夏は嫌いだ。
今はまだ穏やかな暖かさ。年々の猛暑に比べれば日差しもそこまで強くはない。言わば立夏。そろそろ夏にかけて暖まっていくような、なんてことない5月のこの時期は、俺にとって大事な季節。
おかげでわざわざ調べることも知ることなかったこの言葉を強く心に染み込ませたのは、積み上げられた石の前、額縁の中の紙切れで笑っている彼女の誕生日だからか。
貴方は、俺が買った明るい黄色のワンピースを受け取ると、嫌そうにも恥ずかしがりながら着てくれた。色の詳しい貴方は「緑系の黄色は似合わないんだ」と苦言していたね。
それでも気に入って着てくれた、この額縁の中の貴方と俺の思い出の貴方はその色で染まっている。
嫌だな……このまま夏に向かっていくと、貴方への無力感に苛まれるのか。俺はまた、彼女の喪失感をあの暑さと共に思い出すことだろう。
俺だけは、この幸せだった季節で止まっていたい。そんなことができるなら、貴方に会いたい。
俺の心は穏やかな温もりとその色に囚われたまま。
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