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前奏の前

 村の子供たちの元気な声がする。あまりの子供たちの勢揃いで、何事かと私も外を出る。
「先生~!こんにちは~!」
「皆、走って危ないよ。怪我でもしたらどうするんだ?」
「急いでるんだもん!」
 遠くには、親御さんたちがゆっくり我が子らを追いかける姿が確認できた。
「はやく行こうよ~。間に合うかわからないよ~?」
「何かあったのかい?」
「先生も行こうよ!今日、旅の音楽隊が来ているんだよ!」
 ――旅の音楽隊……?
 詳しく聞くと、「旅の音楽隊」が村で泊めてもらった代わりに音楽会をするとか。
「私もお邪魔しようかな。」
 音楽なんて求めていなかったが、私も子供たちに合わせ、会場となる広場へ行く。
 もう既に人だかりができている。聞くに、今にも始まる様子だが、本番はまだだそうだ。
 今は本番前の練習風景。音が上手く出るかなどを確かめているらしい。
 
 川の水を撫でるような爽やかな弦の音、時折入る軽快なリズム――。
 その少しの音だけで、これから始まる音楽がどれ程のものなのかを察し、息を呑んだ。

 気付けば私は、彼らの音楽に夢中になっていた。

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