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しっぽ

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詩っぽいものたち
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2022年7月の記事一覧

私は覚えている、君のそのまなざしを。鳥のようなまなざしを。 私はそれが苦手だった。君がそのまなこになり、鋭く射るのを。 私は君のそのまなざしを見つけるたびに、目を逸らした。 見なかったように。見なければ、ない、存在は、ない。現象も、ない。宇宙は空になる。太陽系からも、ないように。見なければ、空のように。 私が見なければ。君の、そのまなざしも、ないのだ。 まなざしの救済にて

コーヒーブルース

70円 70円 70円のブルース 70円 70円 70円のコーヒー 70円 70円 70円の生きる糧 70円 70円 70円の生きる価値 70円 70円 70円のために生きる 70円 70円 70円のうすいコーヒーがために生きる 70円 70円 70円 私も ……

ふるあか

それはしづかに舞いおちる ひらひらとはらはらとやさしく すこしづつ 土色の大地はやがてそまり 高貴なじゅうたんを織るように すこしづつしづかに しづかにすこしづつ まるくなった少年の まるくなった体躯のまわりを まるく囲んですこしづつ 埋めていく 千切られた紙片はぼやけて 消えてしまったよ からっぽになったはらっぱのまんなかで 泣きくずれた少年の ひざ小僧はあかい ひざ小僧はないて 苦痛に顔を歪めている ええ、小僧はそこにおりますよ さっきからずっと うまれたときからずっ

むかしのこと 3

オトウシャン、 こんなとこで寝たらカゼひきますよ オトウシャン、 寝るならこちらですよ オトウシャン、ハイ、まくらですよ オトウシャン、 「ああ、しあわせだなあ」って ぺたんこな座布団で、父よ!

むかしのこと 2

つめたくて 眠りがさまたげられ 不快で いやだった いやだけど いやじゃなかった ふわりとかけられた 毛布のはなし

むかしのこと

私はしっている ふわりと空に浮かんだから 私はしっている 冷たいおふとんに そっとおかれたから 私はしった ねむりの中で もう今はかからない まほうを

ゆらゆら

ゆらゆらと うちゅうのように ゆらゆらと ぎんがのように しわが 伸びて縮んで それは重力 皮が 伸びて縮んで いくつもの 星屑のなかを泳ぐように ゆらゆらと うちゅうのような キンタマ

こつ

コツはこうさ 相手の言葉をくりかえす それがコツさ 相手の言葉をぶっくりかえす そして最後に ニコちゃんマークでもつけてやりゃ、 もう完璧さ

つる

折った 折らされた 大量の 折った 折らされた 大量の鶴 折った 折らされた 大量の鶴は 折って 折られて  大量に舞った 折って 折られた 何百何千何万の鶴は 折って 折らされた  大量の笑顔とともに 青く青く青く! 「あゝ、実に無意味」 チャン

あかいばくだん

息絶え絶えの  トマトケチャップ 頭を撃ち抜かれた  トマトケチャップ こうべを垂れた  トマトケチャップ それは  青空の下で