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『意味論的転回』 第7章

研究室で輪読を行なっている『意味論的転回―デザインの新しい基礎理論』の第7章「デザインのための手法、研究、科学」について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 M1 テツ)

サマリ

第7章の大枠

意味論は以前無視されていた領域の探索を奨励し、新しい領域の探求に物品の意味、インターフェース、ユーザーモデル、関連するユーザーなどの新しい記述方法を提供する。デザイン意味論は新しいデザインの対話を提案し、科学者だけでなく、デザイナーにも新たな問いかけを促し、他の学問が未解決の新たな問いかけにも焦点を当てる(第8章で詳細に説明)。デザイン科学は実践の科学でありながら、デザイン科学の哲学でもあり、実践と理論の要素を総合したもの。

未来を作り方法

創造力の源は想像力に関連している。創造力は想像力から生まれるものであるが、社会的な関係や子供時代の教育などがその表現に影響を与え、これらの制約を乗り越えて創造力を奨励するには、安全で多様でオープンな環境を創造する必要がある。
 
ブレーンストーミングは創造的な思考を通じて新しいアイデアを生み出す方法です。最も理想的な成果は、プロセスを通じて多様な革新的なアイデアを得ることです。
再構築は、複雑な問題を理解するためのさまざまな手段を強調するもう一つの方法である。これらの方法はいずれも革新にスペースを提供し、思考の制約を克服することを目指している。
数学の分野である組み合わせ論の応用に焦点を当て、特にデザインとエンジニアリングの領域での活用について詳しく紹介してる。組み合わせ論がデザインにおいて異なる用途を持つことを強調し、物体の可能な組み合わせの強調、最適な解の検索、物体の組み合わせの特性の評価などに言及している。
自動車が複雑なシステムであり、複数のコンポーネントで構成されていることを指摘してる。創造的な問題解決のための異なる方法としてTRIZ(創造的問題解決のための理論)の5つのレベルを紹介し、既存のアイテムの改善から新しい構造の発明まで、異なる方法で問題に対処する重要性を強調しています。TRIZはまた、アイテムをより軽く、小さく、速く、効率的にする法則などを提案している。
 
組み合わせ論がエンジニアリング分野で特に有効なツールであると指摘し、これを使用して技術の発展を促進できると述べている。また、ユーザーの要求が既知の場合、組み合わせ、再構築、ブレインストーミングなどの方法がアイディアの発掘を支援するために使用できると締めくくった。

利害関係者の意図と概念を探る方法

ユーザーエクスペリエンスデザインにおいてよく使われる研究手法について説明され、これにはアンケート調査と構造的面接、非構造的面接、フォーカスグループ、観察法、口頭分析、人類学的研究、トライアングル定位法、参加型デザインなどが含まれている。これらの手法はそれぞれ利点と欠点があり、異なる階層やタイプのユーザーフィードバックを提供することができる。
 
これらの手法の選択は、研究目的、時間、リソース、具体的な状況に基づいてバランスを取るべきだ。複数の手法を総合的に使用し、ユーザーのニーズをより深く理解することが、ユーザーエクスペリエンスデザインの品質向上の鍵である。

人間中心デザイン方法

このセクションでは、3つの人間中心のデザインメソッドが紹介されています。それらのメソッドには次の3つの共通点がある:システム的なデザイン手法: デザインの機会を系統的に見つけ、最適な提案を選択し、理想的な未来を実現するためのもの。製品の意味に焦点を当てる: 製品の意味が使用の過程で表れ、ユーザーのニーズと密接に関連していることを強調している。デザインの実験テストと証明: デザイン提案を実験テストし、デザインの実現可能性を論じ、デモンストレーション、またはシミュレーションテストで証明することができる。
 
製品特徴の再設計: 特徴を再設計する手法は、既知または明確に分類できる製品に適用できる。(例:車、トラックの内部デザイン、時計、香水瓶、ブランドデザイン、政治家など)。
製品の作業情報を表示する: 製品がどのように動作するかを視覚的に表現し、ユーザーに理解しやすくする。
ストーリーやメタファーを活用したオリジナルな製品の設計: 物語や比喩を活用して、製品の設計に独創性をもたらします。
デザイン戦略の設計: 具体的なデザイン目標や方針を設定し、それに基づいて製品をデザインする。
対話のデザイン: ユーザーとの対話を重視し、製品の使いやすさと価値を向上させる。
 
主に二つの事例が紹介された。
オハイオ州立大学のトラック内装デザインプロジェクトについて紹介されている。このプロジェクトでは、学生たちが異なるデザインの方向に分かれ、ハイテク、機能的、未来志向などの異なるデザインコンセプトが示され、各グループは特定の製品特徴に焦点を当て、それらを具体的なコンポーネントに拡張した。デザインは第4ステップでテストされ、最終的にはそれぞれの方向に適した独自の特徴が表れた。
 
武蔵野美術大学のデザインワークショップでの経験に基づいている。ワークショップの課題は、「既存の製品とはまったく異なる新しい蛇口を設計し、使用時にユーザーが明確に理解できるものにする」というもの。このワークショップは革新的なデザイン手法を示しており、多様なシーン分析と漫画形式の使用により、学生たちは従来の水道とは全く異なるデザインを成功裏に作成し、テストを通じてその実現可能性とユーザーフレンドリー性を検証した。

意味内容要求の確認

デザイン科学とシソーラス検証の重要性を強調し、他の学問領域の検証方法との違いを示している。デザインにおいて、意味の内容と有効性の検証は、説明し、確認し、利害関係者の期待に合致させるために行われますが、それは数学的理論や確実性に重点を置くエンジニアリング検証とは異なる。
文章では指示の有効性、実験の有効性、説明の有効性、方法論の有効性、言語学的有効性を説明し、デザインの言語学的有効性は、利害関係者がそれを承諾し、支援し、促進し、実現し、または使用することによって示される。

ゼミでの議論

デザインプロセスの段階的なアプローチ

ゼミでは、二つの事例について議論した。両方のプロジェクトでは、デザインプロセスが段階的に進行し、異なるアイデアが探求され、評価され、最終的には実現可能性がテストされた。学生はそれぞれの段階で概念を拡張し、具体的な要素や機能に焦点を当てている。こうしたプログラムは、学生の創造性を引き出し、現実世界の課題に対する独自の解決策を見つける手助けになるという観点が出ました。

創造性と想像力の関係

本章では、創造力の源は想像力に関連しており、その表現は社会的な関係や教育などの要因によって影響を受ける。しかし、創造性を奨励するためには、安全で多様でオープンな環境を作ることが必要隣。これにより、個々の制約を乗り越えて、創造性を発揮する余地が生まれかどうかについて話を展開した。

感想

第7章は、デザインの様々な側面に焦点を当てており、デザインにおける意味論、創造性、ユーザーエクスペリエンス、人間中心のデザイン方法、意味内容の確認などについて深く掘り下げている。複数の章からなる文章構成は、デザイン科学の哲学や実践の側面について説明しており、デザインの幅広い分野やアプローチを網羅している。
自分が深く感じるのは、デザインの世界は単なるアートや美的要素だけでなく、科学や人間の行動や感覚に関する深い理解を必要とする複雑な領域であることだ。特に、異なるデザイン手法やデザインのアプローチについて具体的な事例を示し、それらがどのように現実のプロジェクトや課題に適用されるか、また、ユーザー中心のデザインや意味内容の確認など、デザインプロセスの中で重要な役割を果たす概念や手法を理解した。
まとめると、本章はデザインが多面的であることを示しつつ、それが実際の製品や体験にどのように適用されるかを探求している点が興味深い。

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