昔書いたショートショートSF 1/2

大学を卒業して何年になるか。男はふと思った。
自室からはほとんど出ず、暗い部屋に何年も住んでいる。彼は両親と古びた団地に暮らす、いわゆる引きこもりだ。
大学時代、就職をそこまで難しく考えていなかった。どこかの会社が自分を採用してくれると、そんな気がしていた。だが、いざ就職活動をしてみれば、彼と合う企業が全くなかった。もっと多く、幅広いの企業を見ていけば良かったのかもしれない。昨今では機械に仕事を取られ、就職できない人が増えてきているが、彼のときはまだ就職することはまだ難しい時代ではなかった。そのままぼーっとしているうちに大学を卒業し、バイト漬けの毎日をしていた。両親は世間体を気にしてまともな職についてほしいと言い、団地の人に会うたびに噂されるようになり、気がつけば家に引きこもるようになった。
彼は今、自身で何かをする分のお金は、アフィリエイトブログでちょっとずつ稼いでいる。だが、もう昔のように閲覧数は伸びず、稼ぎも微々たるものになっていた。
このままではいけないとは思っていた。彼の家は、ロボットが搭載されているレベルの団地ではない。どちらかというと貧乏だ。
ロボット産業が活性化した数十年前、国同士の戦争はほとんどロボットで戦わせた。しかし、命がかかっていない戦争はもはや戦争ではなく、どこかスポーツ大会のようになってしまっていて、このままだとただお金だけが無駄になると危惧し、次々と停戦状態になった。命のない、感情のないロボットが世界を救ったことが取り糺され、感情を持たないロボットが売れ、そこからロボットは一気に家庭にも流れ込んだ。そんなメジャーな物すらない家に住んでいるので、両親もいつまで彼を養えるのかわからない。だから家でできる仕事を常に探してはいた。だが、プログラミングができない彼はもう社会の仲間入りは無理なようだった。何かまとまったお金は手に入らないものか。毎日ネットを眺めている日々だった。

ある日、親戚が亡くなって両親が2人とも家にいない日があった。彼とはあまり面識がない上、両親もこんなことになっている彼を連れて行きたくなかったのだろうか。とりあえず今日は両親がいない。彼は久しぶりにリビングへ出てきた。
外は晴れていて、目がチカチカした。窓から外をちらっと見る。目の前にあった団地なくなり、更地になっていた。
「工事の音はこれだったか」
リビングに出てきてもやることは自室と同じネットサーフィン。ただし、今日はいい収穫があった。

『あなたの夢を売りませんか?』

「え、なんだこれ。夢を売る?つまり寝るだけでお金が手に入るのか??」
彼は、思わずそのページを開いた。

『あなたの夢を見せてください。夢の質によっては高額で買います。』

夢を売るだけでそこまでのお金がもらえるのは、かなりの稼ぎである。

『専用の機械をご自宅にお届けします。データは自動的に転送されるようになっていますので、とても簡単です。』

なかなか怪しいが、送る時にお金を払う必要はないし、辞めたければ辞めても良いとも書いてあったので、彼は気軽な気持ちで必要事項を入力し、応募した。