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報道の自由と桎梏

何ヶ月も前のネタではありますが、マスメディアに関して各国の報道自由度ランキングというのが毎年発表されています。

それが本当に妥当かどうかは別として、日本の今年の順位は世界で66位と決して高くありません。自由主義・民主主義国家としては低い方でしょう。

北朝鮮や中国に比べるとマシといわれても、そもそも国家体制が全く異なるそれらの国と比べる意味がありません。といって、西欧や北欧の国々と比べるとどうしても分が悪くなります。ただ、政権批判はマスメディアやSNSを通じて普通に行えますし、野党指導者が毒を盛られたり、政権批判した書店主が拉致されたり、政権批判したSNSアカウントが凍結されたりすることもありませんので、別に報道自由度が高いわけではないけれど、絶望するほどひどくはない、といったところでしょうか。

であれば、マスメディアは自身に対する圧力やしがらみを減らす方に動いているのかというと、どうもそうには思えません。長年存在する記者クラブ制度や、新聞であれば再販制度、テレビ局なら電波法といった法律で制限の無い自由競争から守られている既得権益もあります。そして近年増えたマスメディアへのしがらみが、新聞代金に関する消費税軽減税率です。

もし、いつの日か政権が暴走してマスメディアを強烈に締め付けようとしたとき、これらの仕組みを使えば容易に締め付けられます。そのような圧力には我々は屈しない! と啖呵を切られても、あまり説得力が無いというか、鎖につながった首輪をして、与えられた餌を食べながら飼い犬がワンワン吠えていてもあまり迫力はありません。

その犬種がチワワかドーベルマンかによって怖さは変わりますが、自らを縛る鎖を増やしてしまって、報道自由度が西欧に劣る日本は問題だ!と叫んでいるのも滑稽に思えてきます。

報道自由度を高くしたいのであれば、取材方法やマネタイズについてもっと独立性を高めないとどうしようもないと思うのですが、当の報道機関自身があまり関心は無いのかも知れません。

ちなみに、報道自由度ランキングの日本の順位の根拠としていろいろ指摘されていたようですが、各社によってそのピックアップは異なります。

日本経済新聞では、編集方針が経済的利益に左右されること、
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58344020S0A420C2000000/
朝日新聞では、原発問題や政権批判で記者がSNS上で攻撃されること、
https://www.asahi.com/articles/ASN4P64NRN4PUHBI01W.html
時事通信では、記者クラブ制度がフリーランスや外国人記者差別になっていることと、SNS上での政権批判が攻撃されること、
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020042200205&g=int

が理由として取り上げられていました。各社それぞれの方針によって取り上げる内容が異なるというのは、いろいろと分かりやすいですね。

産経新聞は今年の報道自由度ランキングの記事がネットで見つかりませんでした。有料会員のみ閲覧できるのかも知れません。まさか取り上げてないことは無いと思いますが。

ちなみに、過去の記事では以下のような取り上げ方でした。まあ産経らしいと言えば産経らしいですね。

2016年では安倍首相批判などでメディアの独立性を失っていることと、特定秘密保護法が理由としていて、
https://www.sankei.com/entertainments/news/160420/ent1604200009-n1.html
2018年では、経済的利害・フリー記者&外国人記者の制限が理由でした。
https://www.sankei.com/world/news/180426/wor1804260005-n1.html

マスコミだって人の子ですから我が身はかわいいですし稼がなければ生きていけないのは事実ですが、自由を自ら犠牲にして恵まれた立場を選んでいるというのは、ジャーナリズムに関する大いなる皮肉でしょう。

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