累進課税の不公平さと、守られるものの差は釣り合うか

累進課税が不公平だという思いは高所得者層にとっては普通のことかも知れません。たくさん働いてたくさん成果を出してたくさん得た収入を、その多さに応じてより多く取られるという累進税については過度に行うと、その高所得者の国外流出や、高収入のための仕事を行わなくなるとか、あるいは脱税といった方法を選ばせかねません。

ですので、累進課税は適度な度合いで課されている訳ですが、そうはいっても課税される方にしてみれば、少ない方が良いのは当たり前です。

税金は様々な公的サービスのために使われます。役所や警察や消防などの公的機関の運営というのは当然ですし、道路や橋などのインフラ費用も分かりやすく目に見えるものです。

国家にしろ自治体にしろ、基本的には国民・住民の生命と財産を守るために存在しているのであり、そのためのサービスが原点となっています。社会が複雑化する中で公的サービスも複雑化していきますが、基本は生命・財産の保護です。

人の命が平等かどうかはもしかすると思想的に違いがあるかも知れません(もちろん、ほとんどの人は皆平等だと言うでしょうけれど)が、財産は平等ではなく差があります。

守られる財産に差があるのであれば、守るために必要なコストの負担も差があるという考えは出来ないでしょうか。

元も子もない言い方で言うと、金持ちの方が守ってもらうモノが多いのだから、貧乏人よりも税金を払え、ということです。預貯金や不動産だけではなく、高収入を得られる仕事や環境も保護されるべき対象です。

また、貧富の格差が増大して社会が不安定化してしまうと、一朝事あらば富める者の方がより多くのモノを失いかねません。そうならないためにも、富の再分配は必要ですので、累進課税が求められます。

所得税の累進課税は高所得者に対して負担が大きくなる税金ですので、所得は少ないけれど過去の資産が多い人にとっては負担が軽い税金となります。

その点では所得税の累進課税は、高所得者と資産家の間で不公平だとも言えますが、その代わりに、資産家に関しては相続時に相続税で資産が多い人の方が課税負担が高くなります。所得税ほどではありませんが、相続する人数に対して資産が比較的少ない場合に税金が軽減されます。逆に、少ない相続者に多額の資産を相続させる場合に割合が高くなる仕組みですので、ここで富の再分配が行われます。

相続税もいろいろと抜け道というか、今すぐに使わせるために不動産や教育資金での贈与に例外を設けていますので、資産家が資産家で無くなるほどの累進性ではないですが、不動産は国外移転できませんので、ある程度はお目こぼし的なものでしょうか。

結局のところ、貧しき者が富める者を襲ったり、革命で生命財産が脅かされないために金持ちは他人よりも余計に税金を負担しなさい、という理屈です。

やり過ぎたら富や才能を持って国外に逃げてしまう可能性はありますが、そもそも逃げられる先の国というのはまず先進国ではありません。逃げた先の国で生命・財産を維持するために、移転のための費用や、警備・ボディガード費用や、現地での合法的に上前をはねられたり賄賂を支払ったりすることを考えると、大して割が良いわけでもないでしょう。

そう言えば、レバノンに逃げたあの人はどうなっているんでしょうね。

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