【声劇台本】優しい紅茶と苦いカフェラテ

配役:女性2
【羽兎(うと)】Mの場合:モノローグ
【寧々子(ねねこ)】

本文―――――――

羽兎M「今日はこの放課後の時間から私と遊ぶはずなんだけど……。」
寧々子「あ!犬飼くんもそこのカフェ好きなの?私は紅茶ラテ好きなんだよね。えー!そうなの!?じゃあ、次それ飲もうかなあ?教えてくれてありがとう!」
羽兎M「寧々子はこの通り、学校の人たちに会ってからというもの私そっちのけなわけだが。」
寧々子「えへへ、そうかなあ?え~!?そんなことないよ~!うん、うん。」
羽兎 「寧々子……。」
寧々子「……あ、羽兎待ってるからこの辺で~。またね~。」
羽兎 「だから言ったじゃん。この辺は同校の奴ら多いんだから、もうちょっと違うところ行こうって。ちょっと目を離すだけで話しかけられてるし……。」
寧々子「ごめんね~。でもいいじゃん。」
羽兎 「よくないの。私は静かに紅茶でも飲んでたいわけ。」
寧々子「紅茶はだいたいどこにでもあるでしょー?私はそこのカフェラテが飲みたいの。さ、行くよ!」
羽兎 「あれ?紅茶ラテって言ってなかった?」
寧々子「いいのいいの~!ほら早く行こう!すぐそこだよ!」
羽兎M「寧々子に背中を押され、私は半ば強引に、カフェ【ワンダーパーティー】に入る。」
寧々子「カフェラテください!」
羽兎M「本当に頼むんだ……。」
羽兎 「スタンダードの紅茶、ストレートでください。」
寧々子「そうなんですよ~!ちょっと今日は冒険したくて!」
羽兎M「たまに来るカフェ、とはいえ店員さんのお姉さんには顔も覚えられていて、メニューも覚えられている。店員さんにもドリンクが違うことに不思議がられていて、外行きの顔で談笑している寧々子。」
羽兎 「カフェイン多いの苦手じゃないの?」
寧々子「ここのはカフェイン少ないらしいよ!……ね?ほら!」
羽兎 「……。」
寧々子「それにー!紅茶にもカフェインは入ってるって言うし、どうってことないよ!」
羽兎 「そうじゃなくて。」
寧々子「はあ……。とりあえず、メニューはそれで!鳥居さん!いつもありがとうね!」
羽兎 「……鳥居さんっていうんだ。」
寧々子「顔覚えてくれてるのに鳥居さんの名前覚えてないんだ。」
羽兎 「凄いね。」
寧々子「なんか……今日の羽兎、変だよ。」
羽兎 「……。」
寧々子「私より早く登校してるし、いつもは興味ないのに一緒にちょっとした手洗いにまで来てくれたり。嬉しいよ?嬉しいけど、なんか変。一周回って怖いよ……。」
羽兎M「……違う。違うんだよ。」
羽兎 「…かしい…は……。」
寧々子「?」
羽兎 「可笑しいのはどっちなの!?寧々子だよ……。」
寧々子「……え?」
羽兎 「最近犬飼くんにべったりじゃん。いつもなら他の子にも愛想よくしてるのに、いきなりどうしたの!?いや、他の子にも時間はまだ割いてるっぽいけど……、おかげで私との時間がないじゃんか……。」
寧々子「そんなことないよ!」
羽兎 「どうせ、烏丸くんとかにそそのかされたんでしょ?お似合いだねって!」
寧々子「そそのかすって……烏丸くんに失礼な!」
羽兎 「どっちが失礼なの!?犬飼くんにべったりした結果、私との時間を割いて、それが失礼じゃないとでも!?」
寧々子「……~~!!放置した私が悪いって言いたいんなら、早くそういえばよかったんじゃん!」
羽兎 「放置って……。」
羽兎M「違う。そうじゃなくて……。私は何してんだ。喧嘩したかったわけじゃないんだ。ただ……。」
羽兎 「さ、寂しいんだよ……。」
寧々子「!?」
羽兎 「恥ずかしいから言いたくなかったんだけど、寂しくて寂しくて、死んじゃいそうなんだよ……。だから、寧々子との時間作るためなら、早起きして登校するし、少しでも離れたくないし……。」
羽兎M「そうだ。そうだよ。やっぱり私……。」
羽兎 「なんで、私より犬飼くんなの……?」
寧々子「なんでって……。」
羽兎 「小学校からの付き合いの私らだよ?高校で出会ったばっかの、どこの馬の骨ともわからない奴に寧々子をそう易々と渡せます?小学校から手塩にかけて、大事に、大事にしてきた私にはそれを決める判断くらいしてもいいと思うの。そいつが寧々子に見合う男かどうかくらい。」
寧々子「いや、でも、犬飼くんは優しいし……。」
羽兎 「まあ、あの愛想の良さは認めるよ。じゃあ、烏丸くんは?」
寧々子「烏丸くんは……。」
羽兎 「お似合いだねとか言われた意味がわからないけど、烏丸くんの素行を見るに裏がありそうだし、何より烏丸くんと犬飼くんが一緒に友達として居れる理由は何?」
寧々子「それは友達だから……?」
羽兎 「もし友達なら素行を止めるし、犬飼くんの性格なら確実に止める。じゃあ、友達として付き合いきれる理由は一つ。自分もそうだから、じゃない?」
寧々子「え……?」
羽兎 「寧々子、騙されちゃダメ。」
寧々子「うん……。」
羽兎M「これでいい。これでいいんだ。寧々子が私の知らないどこかに行くよりは十分マシだ。」
寧々子「ありがとう……。なんだ、そっか。そうだったんだ。騙されてたんだ……。そんな気はしてたんだ。だって烏丸くんにお似合いだねって言われてから犬飼くんのこと気にし始めたけど、その前は名前と顔くらいしか印象なくて、犬飼くんと会う時間が思った以上に増えて、なんでかわからないけど、羽兎との時間を削ってて、」
羽兎 「うん。うん。」
寧々子「そっか。そうだよね。なんかわかんないけど、騙されてたのか……よく考えつくなあ……あはは。」
羽兎 「寧々子……。」
羽兎M「私は手を伸ばして寧々子の頭を撫でる。強くは触れられない。すぐ壊れてしまいそうでガラスのような……。寧々子は私の親友で、私の大好きな……いや、一生誰にもわからない。どんな言葉でも伝えきれない。それぐらい大切な……、私は色々な想いを込めて優しく撫でる。……この感情は墓場まで持っていくんだ。」
寧々子「羽兎……ありがとう。ごめんね。大好きだよ。」
羽兎 「うん。私も……大好きだよ。」
羽兎M「寧々子を悲しませる奴も、寧々子の無垢な感情を利用しようという奴らも、絶対に許すものか。」
寧々子「……羽兎、カフェラテ飲みづらい。」
羽兎 「ほら言った。」

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