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未来志向の自己フィードバック

人は常に外部環境と対自している。外部環境には、他人や社会や物やコトなど、自分以外の全てが含まれている。外部環境は、確率的なガチャである。それは統計として捉えることはできるが、個別の事象を全て説明するのは難しい。

自己は外部環境とのインテラクションを積み重ねることで、人格を形成し、個性を獲得する。人格や個性は自己の行動を規定する。だから、外部環境とどう対自するのかが、未来の自分を作るということだ。

外部環境とのインテラクションは二つの要素に分けられる。行動と認識である。行動とは自己が外部環境に与える影響であり、認識とは自己が外部環境から与えられる影響である。認識が自己を形成し、自己が行動を起こし、ガチャが回り、出てきたものをまた自己が認識し、その認識が自己をちょっと作り変え、...、というループである。

行動と認識のうち、認識は更に二つに分けられる。感覚と自己フィードバックである。感覚とは、五感を通して外部環境を感じることである。例えば、お父さんが険しい顔をしているとか、お椀が熱いとか、トイレが臭いとか、注射されて痛いとか、そういうことである。一方、自己フィードバックとは、それら"感覚"と"自己の記憶"を突き合わせて、対象にラベリングをすることである。例えば、険しい顔のお父さんは嫌な感じがするとか、熱いお椀は嫌な思い出があるとか、トイレが臭いのは普通のことだとか、そういうことである。

自己と外部環境がインテラクトするループの中で自己がコントロールできるのは、行動と自己フィードバックだけである。もっというと、行動は自己フィードバックでほぼ決まるので、自己フィードバックがもっともコントロールしやすい対象である。自己フィードバックとは、「解釈」である。痛いとか嬉しいとか、楽しいとか、苦しいとか、得した、損したなどの単なる事実や感覚だけではない。記憶や体の状態なども組み込んだラベリングである。そこに意図的に特定の要素を組み込ませたり、ある種の要素を過大に評価することで、自己フィードバックをコントロールすることができる。

自己フィードバックをコントロールできるということは、自分の行動を間接的にコントロールできるということである。自分の行動をコントロールできるということは、外部環境のガチャをたくさん回したり、少なく回したり、違う回し方をしたり、することができる。ガチャは純粋な確率論的事象なので、それ自体をコントロールすることはできないが、自分の行動を通して入力情報を変えることはできる。入力が変われば、自己に返ってくる感覚も変わる。つまり、自己フィードバックをコントロールすることで、全体のループに影響を与えることができるのだ。

感覚の解釈を意図的に歪めることで理想の自分になろうというのが、未来志向の自己フィードバックである。結果はどこまでいっても結果に過ぎず、それ自体が新たな未来を作ることはないが、自己がそれをどう捉えるかによって未来は変わる。だから、将来の夢やゴールにたどり着くための方法論として、未来志向の自己フィードバックは強力なのである。

未来志向の自己フィードバックとはカントの認識論でいうところの"悟性の働き"である。以上の文章に興味がある方にはカントの認識論を参照されたい。

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