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断片集

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#思い出

残された子供達は、彼等だけで生きていくほかなかった。

 残された子供達は、彼等だけで生きていくほかなかった。  母親が出て行ったのは、末弟の幸尾のせいなのだ、そうやって兄と姉は罵った。鈍臭く馬鹿で異端な小さい弟が捨てられただけで、我々が捨てられたのではない。責任はお前だけにある。そう口に出す事で、絶望へ堕ちるのを必死に止めた。悲劇に意味を与えなければ、受け止める事などできなかった。兄と姉の弟への仕打ち。それは、仕方のない事なのだろうか。悲劇を背負えば、何をしても許されるのか?それは誰も教えてくれなかった。幸尾は常に尻に痛みを感じ

封筒と麻袋に入った米を受け取ると、幸尾は胸の前でギュッと抱いた。それから幸尾は、

 封筒と麻袋に入った米を受け取ると、幸尾は胸の前でギュッと抱いた。それから幸尾は、その場でクルクル回った。お礼の言葉を知らなかったのだ。しかめ面だった女将はやっと少し笑って 「いいから、早くおかえり」  と、追い払うような手の仕草をつけて言った。  幸尾はゆっくりと歩き出す。米の存在、その重みを感じながら、ゆっくりと動き出す。陽が傾きかけていた。西の山へ隠れつつある太陽は、来た時とは違う日差しを田んぼへ注ぎ、田園風景を更に濃い黄金色に変えていった。チャパチャパと金の粉が舞い立