!という感じ。


冬眠中のカエルにも遭遇した。そのときは、父の側にいた。父が鍬で畑を耕していると、土の中から握りこぶしサイズの丸々としたカエルが突然現れた。カエルはねぼけてるらしく特に逃げもしなかった。そのときも、気持ち悪いより実際に見れた感動が勝ち、さらに、「あと少し鍬の位置が違ったら、このカエルに当たってた…」という恐怖が勝った。さらに、父は平然としていたので、こんなリスクが日常茶飯事なことの恐怖が勝った。

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