視覚障がいを知ろう!(1)

法友文庫だより 2011年秋号から

 街中で困っている人をみたとき、実際に関わっていける勇気はありますか? どのように声をかけたらいいのか、声をかけられた人はどう思っているのか、いろいろ考えているうちに声をかけるタイミングを失ってしまう……なんてことを経験した人は多いのではないでしょうか。
 ここでは、いつ、どんなときでも足りないところを補っていけるように、日頃の疑問をお互いに聞いて答えあっていこうと思います。
 初回である今回は、法友文庫の新人、私(I)が、岩上館長(視覚障がい当事者)に聞いてみます!!

Q1 見える、見えないにかかわらず、人間がいちばん幸せだと思うことはどんなことですか?

岩上 人間が一番欲しいもの、そして幸せの象徴とも言えるのは「自由」であると思います。他から束縛を受けることなく、自分の意思・感情にしたがって行動できること、それが主体性の定義です。
 視覚障がい者が最も欲しいのは移動の自由です。
 移動の自由の有無は主体性の獲得に大きく関わるだけに、視覚障がい者の移動の不自由は深刻です。

Q2 視覚障がい者が生活の中で一番必要とするものは何ですか?

岩上 視覚障がい者が最も欲しいのは、移動の自由です。視覚障がい者は、大変制約された範囲で行動することしかできないのです。「ふと思い立ってコンサートを聴きに行きたい」「近所に美味しい店ができたと聞いても密かに自分だけで行けない」…。それは、不自由を超えて屈辱と言っても過言ではありません。

Q3 視覚障がい者はどうしたら移動の自由を得ることができますか?

岩上 視覚障がい者自らが真に自覚すれば、何においても一人歩きを身に付けて行動範囲を広げることが肝要となります。通勤・通学のルート、その経路中で絶対に一人で行けるトイレ、自宅周辺の環境、利用施設、単独でも行ける町医者など、暮らしに直結する場所と情報をきちんと把握しておくことができるといいですね。それらは、日常行動の主体性を維持する必須条件になるし、自立につながるものと確信しています。私自身の70年の歩行歴は、まさにこの努力に全力投球してきた歩みであります。

Q4 同時に晴眼者(目の見える人)の手助けは、常に必要なものですか?

岩上 熟知した地域においても、スーパーやコンビニでの買い物は不自由だし、郵便局、銀行など金融機関や役所などでの行動は特に不自由です。それだけでは済みません。たとえ慣れた場所であっても人の動き、物品の配置、道路の工事など、状況は刻々に変化しています。
単独歩行を前提にしながらも、やはり、晴眼者にガイドしてもらう方がスムーズだし、安心なものです。つまり、視覚障がい者は他人の助けなくして生活は成り立たないと言っても過言ではないし、遠慮なく助けてもらうべきだと思います。

Q5 晴眼者の中には、何か手助けできないかと思っている人が多いように思いますが、声をかけられることに対してどう思いますか?

岩上 歩行中に声をかけられることが多くなったのは事実ですし、実際に手を貸してくれる人が増えました。また、声もかけないし、手も出さないが、潜在的に盲人をサポートしてみたいと考えている人も相当数いるのではないかと想像されます。
 そのような人たちの力をいかにして引き出せるのか、手を貸したいと希望しながらも強い戸惑いを持った晴眼者が、躊躇の霧を払って盲人をサポートするにはお互いにどんなメッセージを発信し合えばよいのか、多角的に分析してみる必要があります。

Q6 手助けをしたいと思いながらも、知らないこと、分からないことが多すぎるのですが…

岩上 暗黒の恐怖と不安のイメージを払拭(ふっしょく)する大胆さが鍵です。とにかく、晴眼者は盲人の実体があまりにも分からな過ぎます。たぶん、自分たちが真っ暗闇で感じる不安と恐怖しかイメージできないのでしょう。無理もありません。無理は承知なのですが、ただ一つ、明るくないことは暗くもない世界なのだということを何とか理解していただきたいものです。だから、物の形・存在・状態が分からないながらも、盲人は耳と触覚を磨くことで慣れと記憶と順応性の体得によって晴眼者が感じる不安と恐怖からは解放されていることを知って欲しいのです。それが理解できなければ、結局、「ぶつけたらどうしよう」「転ばしたら申し訳ない」「けがでもさせたら責任問題だ」などと腰が引けるだけで終わってしまうことになります。
確かに、盲人と言っても、勘の悪い人もいるし、閉じ込もりの生活で歩き慣れない人もいて一様ではありませんが、何とか社会参加をしている盲人なら、それなりのスキルがあるはずですし、自己責任も自覚しているものと信じています。

 岩上館長、ありがとうございました。まずは興味をもって『知る』ということが、行動につながる一歩なのかなと感じました。次回は、具体的なサポートについて教えていただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いたします!

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