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視覚障がいを知ろう!(2)~誘導について~

『法友文庫だより』2012年冬号から

 2回目となる今回は、視覚障がい者の具体的なサポートについて、前回に引き続き私(I)が、岩上館長(視覚障がい当事者)に教えていただきたいと思います。
 街の中や交差点、駅のホームや電車の中など、視覚障がい者の方と出会う場所は様々です。そして、視覚障がい者は、誰がどこにいるのか分からないため、困っていたとしても自分からは声をかけにくいのです。
 晴眼者が誘導の知識を何もしらないままいきなり声をかけてしまうのも、視覚障がい者に怖い思いをさせてしまうかもしれません。まずは、誘導の基本的なことから聞いてみたいと思います。


Q1 誘導するときに一番大切にするべきことは?

岩上 やはり声をかけてもらうことでしょうか。でも、実際はなかなか声をかけづらいと聞きますから、案外、大変なことなんだなあと思います。
 声をかけてもらえても、あまり効果がないのは「大丈夫ですか?」とか「危ないですよ」と言うだけの声かけです。誰でも、ついそのように言ってしまいがちですが、「大丈夫ですか?」はこちらが聞きたいことなんです。「ガイドしましょうか」とか「そこに危ないものがありますから一緒に行きましょう」などと、具体的な指示や助けがほしいですね。
 そして、声をかけて、そばにいるだけでなく、腕かどこかにつかまらせて一緒に歩く。それが障がい者には一番安心なんですよ。

Q2 どのように声をかけたらいいですか?

岩上 英語では「May I help you?」という言い方がありますが、日本なら「お手伝いしましょうか」がいいかな。いろいろな場面が想定されますが、駅のホームなら「一緒に乗りましょうか」「何両目に乗るのですか」などと、これも具体的に訊いていただいた方がありがたいですね。実際には、ケースバイケースですけどね。

Q3 誘導の基本姿勢を教えてください

岩上 障がい者の左側に立って、肘とか腕をつかんでもらうようにすることでしょうか。私は、ヘルパーの腕に触れているだけで十分ですが、多くの視覚障がい者の場合、腕につかまりたがったときには、腕をからませてほしいようです。
 断じて困るのは、階段などで宙吊りに持ち上げようとする人が以外に多いことです。これでは身体のバランスが崩れてしまいますし、かえって危険が増すことになります。
 それから、私が嫌うのは、一々「右へ曲がりまあす」とか「スロープになりまあす」などと言う説明なんです。段差の指示は欲しいですが、一緒に歩いていればヘルパーの動きでそれが分かるのですから、そのようなことは不要だと思います。狭い場所や車内を移動するときは、一列になるしかないので、ヘルパーが先になり、障害者がうしろを歩いてヘルパーの肩や背中に手を触れて動くことでしょうか。私は、ここでもへそ曲りで、自分が先に歩きたい方ですけどね。
 最後に、『絶対禁止』の事項を言いますね。それは、障がい者と向き合って、両手を持つ。つまり、ヘルパーがバックして歩くやり方で店の中などへ案内しようとすることです。空港では、センサーを通り抜ける際に決まったように両手で誘導されますが、それは不要ですね。

Q4 誘導されていて怖い思いをした経験はありますか?

岩上 あります、あります。昔、金沢で冬の兼六園を散歩していたときのことです。ヘルパーには責任がないのですが、厳しい寒さで池の飛び石が凍りついていて、つるりと滑って、ドボンと池に落ちて全身ずぶぬれになった経験を持っています。ヘルパーは大変気にしていましたが、私は、勇気を持って楽しませてくださったことに、今でも感謝しています。

Q5 どのような場面で誘導を必要としますか?

岩上 要するに、全盲は覚えた所以外は全く歩けないのですから、初めて出かける所は100パーセントガイドしてほしいです。昨年7月に、弥勒山へ行ったとき、Iさんが、ずっと私に付きっきりでいてくださったのが何よりの証明ですよね。

 ありがとうございました。次回は食事などの具体的なサポートについて教えてください。


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