第3話 レンガ職人の告白
人材育成について、ちょっと立ち止まって考えていきます。
皆さんは、「レンガ職人の話」を聞いたことがありますか?
人材育成に関する寓話としてよく使われるものですね。
私も講演や研修等で何度か耳にしたことがあります。
語り手によって多少言葉やニュアンスは異なりますが、概ね以下のようなお話です。
道を歩いていると
レンガを積んでいる職人がいたので声をかけた。
「いま何をしているんだい?」
第一のレンガ職人は、
「見ればわかるだろ、レンガを積んでいるところさ。」と言った。
第二のレンガ職人は、
「聖堂の門を組んでいるところさ。」と言った。
第三のレンガ職人は、
「歴史に残る大聖堂を建てているところです。」と言った。
1年後、
第一の職人は相変わらずレンガを積んでいて、
第二の職人はもっと賃金の高い仕事に移った。
第三の職人は親方の助手に取り立てられた。
この寓話の言わんとしているところは、
目的を考えて仕事をしよう。
夢やビジョンを持って仕事をしよう。
向上心を持って取り組もう。
という感じかと思います。
この話、人によっては解釈が異なっていたり、後日談があったりと、色々考察されているようです。
私もこの話を何年も咀嚼(そしゃく)して考えているうちに気づくところがあり、私なりの後日談を作ってみました。
第三のレンガ職人の告白
今日も「いま何をしているんだい?」と聞かれた。
なぜ、道を歩いている連中は、質問ばかりするんだろう。
〇〇(第一の職人)と△△(第二の職人)は答えるのが面倒だから
「レンガ積んでるに決まってんだろ!」
「門を作ってるのが見えねえのかい?」
と投げやりに答えている。
自分はひとひねりするのが好きだから
「これは大聖堂になるんでさぁ。」と言うと
聞いた連中は「へぇ、ナルホド。」
なんて感心した顔をしやがる・・・。
最初はそれが “こそばゆかった” ので、
面白がって言っていた。
「これは大聖堂になるんでさぁ!!!」
しかし、何度も何度も聞かれると、
さすがに疲れてくる・・・
大体、レンガ積んでいるときに、
大聖堂のことを思い浮かべているなんて、
本気で思っているんかい!
重いレンガを積んでいる時に、
そんなフワフワしてたら、ケガするだろうが!
レンガを積むときはレンガに集中するもんだ!
だからもう、これからはこう答えるぜ、面倒くせえ。
「いま何をしているんだい?」
「私はレンガ職人ですから、レンガを積んでるんです。」
ちょっと言葉づかいが乱れましたが、内容はいたって真面目です。
そもそも、モノづくりの現場で一番大切なのは「安全」です。
歴史を振り返ると、工場では多くの人が事故やケガに見舞われ、病気にもなってきましたし、今でもそれらは起きています。
モノを作るときはそのことに集中する、注意して行うのが安全の基本です。
自分たちがめざしていること=大聖堂を作っているんだ!
というようなことは、仕事が終わって
お風呂に入ってゆったりしているときに、
仲間と楽しく会話しているときに、
将来について語り合う時間を取ったときに、
想像したり、存分に語り合い
作業中には目の前のことに集中するのがベターと思うのです。
皆さんの中にも、ひょっとしたら自らレンガ職人の話をされていたり、これまで共感を持って聞いてきた方もいらっしゃることでしょう。
そうした方には「ひねた物言い」が不快かも知れませんが(申し訳ありません)、考えるヒントとして受け止めていただけるとありがたく思います。
皆さんはレンガ職人の話から、何を感じるでしょうか?
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