国連分担金の肩代わりとそのための増税というのはあり得るのでしょうか

国連が資金不足のため職員の賃金支払いが出来ない恐れがあるとグテレス事務総長が訴えるというニュースがありました。

「来月の給与払えません」=国連事務総長、分担金滞納の加盟国に訴え
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019100900662&g=int
国連のグテレス事務総長は8日、総会第5委員会(行政・予算)で加盟国(193カ国)の一部が分担金を滞納していることに言及し、「今月、過去10年間で最も深刻な赤字に陥る見通しで、11月の人件費をまかなえない恐れがある」と訴えた。
(中略)
国連の報道官によると、これまでに129カ国が総額約20億ドル(約2100億円)の支払いを済ませている。

国際連合は世界中の国が資金と人材を分担して出し合って成立している組織です。国家の組織であればその国内で徴収された税金で運営されます。脱税はどこの国でも悩みどころですが、税金の徴収にはどこの国でも強制力を発揮することが出来ます。しかし、国際組織である国連では強制的に徴収できない、各国からの分担金で運営せざるを得ません。

各国の分担金の金額はそれぞれの国力・経済力などで割合が決められています。アメリカ合衆国がもちろん分担金の割合はトップになります。

2017~2019年国連通常予算分担率・分担金
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html

当然ながら、G20級の国々が支払う金額の総額が大半を占めますが、それでもそれ以外の国々の割合も16%あります。本来、全ての国がきちんと分担金を支払っていれば国連が資金不足に陥ることなどありません。

しかし、ここ数年は毎年のように危機が叫ばれています。

国連分担金 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト
https://www.taro.org/2019/01/国連分担金.php
国連では、分担金の滞納が大きな問題になりつつあり、2018年9月には、なんと加盟国193か国のうち52か国が通常予算分担金の支払いを滞納しているありさまでした。
分担金を2年分滞納してしまうと総会での投票権が停止されます。

さて、上記の河野大臣のブログにもありますが、国連に参加している国にとって、分担金を払わないことによる総会投票権停止が分担金支払いの防止になるはずです。

国連分担金を払わず議決権を失う(パプアニューギニア)
https://pic.or.jp/pi_news/2365/

2年半前の記事ですが、このパプアニューギニアのように実際に支払わずに投票権を失うケースも現実に存在します。

トランプ大統領になってからのアメリカのように、自己の外交政策を認めさせようと意図的に支払を遅らせるケースもありますが、大半の未払い国は支払いたくても支払えない状況の方が多いでしょう。

去年の記事ですが、

国連「かつてない現金不足」 分担金81カ国が未払い
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33475830X20C18A7000000/
26日時点で加盟国193カ国のうち、最大の資金拠出国である米国を含む81カ国が分担金を払っていない。米国以外ではスーダンやアンゴラ、ケニアといったアフリカ諸国や、イランやシリアなど中東諸国、北朝鮮などが未払いとなっている。

とありますので、アメリカ以外は統治機構が破綻している国、経済制裁を受けている国が並んでいます。

さて、ここで二つ、思考実験というか仮定の想像をしてみようと思います。

まず一つ目として、他国が国連分担金の肩代わりをすることは許されるのか?

当然ながら他国が国連の口座に直接振り込むわけではありませんが、何らかの名目を付けて有償か無償の援助を行い、そのお金の全部または一部を国連分担金に回すとしたら、その国と援助してくれた国との関係は対等なものとはならないでしょう。

さらに例えば、
「援助してやった金で総会決議に加われるのだからウチの国に関する議決で味方しろ」
と要求した場合、まず拒めないのではないでしょうか。総会だけではなく、様々な委員会や国連内の下部組織においても片務的な協力関係が出来上がってもおかしくありません。

国連総会は一国一票だからこそ小国の利害も比較的尊重されますが、これを認めると経済的に余裕がある国が票を買い取ることが出来るようになります。そんなケースがあったとしても、国連としてはその分担金を受け入れるでしょうか。

そして、二つ目の想像として、そのように他国の分担金を肩代わりする費用を捻出するために、増税することを国民が承認するでしょうか?

自国の対外的発言力・影響力を何が何でも強めたいと思うような人は賛成するかも知れません。あるいは、国際協調を大事と考える人は国連が資金不足から機能停止に陥ることを心配して賛成するかも知れません。前者は「国家の威信のため」、後者は「国際協調のため」に自国が負担をするのもやむを得ないと考え、増税に賛成するとしたら、その割合はどれくらいになるでしょうか? 国家のため・国際社会のためという理由による増税を拒める人はどれくらいいるでしょうか?

ここまで考えてきたのはあくまで想像であり、実際にはそんなことも起きず、破綻しない程度には国連に分担金が納められ、何とかやっていけるのでしょうけれど、「そんなこと起きるわけがない」と高をくくるよりは、「もしかしたら・・・」と心構えしておいても損は無いでしょう。


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