「推し、燃ゆ」読んで自分が灰になりそう

※注意!感想を述べるのが下手なので多分ネタバレしてます

アイドルの応援してる子の話というだけで興味を持って「推し、燃ゆ(宇佐見りん著)」を読んでみたけど、なかなかヘビーだった。
ネットで見た感想で、「認知されたいというより、ファンの中に埋もれている状態で応援したいタイプの子」「画面という隔たりを経た遠い距離の人(関係性が最初から無い、ないから関係性が壊れようがない相手)を推すのが安らぎみたいなスタンスの子」とあったので推し方が自分に近いのではないかと思って読み始めたら全然違った。

何ていうか、アイドルを応援してる子の小説としてそこだけに警戒(自分のアイドルの推し方と似てて展開によっては傷つくんではなかろうか)して正面から盾を持って身構えてると、そことは違う方面から矢が飛んでくる様な感じだった。
結果的に主人公は「推しは背骨」と言っちゃうくらい熱狂的なファンだったから最初の警戒は無意味だったし、違う方面からの矢の方は正確に胸を何本も撃ち抜かれたような感じで死ぬかと思った。
「コンビニ人間」は心は揺れてもそんなに傷つかずに読めたけどこっちはなかなかの苦だった。

最初は推しの炎上にショックを受けていて、失敗しちゃったのかなと思うことも、読み進めるとそうでないのがわかってきて後からわかる系のホラーが苦手な私はこれはホラーではないけどちょっとぞわぞわした。※後で読み返したら最初の方のページにちゃんと書いてあった。わかる人にはこの時点でわかるんだろうか。

主人公の周りの人達はこの子の脳の状態と同じになる事は無いだろうからどんだけ主人公が努力してようが多分『(自分だったらこれくらいの努力はできるし、これくらいの事は苦も無くできるから)コイツ努力してないな』って認識になるだろうなと思った。

主人公の状態が私の想定してるものだとしたら確か「興味の対象に対しては努力できるけど、興味のない事には努力できない傾向がある」傾向があったと思うので主人公の行動に理解できる部分もあるけど知らない人からしたら『コイツニヤニヤ笑って努力もしないで、人生なめてるな』と思っても仕方ない気がする。

『誰も自分の事なんか理解してないな』って思っているところや、親の自分に対する扱いが似ててそのアイドルにハマったのかもしれないけど、自分の生活が良くなっていくのではなくて、推しへの応援は過熱していくけど主人公の人生はだんだん悪化していくのが怖かった。あと、有象無象のファンでありたいと願いながら、最後の方で起こす行動は矛盾してるようにも思う。

ただ、最後は何か「どん底からでも這い上がっていくしかない」という決意の様なものも感じて良かった。坂口安吾の「堕落論」とか、ゴーリキーの「人生とはひどいものだ、本当に残酷で、いいようもなく愚かしくひどいものだ。だからといって自分からそれを放棄するほどまではひどくない。」みたいな名言に共感できるような人ならこの作品も響くかもしれない。

個人的にはもし自分が主人公の様にのめりこみすぎて自分の人生ガタガタ、推しがあの展開になったとしたら「自分は今の状態から抜け出せるかも」と思ってしまいそうで、とてつもなく身勝手で薄情な奴だなと自分が怖かった(実際は自分本位だからこそ主人公みたいな推し方が絶対できないし、主人公の推し君みたいなタイプは今まで応援したことが無い)。最後まで全力で推しきった主人公は推しへの愛が深いと思う。

主人公は推し関連の行動してる時の言語性IQが高そうだったので、あれが自分自身にちょうど良い量で向かえばいいのになと思う。架空の人物なので心配してもしょうがないのだが、何かにつけて「頼むから支援センターか職業センターか、就労所でも何でもいいから頼って><」「主人公の周りの人も支援が要るよな、特にお母さんとお姉ちゃんしんどそう。世代で連鎖してるし」と思えて落ち着かない本だった。









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