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トップが説明する相手は誰なのか

今、手元にない本から引用するので不正確になりますが、佐々淳行さんがあさま山荘事件について書いた本にこんなくだりがありました。

メディア担当の部下が、事件の進展がない日の記者会見を中止しようとした時に、中止ではなく会見を開いて、今日は進展がない、ということだけ伝えて記者に解散してもらった。いつも記者会見があったのに何も無いからと言って記者会見を開かなかったら、かえって記者連中が邪推して色々と騒ぎ立てるし、それでかえって事件解決が遠のくことになりかねない。伝えることがない時には伝えることがないと伝えることが大切なのだ。

はっきりは覚えていないですがこんな感じの内容でした。マスメディアとその対応の一つの要点であるように思います。

今ちょうど吉村大阪府知事の記者会見が終わったところです。最近は毎日のように住民に対して発言をしています。また、入れ違いのように山本群馬県知事の記者会見が始まったところです。これらは簡単にネットで見ることが出来ます。テレビではテレビ局が流さない限り見ることは出来ません。直接住民に訴えることが出来るインターネットのストリーミングはまさにこういう使い方をすべきなのでしょう。

トップには膨大な仕事がありますし、スポークスマンが他にいるのでそれに任せる、というのも一つの選択肢ではありますが、責任者が責任を持って発言する姿を見せる、というのも重要な仕事の一つです。

議院内閣制の国家では、首相は国会によって選出されるものですので、行政における責任は議会に対して説明する必要があります。一方で都道府県知事は住民による直接投票で選出されます。首相が国会に対して説明し、知事が住民に対して説明するのは法的に見れば当然ではあるのですが、こういうところに政治の神髄があるように思えます。

現状は毎日感染者数、死者数、回復者数が増えていく状況です。
「今日は特に何もありません」
という記者会見は首相だろうと知事だろうとあり得ないでしょうけれど、トップが毎日姿を見せること、特に国会やマスメディアのワンクッションを挟まずに直接国民に語りかけることは、危機的状況においてこそ必要なはずです。

第二次世界大戦時のフランクリン・ルーズベルトの炉辺談話ほどのインパクトがなくてもいいので、直接語りかけることはトップとして、はっきり言うと安倍首相にとっては最重要な仕事なんじゃないのかなと、知事の記者会見を見ながら思ってしまいました。

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