Twitterで集まった質問を社内の新卒女性データサイエンティスト陣に聞いてみた
はじめまして、株式会社ブレインパッドでデータサイエンティストをしている馬場と申します。2018年に新卒で入社し、2022年の4月で入社5年目となりました。
弊社は過去最大規模のオフィス移転が済んで3ヶ月ほど経ちました! 何度か新しいオフィスに出向いて仕事をしましたが、本当に仕事がしやすくて気に入っております。
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背景
さて今回の記事は、タイトルの通り、Twitterで集まった質問をブレインパッド社内のデータサイエンティストにぶつけて、リアルな声を集めよう!という趣旨の内容です。
実は昨年末に、ブレインパッドのデータサイエンティスト有志が運営するTwitterアカウントで以下のような企画を行っておりました。弊社での業務やデータサイエンティストという職種に興味がある方が理解を深めていただけるような記事を出すべく、データサイエンティストに関する質問を募ったのですが、本記事はその回答編となっております。質問をお寄せくださった方、誠にありがとうございます! そして長らくお待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
企画の趣旨を説明させていただきますと、「学生・社会人問わず、ブレインパッドのデータサイエンティストに興味のある方からの質問を募集します」というものでした。特徴的なのは、その質問に回答するのが新卒入社でブレインパッドに入った女性データサイエンティストというところです。
データサイエンティストという職業は、知名度が比較的上がってきたとはいえ、まだまだ人数が多いとは言えません。新卒入社した女性のデータサイエンティストとなるとその数は激減します。もしかしたら、「職業として興味があっても、実態がわからない。自分と近い背景の人間が働いているイメージが湧かないので実例を知りたい」という方がいるかもしれないという思いから、今回はこのような企画を有志で立ち上げました。かくいう私自身も入社前は女性データサイエンティストの働き方のイメージが全くついていなかったため、その意味で「就活時の自分が見たら嬉しい内容かもなあ」というものになりました。このような背景から、特に参考にすべきロールモデルの少ない女性の学生の方がキャリアを考える上でご参考になればと思い、回答者の女性社員に関しては簡易的なプロフィールをまとめております(後述)。
※ なお、女性データサイエンティストのロールモデルについては、ブレインパッドの有志によるポッドキャスト番組(下記リンク)にてお話ししておりますので、ご興味ある方はお聴きいただければ幸いです。
このようなモチベーションから始めた企画ですが、なんと想像を遥かに超える30ものご質問を頂くことができました。重ね重ね、お礼を申し上げます。
頂いたご質問の内容は多岐にわたり、ブレインパッドのデータサイエンティストの業務に関するご質問から女性の働き方に関するものまで、本当に様々な角度からいただきました。
今回、メインとなる社内の新卒入社女性データサイエンティスト6名に加え、一部の質問については有志の男性社員からも回答をもらいました(回答編では「その他社員」、と記載しております)。全員、「ブレインパッドに興味がある方の役に立てれば」ということで積極的に協力してくれました!
※ 以降、データサイエンティストを「DS」と記載している部分がございます。
回答編に進む前に
いただいたご質問は、おおざっぱに分けると以下の4つにまとめられるように思います。
DSの仕事や評価において、機械学習やプログラミングスキル以外にも必要な要素はあるのか
特に専門分野が異なる場合、入社してからスキルのキャッチアップはどの程度必要か
学生時代の専門性はどの程度活かせるか
女性だから大変なこととは
この中でとくに1~3のようなご質問への回答を読んでいただく際に、共通の背景として弊社のDSの業務の種類の実態をご承知おきいただくと理解がしやすいかと思います。
我々は受託分析の企業であり、プロジェクト単位でお仕事をしております。実際、私や今回の回答者も含め弊社のDSのほとんどがクライアントワーク(お客様から依頼をいただく形式の仕事)に携わっています。
例えば「今月まではA社のマーケティング系の分析案件をデータを揃えるフェーズから担当し、次月からは半年間B社の数理最適化系の案件の担当予定になっている」といったイメージです。
年次が上がってくると、それまでの経験に基づいて「〇〇さんはこの業界やこの技術」というイメージが醸成されることもありますが、それでも基本的にはどのような案件の担当にもなる可能性があります。
ですから、必要とされる技術領域もピンからキリまでですし、扱うデータの種類、ひいてはデータの状態についても多種多様です。
このような背景があるため、「この技術を持っていれば活躍できる」という確固としたものは存在しないと同時に、逆に「必要になればどんな技術も習得できる」ことが求められます。常に状況に合わせて自分のスキルや知識をアップデートし、求められている役割をこなしていく必要があります。
平たく述べると、分析技術にとどまらずデータに関することすべてにおいて臨機応変・柔軟に状況に対応せねばならない職種だというイメージをもって頂ければと思います。
それでは、さっそく各質問に対して集まった回答と所感をご紹介していきます。ご質問はグルーピングおよび簡略化させていただいておりますが、何卒ご容赦ください。
また、あくまで「ブレインパッドにおいてクライアントワークに携わるDSの場合」のご回答となりますので、他社様のDSの場合は当てはまらない可能性が大いにありますこと、ご承知おきください。
回答編
1.若い女性だということで贔屓されませんか?
少なくとも弊社では、若い女性なので贔屓されたということはございません。性別よりも、その人の持っている技術(ソフト・ハード両方)や人柄で人を見る方が多いように感じています。
2.文系出身だと、高い技術を持つ理系の男性社員の中では苦労しますか?
一言でいえば「本人次第」というご回答になるかと思います。
私自身も畑違いの分野(天文学)から来たので、入社前や入社直後の不安は小さくはありませんでした。ただ、先輩・同僚でも情報系以外の出身者は多く在籍しており、出身に関係なく活躍されています。もちろん個人の努力は必要ですが、そこができれば案件で活躍できるような態勢は整っている会社だと思います。
また、すでに高いスキルを持っている同僚に囲まれるのは環境としては恵まれています。幸い、優しい人柄の社員が多いですので、学んでいて分からない部分を彼らに質問をしたり、知見を共有しあったりと切磋琢磨できる環境です。
どんな会社でも同じだと思いますが、一生懸命やっていれば手を差し伸べてくれる人が多い印象ですね。
3.若い女性だからということで舐められたり、働き辛かったりしませんか?
知識力や技術力を武器にしてる業界では、年齢が若い人に対して知識力や技術力に不安を覚えるのはある意味で自然かもしれません。そこに男女は関係ないと思いますが、いずれにしても丁寧に仕事をして少しずつ信頼していただけるようになることが重要そうです。
4.仕事のために学生時代に学んでおけばよかったと思うこと、経験しておけばよかったと思うことは?
インターンの経験があってよかったと答えている社員、特になかったと答えている社員など回答を見てみると様々なようです。個々人がどのようなスキルを重視しているかにも依るかもしれません。
総括すると、「やっておいてよかった」「経験できたらよかったかも」と思うことは多いですが、「やってなかったので大きく後悔している」ことはなさそうですね。どのような経験でも比較的今の仕事に活かしているのかもしれません。
5.クライアントワークで活躍する上で、学生時代の専攻や最終学歴の重要度についてどう思いますか?
学歴や専攻による制限はございませんし、様々なバックグラウンドを持つ社員がいます。専門がデータサイエンスでないと貢献できないというわけではありませんが、データサイエンス系のスキルは間違いなく必要になるので、シンプルに「やっておけば役に立つ」分野です。
6.顧客対応やプロジェクト管理をせず、データ分析だけを行うことは可能ですか?
一言でいえば難しそうです。まずクライアントワークであること、また組織の一員である時点で、そういった仕事は必要になると考えてよいと思います。
7.研究で長く使っているstataのスキルを活かせたり、パネルデータの分析を行ったりする機会はありますか? / 単眼深度推定の研究をしてるのですが活かすことはできますか?
いずれも、入社後全く同じ技術を使うかと問われると、残念ながら現段階では「No」というのがご回答になりそうです。他の質問へのご回答と若干似ているかもしれませんが、学生時代のスキルがそっくりそのまま活きることは少なくても、何らかの形で活きてくることに疑いの余地はありません。
8.男女問わず、高専出身のDSの人数は?
高専から大学・大学院を経て入社という社員が多いですが、高専卒業後にすぐ入社という社員もおりました。
9.「仕事ができる」という基準について、単に機械学習や深層学習の高い技術を持っているだけでは高く評価されず、顧客対応なども重要なのでしょうか?
あくまで「ブレインパッドのDSだと」という前提ですが、DSとして高く評価されるにはソフトスキルも同程度重要です。むしろ習得の方法が明確でない分、このようなスキルを有する人材は貴重といえるかもしれませんね。
10.御社のDSは案件で画像、音声、動画などの非構造化データを分析する機会は多いですか?
DSの場合は機会はかなり少ないと考えていただいてよさそうです。
11.ブレインパッドのDSは特定分野のデータ活用に強いスペシャリストですか、それともデータ活用なら何でもやるジェネラリストのイメージの方が近いですか?
「案件による」というのがご回答になりそうですが、少なくとも一つの技術だけに特化してずっと活躍するという例はあまり多くはないかもしれません。
12.自社ではなくお客さま先のオフィスに常駐して働く案件は平均して全体の何割くらいありますか?
リモートワーク状況下の現在、基本的にはいずれの形態でも在宅勤務の社員が多いと思います。しかし情勢が落ち着けば、物理的な常駐スタイルに戻るお客様先も多少増えてくるかもしれません。かく言う私自身、これまですべて基本的には常駐の案件にアサインされており、自社オフィスで案件業務を行ったことがほとんどありません。常駐というスタイルについては、記事の最後にご紹介する「白金鉱業.FM」の常駐回がご参考になるかと思います!
13.DSの新卒採用では女性の採用を一定数確保するための女性枠のようなものはありますか?
ございません!
14.DSとして働いていても仕事を通じてシステム開発などのエンジニア寄りの業務経験を積むこともできますか?
本人の希望によっては可能で、実例もございます。
15.実際の日々の業務はデータの分析・解析よりもSQLによるデータの抽出・加工・集計などに多くの時間を使うイメージで合っていますか?
「案件やその環境などの状況による」というのがご回答になりそうです。ちなみにデータが揃う前の段階でのお仕事も多いですし、ブレインパッドにそのような役割を期待してくださるクライアント企業様もいらっしゃいます。
16.学生時代に機械学習や深層学習、人工知能系の経験が浅い/ない人は、入社後どのくらいの期間で高度な機械学習のデータ分析や実務で通用するプログラミングができるようになりますか。
またどのくらいの期間でそうした未経験の人が経験豊富な同期や同僚に技術的なスキルの面で追いつけるようになりますか。
習得する・追いつくという観点と、それが業務でどこまで必要とされるかはまた別の問題になってきそうです。また、モデリング自体よりもビジネスにおける分析の設計に修行が必要だったりもします。
17.様々な業種の顧客企業に寄り添ったデータ活用支援をするためには、DSにとってもビジネスや企業経営全般に関する専門知識(営業,マーケティングのみならず経営分析に必要な会計,財務などビジネススクールで学べるような知識)は必要だと感じますか?
例として挙げていただいた知識がないと仕事ができないということはありませんが、どのような知識でも持っていると強みにはなるというのが共通認識ですね。
18.入社後に社会人として現実のビジネスに携わってみて気付いた、DSの仕事の大変さやギャップについて教えてください
様々なバックグラウンドの社員がいるので、十人十色の回答がありあそうです。この話題だけでも記事が一本書けるくらいかもしれませんね……。
19.もし技術スキル不足で仕事についていけなくなったり案件への貢献度が低いと評価されたりすると、ビジネス職などに配置転換されることはありますか?
技術スキルの不足については、まずは学んでいけばよいというスタンスです。また、DSからビジネスへの強制的な配置転換というのは二つの意味で起こり得ません。求められるスキルが異なるという理由と、強制的な配置転換はないという理由になるかと思います。
20.貴社のDSには画像・音声処理の専門家はたくさんおられますか?
専門家=その種類の案件だけを担当する、という意味であれば「ほとんどいません」がご回答になりそうです。詳しい人、という意味でしたらそういう人はいますが、多くはなさそうですね。
21.一年以上の産休育休を取ってもキャリアは大丈夫なのでしょうか。専門知識をかなり忘れそうで、復帰後に仕事にすぐ貢献できないイメージがあります。
実際に育児休暇から復帰したての社員のリアルな声が届きました。DS女性社員の人数が少ないので貴重な声です!
22.新卒DSの人で入社後特に活躍している人には、どんな共通した特徴やバックグラウンドなどがあると感じますか?
まとめると「人を巻き込んで積極的にインプット・アウトプットを行う人」ということかと思います。
23.DS職であっても、大企業顧客向けに働くならコミュニケーション能力やリーダーシップ、ファシリテーションなどのソフトスキルも重要になってきますか
満場一致で、「クライアント企業の規模・職種に限らず重要」とのことでした。分かりやすいハードスキルと異なり習得方法が明確ではないものなので、身に着けるのも一筋縄ではいかないですね。
24.エンジニア系の仕事では、多くの人はプロジェクトマネージャーのような管理系の職種に移っていくとよく聞きます。
最新のAI分野の専門性については若い理系情報系の新卒の方が既に働いているDSよりも高い場合がよくあったりするので、やはりDSも経験を積むにつれて、データ処理・予測モデル構築→PMに役割が移っていく方が多いですか?
PMに役割が移ることは多いですが、もちろんPMでもゴリゴリ手を動かしてデータ処理・予測モデル構築、それ以外の分析各種を行う案件もございます。この質問に限らず、今回は「ブレインパッドのDS」に特化したご回答です。他社さんのDSや、弊社でも別の職種だと異なる可能性はございますのでご承知おきください!
25.仕事で出張の機会はどのくらいありますか?
こちらも「人による」がご回答になりそうですが、基本的にはほとんど出張はないと思っていただいてよさそうです。
おわりに
現場社員の声というだけあって、かなりリアルな回答が集まったのではないかと思っております。皆様の「データサイエンティスト像」を少しでもクリアにするお手伝いができていたら幸いです。
我々を取り巻く社会は目まぐるしく変わっていきますので、ブレインパッド自体も本質は変わらずとも時代の潮流に合わせながら日々姿を変えております。ここに記した回答はもしかすると2~3年後には変容しているかもしれませんので、あくまで現時点での内容という旨もお含みおきください。
さらにDSについて知っていただくために
最後に、ここに記載した以外で弊社のデータサイエンティストをより知っていただけるコンテンツ「白金鉱業.FM」をご紹介させてください。
文中でもご紹介しましたが、ブレインパッドのデータサイエンティスト社員が情報発信を行っているポッドキャスト番組です。その中でも個人的なおススメを何編かピックアップして、本記事を終えたいと思います。
本企画のオマージュ元です。ツイッターで募集した質問にライブ配信で答える企画が行われ、そちらを音声版に加工したものになります! 全編後編に分かれており、社員がかなり本音&本気でお答えしております。
今回、「DSの仕事や評価において、機械学習やプログラミングスキル以外にも必要な要素はあるのか」という趣旨のご質問をいくつか頂いておりますが、その答えにもなってくるのではないかという2編です。「分析案件のPMがどのような仕事なのか」という話題を通して、なぜ弊社のデータサイエンティストにとってプログラミングや機械学習以外のスキルが必要なのかがお分かりいただけるかと思います。個人的にも仕事をする上でたいへん参考にしている回です。
常駐について気になる方にはこちらをおススメいたします。収録時とは世間の情勢が異なりますので、とくに業務形態(勤務場所)については大きく異なることをご留意ください。
ブレインパッドが気になった!あるいは働いてみたい!という方がおられましたら、ぜひ下記リンクを覗いていただけますと幸いです。
改めまして、質問をお寄せいただいた方、ここまでお読みいただいた方、誠にありがとうございました!