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「くたばれ効率性!」?

タイトルは、アラン・グリーンの名作「くたばれ健康法!」というミステリのもじりですが、効率性を優先する時代ならこんなタイトルもありでしょう。

効率性そのものはもちろん重要ですし、日本企業・日本社会の生産性を向上させるのは、今後の日本が生き残っていくには欠かせないものですが、個人の趣味のレベルでも効率性のために他を犠牲にするとなると問題です。

ファスト映画を巡る著作権侵害の裁判では、映画会社がYouTubeに公開した人たちに多額の賠償金を求める訴訟を起こしました。

金額が妥当かどうかはともかく、著作権侵害であるのは間違いないと思うのですが、SNSなどでは支持する声もあるとの記事も見ました。支持する人はおそらくファスト映画ユーザーなのでしょうけれど、まあビジネスの世界では通る声ではありません。もちろん筋書きだけを知りたいという要望はあるのでしょうけれど、オチまで無料でばらされたら映画だろうとどんな創作物だろうとたまったものではありません。

ファスト映画の問題は著作権にあるのは当然ですが、前述のように、そのような需要があることが原因でもあります。

私個人としては、作品そのものを鑑賞するのではなく、無関係な人間が勝手に切り貼りした動画だけを見て、その映画の中身を知るという欲求が理解出来ないのですが、結構そういう需要はあるのでしょうね。

作品の筋書きと結末だけを知ると言うことは、当然ながらその作品を楽しんだことにも鑑賞したことにもなりません。ただ、筋書きと結末を知っているだけのことです。

例えば野球やサッカーの試合をハイライトだけ見て、その試合を見たことにはなり得ないように、映画だってファスト映画では見たことにはならんでしょう。

ただストーリーだけを知ってどうするのかという気がします。だったらウィキペディアや映画好きの人のネタバレ感想ブログでも読んでおけば良いんじゃないでしょうか。

映画に限ったことではなくて、小説で言えば、それこそウィキペディアや要約サービスを使ってその大まかな内容だけを知識として頭に入れておくようなものです。本当に読んだことにはなりません。

人と話をするときのネタとして仕入れているのかも知れませんが、本当に現物を楽しんだ人とは同じレベルでは話せないでしょう。

映画にしろ小説にしろ、実際に鑑賞・通読した時の感動や印象は、話の展開自体にあるとは限りません。ささいな、他人からしたらどうでもいいことが記憶に結びつくことがあります。それこそ、実際に見た・読んだ人のリアルさが出てくるのですが、誰かが勝手にまとめた説明だけ見たとしてもそこまでの深みは出ないでしょう。もしも、お互いにファスト映画だけ見た人同士で、その映画についての話が盛り上がっているのだとしたら創作物の地獄のような世界です。

概要を掴む、エッセンスを取り入れるというのは、生産性が必要な分野では効率を考えるとそれはそれで良いことです。ただ、それがエンタメ分野、趣味の世界にまで短時間で中身を把握することを最優先にしてしまうと、それは趣味の時間そのものが時間の無駄と言っているようなものです。

趣味にしろレジャーにしろ、時間をかけること自体に意味があるはずです。

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