ResEditで何をしていたのか
ResEditとは古のMacintoshのシステムを弄るツールである。「システムを弄る」なんて書くと、物凄い特殊なことをしているみたいだ。例えば、映画のようなハッカーが巨大な企業とかのシステムに侵入するとか、通常では使えないような機能を発掘するとか、果てはコンピュータ・ウイルスを作り出すとか……。いやいや、そんな犯罪のような使い方じゃない。自分はただ単に『Dvorak配列』を使いたかっただけなのだ。
キーボードのリソースを作成し、Dvorak配列をベースに少し自分用にカスタマイズして、システムに入れる。そうすることで、Dvorak配列が使えるようになった。
……という説明の前に。そもそも「Dvorak配列って何?」という声が聞こえてきそうだ。
Dvorak配列とは、キーボードの配列の一種のこと。
世間的には99.999...%「QWERTY配列」のキーボードが使用されている。お手元のコンピュータの、アルファベットの一番上の段のキーを左から順に見ていけば「QWERTY」と書かれているのが分かるだろう。それが、デファクト・スタンダードの配列。むしろ、これ以外の配列のコンピュータを買う方が難しい。でも、この「QWERTY配列」、不便じゃない? 特に日本語の入力。「あいうえお」がどこにあるか確認してみて欲しい。「あ」は左手小指。「い」は右手の中指の上。「う」は右手の人さし指の上。「え」は左手中指の上。「お」は右手薬指の上。あちこちバラバラ。アルファベットの中段はキーボードの「ホームポジション」と言って、指を上下に動かさずにタイプできる『一等地』。でもQWERTY配列だと、ホームポジションにあるのは「あ」だけ。しかも打ちにくい小指。
その点、Dvorak配列は……全体の配列の様子はググってもらうとして……「あいうえお」に関して言うと、シンプル。左手の中段、左から順に「あおえうい」と並んでいる。「あ」はQWERTY配列と同じ左手小指で。「い」から「お」が、左手中段の真ん中から左に向かって並んでいる。このメリットは、日本語のローマ字入力において最大限に発揮される。
日本語のローマ字入力では、子音(kstnhmyrw)に続いて母音(aiueo)を叩打する。子音と母音を交互にタイプするので、非常に乱暴な言い方をすれば、ローマ字入力の半分は母音のキーを叩いている。Dvorak配列なら、キー入力全体の半分を占める「aiueo」を、左手を上下に動かさずに打つことが出来る。しかも、多くの子音は右手に割り当てられているので、右手と左手が交互に使えて効率が良い。つまり、楽で、早い。
どう? あなたも使いたくなったでしょう? Dvorak配列。
さて、話をResEditに戻そう。ResEditではキーボードの配列を、グラフィカルに編集できた。キーボードの画像が出ていて、例えば「"s"のキーに"o"を割り当てる」……という作業を、すべてのキーに対して行うのだ。地味だけど難しい作業ではない。危険な作業でもない。そのキーボード配列を適用したら、キートップの刻印と違う文字が入力されることになるので、初見の他人には迷惑なパソコンになってしまうけれども。他人と共用することなんてあり得ないので、問題にはならない。利便性の方が大きい。
コンピュータ(Macintosh)を自分の手に馴染むようにカスタマイズさせてくれる魔法のツール、それがResEditだった。