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この世界のバグを認識するということ

ショートケーキというのは本当に快楽だ。農耕を始める前の人類の主食は、植物の実や茎だったと言われている。そういった食生活の中で不足するのは、脂肪と糖である。だから、脂肪と糖に関してはちゃんと体内に蓄えられるようになっている。また人体は、脂肪と糖を口に含むと快楽を感じるように設計されている。しかし、農耕や養殖が始まると、脂肪と糖を十分に供給できるようになった。今では砂糖と脂肪はスーパーに行けば簡単に手に入る。人体は個体の一生にくらべると、かなり遅いスピードで進化するので、砂糖と糖を蓄えるという機能はまだ無くなっていない。人体のバグである。

SNSというのは本当に快楽だ。インターネットが普及する前の人類は、現実社会に価値を与えて称賛をもらうことで社会的欲求を満たしていた。そういった社会では、自分の技を鍛錬させて社会に価値を与えられるレベルに到達しないと社会的欲求が満たせない。だから、多くの職業には長い修行期間があったし、実際に修行をしないと他人からの賞賛を得られることは少なかった。故に、称賛を得るというのは他に代え難い快楽であった。しかし、インターネットが普及すると文章や写真を使って現実を加工できるようになった。情報の受け手は、価値を直接見たり感じたりすることができないので、文章や写真からその価値を想像するようになった。そして、ワンタップで手軽に称賛を送れるようになった。今では称賛はTwitterを始めれば簡単に手に入れることができる。人体は個体の一生にくらべると、かなり遅いスピードで進化するので、称賛にこの上ない快楽を感じるという機能はまだ無くなっていない。人体のバグである。

人体のバグを認識するということは大事だ。本質とはかけ離れた仮想現実が存在するということを認識して初めて、本質的な価値に目を向けることができる。一方、仮想現実は現実の一部だということを認識することも大事だ。フェイクも隠し通せばお金になる、という不都合な事実は存在する。そもそも人間にとっての価値は全てフェイクとも言える。何かが価値かどうかは、個人が望むか望まないかによる。神が判断するわけではない。ショートケーキを食べたいと思った人にとっては、どんなに血糖値が高かっとしても、ショートケーキは価値である。たとえ、人生がほんのちょっと短くなったとしても。これは貨幣資本主義のバグである。

この世界の色々なバグを認識することで、いらだちを催してくる不都合な事実と冷静に向き合えるのではないか。


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