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第1話 名医の初オペ

 “ちょっとだけ立ち止まって”人材育成を考えていきます。

人材育成はどの企業にとっても大事な課題です。社員一人ひとりにとっても自己成長は大切なテーマです。人生は自身の成長物語とも言えますね。

一方で、企業が厳しい競争に打ち勝っていくためには生産性の向上が欠かせません。

生産性はインプット分のアウトプットですから、アウトプットが一定ならインプットを減らせば生産性は上がります。人員数、人件費はインプットですから、それらを削減すれば生産性が上がる、と考えがちです。

人材育成では「経験」が不可欠です。実際に仕事をやってみない限り、習得できないのは当然です。しかし、厳しい経営の中では、人材育成が後回しになることが多いと感じます。

その典型的な現象の一つが
「できる人材に大事な仕事が集中する」
です。

できる人に任せておけば結果もいいですし、生産性も上がり、本人がやりがいを感じることもあり、いいことづくめに見えます。しかし、ちょっと先を見通すと、人が育ちにくい危険な会社・職場と言えるかも知れません。

こうした問題はどう考えていけばいいのでしょうか?
そのヒントとして「名医の初オペ」というお話があります。

日本、いや世界でも有数の最高の外科医がいます。
患者は誰もがこの外科医に執刀して欲しいと思っています。
難しい手術であればあるほど、その気持ちは強くなります。
その気持ちは当然です。

しかし、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。


その名医にも、最初の手術があったのです。

その時の患者の気持ちになってみましょう。
どんな手術なのか、簡単な手術か、難しい手術か、は別として
経験のない先生に、その患者は身を委ねたのです。
患者がいたから名医が誕生したわけです。

名医とは、才能・努力はもちろんとして、経験の積み重ねがなければ誕生しません。これは企業でもまったく同じではないでしょうか。

では、実際どのように取り組んでいけばいいのでしょうか?

経験の浅い外科医に何を担当してもらうか=まずその判断はあるでしょう。
そして手術はチームで行われます。


執刀医が初めてでも、ベテランほかチームで正確な手術を支えます。
手術前の準備・研究、手術後の検証も大事です。
こうした仕組みが名医を生み出している仕掛けと言えます。

企業でも考え方は同じと思います。

経験の浅い社員に大事な仕事を任せるとミスが出て顧客に迷惑がかかる、
だから任せられないんだよ。

それはそうだと思います。
しかし、それで思考停止しては、人材育成はできない。

部分的でも何かを任せ、誰かがフォローし、結果を振り返って学ぶ。
ちょっとずつでも積み重ねていくことが
実力社員を作っていくことにつながります。

人材育成を真剣に考えるなら、
命に係わる現場でどのようにプロフェッショナルが育っていくのか
を意識するのが有益と感じます。
命に係わるからこそ難しいし、真剣に考える必要があるからです。

「名医の初オペ」は
人材育成が後回しになってしまう時に、ぜひ思い出して欲しいお話です。

以上です。
皆さんはどう感じたでしょうか?

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