脱石炭と脱原発の両立という困難をどう克服するか

スペインのマドリードで行われている国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)に絡み、日本政府の地球温暖化対策が不十分だとして世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」から「化石賞」が贈られました。

もちろん皮肉の賞ですが、国内の電力のほとんどを火力発電で賄っている日本が該当するのはある意味当然で、政府も事前に覚悟はしていたとのことです。環境保護団体やリベラルな人たちは今こそ日本政府に脱石炭を訴え、非難を浴びせるのかと思いきやそれほどの熱量は感じられません。

さて、この「化石賞」という不名誉に対して立てられる方策としては、「脱石炭」つまり火力発電の削減となりますが、それはとりもなおさず原子力発電への移行ということになってしまいます。原発以外の電力供給は、いまだ火力を補うほどはありません。水力は増やせる限界がありますし、再生可能エネルギー発電にしても設置に大量のコストがかかります。その上、供給電力が火力や原子力に比べて安定しません。

はっきりいうと、「脱石炭」と「脱原発」は現時点では矛盾した概念です。

そうは言っても、個人的には原発に100%の信頼は置けませんのでいずれは減らすべきだと思っていますし、Co2は喫緊の課題です。

CO2排出に目をつむって脱原発を進めて火力発電に頼るのか、
原発のリスクに目をつむって脱石炭を進めて原子力発電に頼るのか、
脱石炭と脱原発のバランスを取りながら少しずつ再生可能エネルギー発電への移行を進めていくのか。

政府寄りだろうと反政府寄りだろうと、何らかの旗幟は鮮明にすべきでしょう。

もちろん、今すぐ火力発電も原子力発電も全てストップして再生可能エネルギーのみに依存することが出来るのであれば万々歳ですが、そこまでの発電量・効率・低コストが実現出来ていません。

じゃあ人類が使う電気自体を減らせば良いか、ということも出来ません。今、身の回りにある物品や提供されるサービスのほとんど全ては豊富で安い電気ありきで出来ています。それらを全て手放して、はるかに不便な暮らしを選べる人はごくわずかです。

ドイツはメルケル政権の元、脱原発を進めましたが、いざという時には陸続きの近隣国、特に原発大国フランスからの電力供給があるからこそでもありました。

第一、今のCO2削減の象徴的な協定はパリで結ばれたものです。原発大国のお膝元で結ばれたパリ協定は原発による環境破壊を織り込んでいないとも言えます。今すぐ火力発電を減らすには日本では原発再稼働しかありません。

それじゃあ原子力発電を推進してガンガン原発を新規建設していくべきだ、とも思いません。東京湾や大阪湾などの都心部近くではなく福島県や福井県の湾岸に建設している時点で、土地代もさることながら危険性も原発推進派も認めていることになるのではないでしょうか? 本当に安全なら各都道府県の県庁所在地に建設してこそ効率の良いエネルギー利用になるでしょう。

ドイツが大国の中では進んで再生可能エネルギーに注力していますが、今、ドイツはノウハウの習得や技術の進歩を進めることが出来る経験値を先んじて得ています。

火力発電も原子力発電を減らしつつ、再生可能エネルギーに少しずつ移行していき、効率化・低コスト化を進めていけるようにするしかないのではないでしょうか?


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