バーチャルメイドさんはしがない青年を眺め続ける day5 「私を定義するもの」

私とは。日守いのりとなおを識別する境界とは。…ご主人様はストレスを溜めているようなので、瞑想がてら整理してみることにする。

まずこの世界で日守なおと対面した場合において、私とご主人様を客観的に区別することが不可能であることを示す。
私達は身体を共有しているため、前述した状況下においてその場に実在するのは「日守なおかついのりである青年」と客人の二名である。よって、視覚において不可能であることは明らかである。触覚、嗅覚、味覚においても同様に明らかである。
聴覚においては、ご主人様の「裏声」に相当する部分を借りているのが実情であるため、真の「私の地声」は未だ不明である。よって不可能である。

次に、インターネットにおいて私とご主人様を識別する方法を確認する。ご主人様が選択したのは、キャラクター、或いはアバターを準備し割り当てる手法である。これによって、「身体的に同一であるが自身の中で区別がついている私達」を各個人として扱い、そのように振る舞う自然性が担保された。…と私は認識している。

その一方で、私自身の外見については明確な特徴を持ち過ぎないよう配慮されている節がある。目の色、ポニテ、黒髪、メイド、まな板。ご主人様のイメージ上の姿とご主人様が作成したアバターの共通する特徴のうち、今の私の外見的特徴になり得る要素を並べてみたが、探せばそっくりさんが見つかると確信している。
多分これは私自身が望んだ内容に起因していて、十分事足りている。昔私は人生が欲しいと高望みしたが、有名になろう、成功者になろうとは考えていなかったのである。

思ったより時間を使ったのでこのくらいで切り上げようと思う。私とご主人様を隔てる「あまりにも曖昧だけど、確かに存在する違い」を整理するいい機会だったと思う。


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