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教育を変えても教育の過熱対策にはならない

中国政府が民間の教育産業をぶっ潰すような政策を突然行いました。私教育産業の企業たちに、非営利団体への移行を事実上強制的に命令したようです。

過熱する都心部の市民の教育意識に対して冷や水をぶっかけて、保護者の生計の中で私教育への費用がかさまないようにするためのものなのでしょうけれど、思い切ったことをしたものです。これによって上場している教育産業は軒並み株価大暴落に見舞われました。株主への配当が見込めなくなりますから当然ですね。

日本や韓国同様、トップクラスの大学への進学のために子どもへの私教育に多額の費用がかかっていることが原因です。

それ以外にも、中国では住む場所によって進学する学校が決まるため、優秀な進学校の校区への移住が集中し、その学校の運営は大変になり、そもそも引越のための狭小住宅への高額な費用が親の重い負担になったりと社会問題化したことも理由にはあるそうです。

ともかく、社会が発展して教育が充実することはいいことですが、それが過剰になると受験戦争が発生します。中国での受験と言えば科挙から続く1000年以上の伝統でもありますが、受験や教育界、あるいはエリート大学からの出世パターンという根本原因を是正せずに、目につきやすいところ・改革しやすいところにまず手を付けるというのは、中国に限らず日本でも経験したことです。

エスカレートする受験戦争や詰め込み教育に対して、当時の文部省がゆとり教育を導入しましたが、その後は誰もが知るとおり失敗に終わり、数年前に再度、公教育の大変更が行われました。ゆとり教育導入はあくまで公教育においてであって、私教育産業には政府の規制はかかりませんでしたので、ゆとり教育に物足りない受験生やその保護者は私教育に一層傾斜することになりました。

そもそもゆとり教育導入時には子ども人口は減少に向かっていたので、いずれは受験の激しさが止むのは目に見えていたはずですが、受験戦争の緩和のためという側面もあった大学の新設は、今になってみると大幅な私立大学の定員割れを招いてしまう結果となりました。

さて、今回の中国政府の私教育産業崩壊は、どのような結末に至るでしょうか?

とりあえず、企業レベルでの塾・家庭教師派遣・オンライン授業などは消滅しますので、指導講師が個人レベルで行う私教育ばかりになるでしょう。優秀な先生を雇える幸運な、あるいはコネや伝手がある一部の家庭以外は、子どもの教育に頭を抱えることになります。

共産党幹部などの上流階級向けに闇の塾などは出来るかも知れませんが、多くの一般人、中産階級では摘発の危険を冒してまで塾を使うか、あるいは多額の費用がかかるくらいなら、いっそのこと国外に留学させるか。共産党幹部の子弟は北米や欧州などに留学していますが、もっと多くの将来有望だが満足に私教育を受けられない、トップ大学に進めない若者も国外流出していくシナリオもあり得るでしょう。

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