500字小説 第43話

ステージが暗転している中、バンドの準備が行われている。
恭介はここで初めて右往左往Pの中の人を見た。とはいえ、暗くて背丈しか確認出来なかったが、身長は恭介よりも高めであった。
ボーカルの子は準備の段階には出てこなかったが、ベースの人は自分と同じくらいだが、ロン毛・・・恭介の横にいる客の女性よりも髪が長かった。
一応弾いてみた界隈では有名な人らしいが、恭介はその界隈のことが詳しくないので、「うわ、髪ながっ」とボソッと呟いてしまった。
準備が終わると突然暗転し、何も見えなくなった。そして、右往左往Pが奏でる静かなピアノから始まり、次に明転した時には、マイクの前にボーカルの女の子が立っていた。
その奇抜な装いに、恭介は目が丸くなってしまった。ピチピチの短いチャイナ服、髪の色は紫でお団子にまとめていて、『どぎつっ!』と思ってしまった。だが、歌は先程のバンドと比べられないくらい聞いていられる歌声だった。特に高音が綺麗で、その声が右往左往Pが作ったであろう音楽に合っていた。ベースのことは恭介にはよくわからなかったのだが、ベースのソロで盛り上がっていたのできっと上手なのだろう。
そして何より、右往左往Pである。