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米国でのWork Sharing Programとは

この数週間ほどで多くの州でも経済活動が再開されている。Paycheck Protection Program(PPP)の入金がされている企業も増加しており、それに伴いオフィスを再開をしている企業も増えてきているのではないだろうか。

2020年6月5日に施行されたPPP Flexibility Actによって、PPPローンの返済免除となるために必要な借入ローン総額において占めるべき給与比率が緩和されてはいるものの(ローン総額の75%から60%に引き下げ)、PPPの大きな目的の一つは米国内での雇用を守るということである。

アメリカ合衆国労働統計局は発表した失業率データにエラーがあったことを認めたものの、4月から5月にかけて実際に失業率は改善されており、新規の失業保険申請数、継続的に失業保険を受給している人の数も減少傾向にある。

しかしこの3か月ほどで米国の経済状況が一変したことは周知の通りであり、数か月前まで、過去50数年間で雇用状況が最も安定していた時期であったことは今からは想像することが難しい。

レイオフを行わずに、雇用を維持する方法

このような状況の中で、雇用を維持するために企業が取り組むことが可能なプログラムの一つにWork Sharing Program(ワーク・シェアリング・プログラム)がある。

このプログラムは、現在雇用をしている従業員の就労時間数を減らし、職務を共有することにより人員をレイオフを行わないようにするというものであり、目的はPPPと同様である(ただし、Work Sharing ProgramはCARES Act以前から存在する)。

ワーク・シェアリングをプログラムとして提供している州

州によっては、ワーク・シェアリングにより労働時間が減少し、給与の一部を失った従業員に対して、失業保険により賃金補てんを行う制度を導入している。現在Washington DCおよび以下26州にて同様の取り組みが行われている:

アリゾナ、アーカンソー、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、フロリダ、アイオワ、カンザス、メイン、メリーランド、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ミズーリ、ネブラスカ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、オハイオ、オレゴン、ペンシルバニア、ロードアイランド、テキサス、バーモント、ワシントン、ウィスコンシン

ワーク・シェアリングにより失業保険の対象となった場合、失業保険による給付に加えCARES ActのPandemic Unemployment Insuranceによる週600ドルの給付が追加される可能性もある(現時点では2020年7月31日まで有効)。

プログラムへの申請前に検討するべき事

ただしワーク・シェアリング・プログラムはレイオフの回避を目的としているため、企業のワーク・シェアリング・プランがプログラムの目的に合致したものかどうか、給付を行う州政府機関による審査がある。企業は、どの位の就労時間数を減らすのか、どの従業員が対象なのか等を決定した上でプログラムへの申請を行う必要がある。

具体的には、申請時に、プログラムにて認められる就労時間数の減少幅(10%-60%減)、業務の必要性に基づいて調整した就労時間であること(例:営業部は20%減、生産部は30%減)、ワーク・シェアリング・プログラム加入によって避けられるレイオフ人数等を該当機関に報告することが必要となる。

また、企業が同プログラムを利用してワーク・シェアリングを実施する場合、原則として医療保険、リタイヤメントプランといったベネフィットは継続する必要があることも留意すべきでである。

ワーク・シェアリング・プログラムについては各州により申請条件が異なるため各州個別の条件を事前に調査すべきである。

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